オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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014/白骨

 

すぅ、と息を溜め込む音が一瞬。

次の瞬間――――或いは()()()()()

飛ぶような移動を挟み、僅かに左側に位置した白骨の直ぐ側に伽月は移動していた。

 

0行動目
>>『伽月』の『気配干渉』。事前行動権の奪取判定。成立。
>>『仮称:白骨』の『魂魄認識』。事前行動権の奪取判定を失敗に変更。
>>行動待機中...

 

そんな、ある意味見慣れた動作。

彼女ならばその程度出来て当然だとばかりに思う行動。

けれど、目の前の妖には意味を成さない。

 

「……っ!」

 

腰に佩いた鞘からするりと抜いた日本刀。

普段と同じようにそのままの勢いで振るおうとした刃の先を見咎められ、咄嗟にその動きを止める。

本来であれば勢いを利用して突き抜けるか、或いは弾き飛ばすことで自身に優位を保とうとするその行動。

けれど、気配ではなくその魂を見る死霊に関しては『気配』を消したところで意味がない。

故に。

()()()()()近付いた、という現象の結果だけが目の前に残る。

 

「白! 紫雨!」

「分かっておる!」

「まーかせて!」

 

だから、此処からが本当の戦闘の開幕だ。

杖代わりに利用している長柄を改めて構え直し、一歩二歩だけ前に進む。

後方の何人かへは特段声を掛けず、反応速度が俺よりも遅いことを十二分に知っているからこそその後に続く行動を自分で考えさせる。

 

「お主の相手は吾じゃよ!」

 

相手との相対距離が最も近いはずの伽月よりも先に動く――――半ば挑発するように振るわれる刃は二度。

両腕に握られた短刀が鈍く輝き、相手は血を吐き出せない存在であるが為に行われたのは通常攻撃。

けれど、白骨は遅いながらにその行動に対して防御しようとし……片腕の手首と二の腕を繋ぐ部分の骨を欠けさせる。

物理的な意味で弾け飛びながら、宙に浮きながら手首だけが動く様は。

仮に対人経験しか無いのならば、一歩動作が遅れてしまうだろう。

その合間を作り出すための、人外ならではの策の一つ。

 

(前衛で一対一が二つ、治癒担当が既にいる、相対距離に余裕はある……武具は恐らく至近武具)

 

今相対している白骨……正式名称『されこうべ』は死霊と呼ばれる妖の中で最も基本種で、最も多岐に渡る存在だ。

本体は名称の通り髑髏(とうぶ)、つまり首より下の部位はどんな存在なのかに応じて変動する。

たまに四本脚で獣のような形になったり、或いは腕を増やして武具を振るったりと色々な差異がある中。

今回の此奴等は基本形で、且つその中でも武具を持たない――――自身の肉体を武具として扱う白兵型なのだろう。

そうでなければ、現れた時点で()()()()()()()()武器を握って立ち向かってきているはずだから。

 

「両手足と噛み付きに警戒しろよ!」

 

前衛へと注意を飛ばし、同時に杖で地面を叩いたのは『削減の法』の起動。

骨其の物を脆弱化させ、砕きやすくすることで立ち回りやすさを重視した呪法の起動。

相手の害する手法(こうげきしゅだん)が多いなら攻撃低下で良かったのだろうが、遠距離手段を持たないならこれが多分正解。

事実、一歩踏み込もうとして膝の辺りから異音が聞こえた気がするし。

 

「はい!」

「衝撃行くよ~!」

 

その後、合わせるように二人の声。

初撃の流れに乗れず、けれど改めて両手で握り直し刃を振るおうとする伽月。

通常の矢ではなく、矢先を丸く・固くすることで『衝撃』を与えることを目的とした矢を番えた紫雨。

鏑矢……というよりは神頭矢と呼ぶべきか。

通常のものとは違うし、その分消耗品の(スロット)を埋める分使い勝手が変わる矢弾。

ひゅるり、と乾いた音を流しながらに飛んだそれは、肋骨の辺りを割り砕いて更に内部へと食い込んでいく。

 

1行動目
>>妖感知判定成功。名称:『されこうべ』
>>『白』の『通常攻撃』。『されこうべA』に二回命中。
>>『朔』の『削減の法』。判定成功。
>>『紫雨』の『通常攻撃:神頭矢』。『されこうべA』に一回命中。
>>行動待機中...

 

そうした一つ一つの動きを脳内で認識しながら、集団で片方を相手取る俺達。

それに対し。

情報が正確に出ない……正しく言うならば、霊能力(ステータス)を十全に活かせない伽月の行動は遅れ、相手と良い勝負という状態に追い込まれている。

普段であれば動けているだろう行動の隙間を、相手のされこうべに潰されてしまっている……とでも考えておくべきか。

 

(やっぱりそうか、()()()()()()()()()()()()()

 

そんな苦戦を何処か俯瞰視点で視ながらも。

彼女が今までに取ってきた能力の組み合わせ上、不利になるだろうと分かっていたことを改めて理解する。

気配の増減、奇襲や隠密と言った行動を組み合わせて隙を狙う関係上、そもそもそれを隠蔽できなければ半ば非力な少女にしかならない。

……多分、ずっと一人だったらこの見落としが致命傷になっていたような。

そんな悪寒を感じてならない。

 

「…………いき、ます!」

「おにいさま!」

 

ただ、戦闘は続いていく。

リーフの放った火球に、恐らくは直感で執り行った 『清めの燈火』(じょうか)

前者を受け、大きく怯んだところを死霊にとっては天敵となる呪法が直撃し、声にならない悲鳴が上がる。

 

「っ、この!」

 

戦闘は流れるように進んでいく。

決して時間は戻れずに、戻らずに。

伽月の大振りの攻撃で弾き飛ばすように、もう片腕の尺骨が地面の草木を刈るように弾けて飛んだ。

 

複数人と、単体と。

自身にとっての天敵である存在を改めて理解したはずの少女が、何を選ぶのか。

それは――――この後で聞くことにしよう。

 

(だから性格悪いって言われるんだろうけどな)

 

相棒(しろ)に叱られた過去を思い返し。

そして、この先のことを僅かに想い。

少しだけ口の端を立てて、小さく笑った。

 

そんな顔を、誰かに視られているような気がする中で。

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