オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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008/推察

 

大通りを出来るだけ人目に付かないように進む。

途中で保存食……干された果実や野菜、乾飯(ほしいい)を含めた食料を目に付く範囲で買い込んでいく。

 

背負った荷物、そして普段見かけることのない子供。

不審がられながらも、その点のみを以て追求することが出来ない現状を最大限に利用する。

 

(何より、()()()()()()()()()()()()()()()()()()、って部分も助かってる部分かね)

 

店主に話しかけ、指差し、背負える範疇で荷物を増やす。

決して能力者向けの店には近付かず、一般の――――それこそほぼ街中だけで成立する出店を選ぶ。

建物として確立した場所だけでなく、茣蓙を敷いている一見農民の店からも買える範囲で買う。

ただ伽月と互いの位置だけは常に把握しながら、決して視界の外に出ることの無いように気を使う。

 

少しずつ荷物を増やし、けれど決してその場で買い食い等といった形は取らない。

待っている仲間との確執を少しでも削りたいのも勿論理由の一つではある。

ある、のだけど。

それだけではない、というのは自分(と繋がってる白)の中だけに秘めておく必要性がある事柄。

 

「これくらいあれば大丈夫、ですか……ね?」

「いや、まだまだ買うぞ」

「え、まだ……ですか?」

 

不安そうに横顔を見つめられるのは分かってる。

というか、俺も何の情報もない状態だったら同じような表情を浮かべてたと思う。

ただ……俺は現状、()()()()()()()()()()()()()という一つの情報から結び付く情報がたった一つだけ存在する。

どうしても表情に出てしまいそうになる感情を押し殺し、部隊長(リーダー)としての役割に自分を押し込めながらも。

周りに聞かれれば不審に思われてしまう事柄だからこそ、端的に隣の少女へと事象を告げる。

 

「……こっからは東都に戻るまで街や村に寄ってる()()が無くなるからな」

「……()()?」

 

普段は過剰なまでに安全を重視する俺の癖。

極短期間であっても共に戦ってきたのだから、考え方の根底にある部分は互いに認識を持っている。

それでも尚、()()()()()()()()という言葉を使った理由。

それは、執行者達の部隊の在り方――――というか移動に先駆けての特徴に由来すること。

 

「多分、九割九分近くの確率で彼奴等は西から東に移動中の筈だ」

「……東都側に移動している途中、と?」

 

がやがや、と人混みの中に紛れるように言葉の大きさを調整すれば。

そっと腕に伸ばされた手が張り付きつつも、同じように言葉の大きさを小さく留めてくれる。

この辺りを無意識にやってくれるだけで十二分に助かる。

気が使えない、なんて不利な特徴持ちだっているこの世界の中ではかなり当たりの部類だろう。

……まあ、伽月について知る事柄なんざ本気で殆ど無いんだけども。

 

「はっきり言える理由ってのがな……いや、こればっかりは彼処での時間もあるから確定まで行けないんだが」

 

だから九割九分で抑えてる。

ついでに具体的な固有名詞も避けつつ、情報だけを告げておく。

 

「彼奴等が別の街に移動する時、絶対に先触れが出るんだよ」

「先触れ、ですか?」

「事前に知らせる為の斥候、と言ってもいいかもしれんな」

 

ゲーム中だと、街中で会話出来るキャラクターが明確に一人増えることでその事実を知ることが出来る。

服装は普通の能力者……旅人の格好で身を隠しているから一見するだけでは誰が誰だかも特定は難しい。

ただ、慣れてくると()()()()()()()()()()()に特徴的な刺繍があることで判別が出来る。

独自で纏められていた、攻略サイト(●ィキ)の片隅に記載されていた基本事項。

知っていることを前提として、その前提を乗り越えた先の可能性を見出そうとしたバカ共の記録の一つ。

 

「長くても週か半月以上は滞在しない。 これが基礎原則なんだ、あの集団は」

 

一般的に流布されていない情報であるのは間違いない。

ただ、その動きを追っていけば自然と知れることではあるし、直接属する人間から聞いた店の主だっている。

だからこそ、知る人数は少ない程度で済む情報。

皆無な情報――――知ってはいけない秘密とはまた違うのだ。

 

「……私達の感覚が狂っているだけかもしれませんけど」

「ああ……完全な行き違い、ってだけじゃない理由もある。言ったろ、基礎原則だって」

 

その原則を崩す理由の一。

今回のような罪を犯した、裁くに値する存在が巣食っていた時。

その滞在期間は相応に長くなっていく。

斥候さえも出立せず、その時だけが『組織』としての過半数を超える人数が滞在することになるわけだ。

 

最後に、と調味料を包んだ布袋と壺を買い込んで元来た入口へと向けて大通りを一本だけ逸れる。

張り付く視線は掻き消えず、寧ろ距離を詰められているような悪寒すらする。

 

(……ただ、この視線の持ち主は何なんだ?)

 

()、ではない。

視覚を用いる能力の原則、その目で捉える/捕らえ続ける事による能力の発揮。

俺の目だって、色々と狂っていたとしてもその大原則から外れることはない。

 

「朔様」

「おん?」

 

唯一有り得るとすればたった一つ。

ただ、あの能力を持ち得るとするならば必然的に壮絶な代償(デメリット)を負っていることになる。

俺の目的からすれば選ぶ選択肢は初めから皆無故に思考の外だったんだが。

 

「……見られていませんか?」

「あー…………」

 

伽月も同じモノを感じ取ったのか、僅かに震えを見せつつも確認してくる。

浮かんでしまったその『異能』に、考えるだけ無駄だと割り切ってしまう自分もいる。

だからこそ。

 

「とっととここから出るぞ」

 

もしそれでも、この感覚が抜けないのならば。

『天空の目』を持っている相手であることは確定する。

だからこそ、小さく囁いて……僅かに、歩みを早めることにした。

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