オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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なんかまた評価跳ねてる……怖……


006/断罪

 

旅人として、当然のような顔をして入り込んだ宿場町。

二人きりで旅をする――――霊能力者(たびびと)としては珍しいからか、疑いの目がなかったわけではない。

 

実際のところ、頭数というのはそれだけで力になるというのは間違いではなく。

隣の街へと移動するだけであっても示し合わせ、簡易的な部隊を形成して動くのが普通だから。

 

(とは言え、例がないわけじゃない)

 

だからこそ、()()で済んでいる。

 

どうしても、一般の……能力を持たない徒人と比べれば色々と突き抜けた存在として確立する俺達。

故に、村から抜け出る時はこうして小さい人数で動くことも当然にあり。

幽世で犠牲者を出し、連れ帰ることが出来なければその分足りずに逃げ帰ることだって無いわけじゃない。

そして何より、今の俺達が成人に満たない――――幼い外見をしている、というのもあるのだろう。

 

彼方此方に擦り傷切り傷、戦闘で負った幾つもの怪我や服の破損。

襤褸切れに等しい、というのもあって見逃された側面も間違いなくあったとは思う。

 

ちらり、と門番が向けた目線を擦り抜け通りを一本折れる。

それだけで互いにとって死角へと入りつつ、小さく安堵の吐息を漏らした伽月へと囁く。

 

「どう見た?」

「……なんというか、ピリピリ?してますよね?」

「そうだな」

 

感覚的な言葉。

ただ、その意味を正しく受け取って頷きを返す。

 

行きに通り掛かった時。

その時とは入ってきた方向も変えたから、門番のような役割を担う相手も違うとは思っていた。

想定通り、別人が見ていたわけだが……酷く警戒心が強くなっていた。

と言うより、緊張していた、という方が正しいだろうか。

 

「こないだは……もう少し、なんていうか。 笑ってませんでしたっけ?」

「笑顔を浮かべてた、ってのは間違いない……が、ありゃまた別の意味もあったぞ?」

 

紫雨は間違いなく気付いてた。

伽月は……この言い方だと気付かなかったのか、無意識に気付かなかったことにしたのか。

なんとなく、溜め込むタイプっぽいもんなぁこいつ。

 

「別の?」

()()()()()()、の笑顔ってことだよ」

 

実際問題、見られて鼻の下を伸ばされるくらいは無視出来るようにならないとやっていけない。

それだけこの世界に安全圏は少なく、守られるだけの側になるのなら何かを差し出す必要がある。

見られるだけ、勝手に妄想されるだけで済むなら誰も気にしない。

 

白やリーフは慣れるまでに時間を要したものの、それでも紫雨と出会う前までには慣れていたし。

あまり気にすることでも、口に出したいことでも無いから出すつもりも無かったんだが。

 

「???」

「……まあ、気にしなくてもいい。 それならそれで」

 

色々不安。

純粋無垢な部分を抱えてるとは常々思ってたが、父への怒りのみで上書きでもされたのか。

時々見せるその顔だけを見せてしまえば、胸を撃ち抜かれるやつもいるだろうに。

 

裏口寄り……もう少し正しく言うなら俺達が逃げるために用いた道を逆に辿る。

大通りと違い、どうしても薄暗い分モノや住人の姿が見え隠れする道。

一期一会の相手ではなく、日常的に見るものの中の異物である俺達へと怪訝な目を向け。

そして顔を合わせないようにしながら、疑われるのを踏まえつつやや急ぎ足。

 

細身では有るものの、顔を隠している相手の一人が女だと見られると怖い。

そもそも、男女毎の性別が前提で起こるイベントやら改造イベント(MOD)を踏まえるとなぁ。

こないだ起こったばっか、というのもあるし。

 

そんなことを思いながら走り。

そろそろ見えてくるはずだ、と目線を再度少し上へと持ち上げて……。

僅かに首を傾げる羽目になった。

 

「ん?」

「あれ?」

 

そして、それは俺だけではなく彼女も同じ。

多分、全く同じことを思っている筈。

 

「此処、ですよね?」

「だなぁ」

 

見上げた先。

抜け出した筈の建物自体が消え去っており、その根本には黒ずんだ木片が転がっている。

周囲は縄で囲われ、中に踏み込むことを禁じるように白い紙……紙垂が等間隔に結ばれ。

内側には、遠目で見た装備を固めた大人が複数人入り込み何かを調べているのが分かる。

 

そして大通り側に面した、入口があった方には僅かに赤褐色に染まった布が敷かれ。

立て札のようなモノが掲げられ、それを見た幾人かは顔を顰めつつも何処かへと向かって流れていく。

 

「燃えてる?」

「……焼かれた、の間違いじゃないか? これは」

 

遠巻きに建物の様子を窺う旅人やら住人の姿が見えるが、どれもこれも見た覚えのない顔。

まあ一瞬でしか無かったから、全員のそれを完全に覚えられるかと言われれば無理だけど。

 

「焼かれる?」

 

疑問が多いな。

まあ良いけど……これも推測でしか無いんだけどなぁ。

 

「あの紙垂……白い紙があるだろ?」

「ありますね」

「アレが掛けられた場所は『神域』として扱われる。

 一応、中と外を区切る道具として作られた半ば使い捨ての呪具でな……」

 

俺が知っているのと同じものだとするならば。

何に使うのかと言えば、極めて単純な効果。

 

「アレは、呪法やら術技の効果を著しく減退化させる守護の結界。

 証拠を消させない、霊能力者が関わったと思われる犯罪現場に使われるモノの筈だ」

 

ゲームの頃だと、入手するのに繋がりがいるやや重要物品だった。

上手く使えば相手が強大でも嵌め殺せるし、イベントなんかでも証拠保全に必須。

寧ろ消されると、イベントが其処で途絶えて仲間候補が減ったりもしたからなぁ。

嫌な思い出が脳裏に浮かび、頭の上を祓うように手で扇ぐ。

 

「はぁ……で、なんでそんなものが此処に?」

「いや、ちょっと考えれば分かるだろ」

 

多分、その理由があの立て札に書かれてるんだろうけど。

半ば反射的に呟く言葉に呆れを混じえつつ。

出来得る限り周囲から浮かないように心掛けながら、立て札の方へと向かうことにした。

 

……なんとなく。

縄の内側から、誰かに見られているような気がしながら。

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