オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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018/剣神

 

神素戔嗚。

最も高名な三柱の末弟。

根の国を治める権限を持ち、様々な揉め事を起こしつつも怪物を打ち払った――――治水を成し遂げた英雄としての側面を持つ天津神。

 

けれど。

【幽世の夢の果てで】の中では、()()()()()()()()()()()()()()()()

情報(データ)を設定されず、世界観の設定の中で僅かに一行か二行言及されただけの神であり。

だからこそ、好き者(ファン)の中では思い思いに『ぼくのかんがえたしゅごしん』として扱われがちな存在だった。

 

(だから、実際に存在してる事自体には違和感はない)

 

ぶんぶんと刀を振り回す度に少しずつ整っていく太刀筋。

少なからず前衛職……刀を真面目に学んだ事がある人間が見れば絶望するか嫉妬するか。

()()()()()()()()()()()()()()()()、と断じて言えるような変異の結晶。

 

(ただ、何故伽月がこのタイミングで選ばれたのかが分からん)

 

つい先日宿った思兼のように、向こうから何らかの形で声を掛けられたのだろうというのは容易に想像が付く。

けれど、その理由がはっきりしないというのが純粋に疑問であり、謎。

どういった部分の役割を担う神なのか、という詳細さえも持たない以上。

警戒するほうが先に立つ。

 

「……あ、ちょっと軽くなったかな」

 

独り言を。

より正しく言うのなら、誰もいない空間に向けて誰かに語り掛けるような姿を見せる少女。

 

「…………」

「……これ、は」

 

それに対して、向ける目線はほぼ一色に染まっている。

 

「神」に対して親しい在り方を持つリーフは、明らかに異常なモノを見る目で視ている。

「神」に対して恐れを持つ灯花は、半ば畏怖を捧げるような……それが何かを本能的に理解しているように手を組み合わせている。

 

「ふぅむ」

「……伽月ちゃん平気?疲れちゃったぁ?」

 

それに対し、ある程度事情を共有する(しろ)は口癖のような言葉を漏らし。

唯一それに対して親しくない一商人の娘である紫雨は、それを独り言として処理する。

 

契約した……『宿った』神との交信、対話はその宿った相手とだけで行われる。

単純に対話を行うのであればその肉体を一時的にでも貸与するか、或いは廃神社で行ったように呪法陣を利用することで具現化するか。

何にしろ、一般的に肉体を持たない存在であるはずの神をこの世に降ろすにはそれなりの苦労がいるはずなのだ。

 

(にも関わらず、()()()()()()()()()()

 

違和感がないことこそが違和感、と言ってしまうと無限に繰り返されそうだが俺の脳内整理的には無問題。

確かに条件を満たすことで対話を行えるようになる、という条件設定型の神もいたのは間違いない。

ただ、それは飽く迄神降ろしの準備を整える(フラグを立てる)だけなのだ。

 

(……いや、そう考えること自体が罠に嵌まってるのか?これ)

 

遊戯と実在は違う。

それを散々に味わっているのに、嘗ての知識が利用出来るからこそ引っ張られる。

こればっかりは多分いつまで経っても抜けない悪癖なのだろうと思いつつ、既に確定していることだけを前提にする。

 

(一つ。 相手は三柱の末弟、これは確定)

 

知識神であり冥府の神としての権能を併せ持つ思兼の言葉だ。

そして何より、あの神は()()()()()()()()()()()()()()()()

そう信じるだけの雰囲気を持っているし、相手もそれ以上に契約を重んじているからか。

まあ細かい部分は別にしろ、何も分からない相手であるのは確定とする。

 

(一つ。 伽月に宿った、これもほぼ確定)

 

先程からわーきゃー言いながら何段もの階段を飛び越えていく姿。

導かれている、と直感的に感じたのはやはり神による指導故か。

逆に言うなら、それを受けているということは何らかの契約なり約束なり、受けるだけの代償を支払ったからなのか。

今気にするべきはその一点。

行き着いた先(リーフ)の時と同じにしてはいけない。

 

(なら……)

「リーフ、灯花」

 

考えを浮かべるのは《幽世(死地)》。

本来であれば襲われ、死することを警戒するべきはずなのにその気配が不思議と掻き消えている。

それは支配権を行使したからなのか、或いは()()でも通したからなのか。

問うべき機会は多分来ないと思いながらも、出る為の道筋を求めながらも。

魂に近い場所なのだろうこの場所だからこそ、神に親しい二人へと声を投げ掛ける。

 

「…………うん」

「……おにい、さま?」

 

片方は何事かを理解し。

もう片側は何かを曖昧に感知しながらの返答。

向けている視線は全員が全員、目の前の少女。

 

「――――ああ、こう滑れば良いんだ」

 

動きを言語化し、自分に落とし込み、更に発展させる。

武術として基本であり奥義であるはずの行為を容易く実行し、自らの血肉へと変える。

露骨なまでの変異を見て、変えられていく仲間を見て。

それを踏み止めようとするのは間違ってはいないはずだ。

 

「一度、アレを()()()()()

 

例え、それが。

能力(スキル)霊能力(ステータス)に依存しない発展形であっても。

本来一から積み重ねていかなければならない構築を飛ばすことで叶えられる、有り得ない存在を作成する果てであっても。

今此処にいるのは、人間であって情報(データ)ではないのだから。

 

思兼、と小さく言葉を紡いだ。

分かってるよ契約者、と。

まともに認められたような返事が返ったのは、直ぐ後のこと。

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