話が進みませんが申し訳ねえ
人によって取得制限が掛かる『能力』。
その中でも前提条件として明確な代償を負っている事が必要となる強能力が設定されてはいる。
実質的に
(鷹の目、ならまだ分かるんだがなぁ)
将来的に自分か白かが取るであろう能力を脳裏に浮かべつつも、足を動かすことに意識を集中させる。
一歩、二歩。
こういうときであっても、自分の悪癖……考え込んでしまうそれが抜けないのはどうしても憎らしい。
門を潜った先でも、周囲に人影がなくなっても。
多少はマシだろう、と気休めだと自分でも思う通りに。
その感覚は一切消えず、仲間の元まで引き連れていく形になってしまう。
「あの」
「諦めろ、《幽世》まで潜れば消える」
がさり、と音を立てながら座り込む四人の下へと真っ直ぐに向かう。
途中、何度も頭上を見上げようとしてしまう少女の手を無理に引き。
顔を伏せることで口を読まれないように注意しつつ、足早に移動を心掛ける。
(――――確か、設定上はいた……んだったよな?)
ポロッと漏れる情報の端々から結び付ける事ができる裏設定。
本来は
対面できる相手ではなかったから、文字通りに空想の
「…………の」
純粋に集団球技なんかを行っている時、ある種の才能や訓練を以て身に着ける(らしい)頭上から見下ろすような視線を得る『鷹の目』。
戦場一帯を俯瞰する視線其の物は、将来的に俺が必要になる視点であるのは間違いない。
前世……と呼んでいいのかは曖昧だけど、嘗てのような情報のみを重視するのではなく、3次元的な戦場の管理が必要になってしまうのは個人的な感覚としてもしっくり来る。
けれど。
今見られている目線は、そんな次元には無いある種の特権とも言っていい側面を秘める。
絶対に俺では取得出来ない欠点があるからこそ、警戒に警戒を重ねてもまだ足りないような悪寒がずっと背筋を這い回っている。
「……く、さん?」
(まあ、使う場所自体が違うからこうもなるのは間違いない、が)
対して、『天空の目』。
そもそも取得する上で必要な代償は
其の上で『写し鏡の呪法』を使用し、取得先を選ばなければならないという取得上の矛盾。
そして得た能力は、《幽世》以外でしか使用できないという霊能力者として生きていくのであれば致命的な欠点。
けれど、陽光の下であれば自身を中心に汎ゆる場所を見ることが出来るという悪用手段しか無いような利点。
これを防ぐには、陽の光を完全に防ぐ夜闇の中か。
或いは絶対的に対策した建物の中に引き篭もる位しかない、という悪人殺しの監視能力。
「朔さん!」
「っと」
対策しなければならない、というわけではない。
ただ、今目を付けられると(今更どうしようもないけれど)面倒であるのは間違いない。
俺達だけならともかく、怜花さんのことは善意で手を差し伸べてくるだろうことは容易に想像できたから。
ただ、それに集中しすぎたのか。
伽月は頬を膨らませながら小声で叫ぶ、という器用な技をやってのける。
「声も聞こえなかったんですか?」
「……あー、悪い」
気付けば片手は離されて、怒っているように見せかける動作を取っている。
……多分、何となく、とでも表現すればいいか。
本気で怒った時との差異は、感じ取れていたからこその軽い返答。
『そこまで警戒するようなことなのかい?』
そして、同時に浮かび上がってくる
半分は純粋に、もう半分はやや笑みを堪えたような言葉。
よっぽど気に入られたのか、或いはそれ程に今の現状が面白いのか。
……深いところまで考え込みたくもないが、僅かに溜息を零しながら言葉を思い浮かべる。
何も返答しなければしないで、自分の面白おかしいように解釈するだろうことは容易に分かってしまうことだから。
(対応に時間を取られるのが嫌なんだよ)
『ならば、動くことだけに注力すれば良いだろうに』
(それが出来ねえのはお前もよく理解してることだと思うんだが?)
けらけら、と俺にだけ聞こえる笑い声。
一理はあるけれど、そうしてしまえば今後の仲間達との関係に影響を及ぼすだろう悪手。
それを分かった上で進めてくる此奴に睨む目線を一つだけ投げかけ、頭上、隣と目線を動かしていく。
そうした特異的な視点を持つ『執行者の姫』。
名前は呪術対策で伏せられ、ただ単に彼女達が『姫』と呼ぶ時はその人物を指すという意味での固有名詞。
能力の根幹上、あの街の宿のどこかに在住して
(あ、ひょっとして)
その姫を罠に掛けようとしてぶっ殺された、って可能性はあるか?
固有名詞持ちってことは、必然的に外観は凝った設定だけされてそうだし。
ぐるぐる回る思考と流れ。
隣の少女の頬は更に膨れ。
反対側の疫病神はけらけら笑いながら嫌な外観を押し付け、俺にだけ伝わる五感の感覚で弄び。
頭上、葉の隙間からは時折目線を感じ続ける。
そんなどうしていいか分からない幾つもの現状が打破されたのは。
待機していた四人の顔が漸く見え、背に負った荷物の数々へと目線が動き。
誰かしらが、小さく腹の音を鳴らすまで続いてしまったのだった。