字面だけをそのままで認識するなら到底不可能な行為。
その存在自体が大多数に信仰される対象である以上、信仰する側である少数が殺せる筈もない存在。
俺達が一度成し遂げることが出来たのは、それが仮想上の存在ではなく肉体を持つ生命体と定義できたから。
縁と土地と、或いは多大なる奇跡の果てに為ったのは知識と偶然の末の末。
現状推定契約を結んでいる
寧ろ――――単純に見るのなら。
その契約者を殺してしまう方が余程容易いのだ。
けれど、それを実施できない。
実施しようともしない場合、やるべき行動は大きく分けて二通り。
一つは肉体に落とし込み、その肉体を祓い、
そして、もう一つ。
前回はそんな伝承の欠片もなく、時間もなかったからこそ何も出来なかったけれど――――。
神の名を知り、二人がいるからこそ行える行動がある。
良いか、とまずは一区切り。
呼び寄せた二人の少女と顔を近付け、こそこそとする話し合いに近い。
こうしている一分一秒毎に強化されているが、これ以外に対応方が無いというのが嫌らしい。
(……まあ、神が認めるだけの才能があった……ってのは良いが。
こんな奴いなかったはずなんだけどな、
浮かぶ幾つもの疑問を他所に避けつつ、舌を回す。
別に聞かれてしまっても良い。
これを阻害すること自体は出来たとしても、既に行ってしまった過去は変えられない。
伝承として成り立つほどに高名だからこそ捩じ曲げることが出来ない、名を伏せる最大の理由の一つ。
「リーフに頼みたいのは単純だ、『太陽神の裁き』を使ってくれれば良い」
ひょっとすれば、こうされることも織り込み済みなのかもしれないけれど実行する。
今の……人から掛け離れていくような状態を見逃せないというのは、単なる我儘に過ぎないのだから。
「…………あれを、です、か?」
「精神力のことは気にしないで良い。出来るだけ短く、威力も低めでいいから」
今必要になるのは三柱の長女、その再現。
本来であればこの世界に於いての在り方を調べて貰う必要があるはずだが。
不幸中の幸いとでも呼ぶように、長女と二柱目に限ってはこの世界における存在定義が為されている。
だから、
『ワタシに聞かなくて良いのかな?』
(今はいい、俺の認識とズレてるならお前なら分かるだろ)
『…………それもそうだね』
神に関することだから、名を知る存在だから。
本来なら『洽覧深識』の共有効果に依って認識が繋がる筈だが、そもそもその神の名を知らない二人には意味がない。
――――と言うより、口にしてその存在を確立したくない、と言ったほうが正しいか。
人として口にはしていない。
思考としてでしか考え込んでいない。
唯一人としての
「灯花は……そうだな、リーフの前に堂々と立ってくれればそれで良い」
「……リーフ、さんの?」
「ああ、少なくともお前が後ろじゃ駄目だ」
こんな付与属性がついた《幽世》だからこそ有効な手筋。
……いや、こんな場所だからこそ容易に降りてきた領域。
太陽を背に纏う少女、という属性こそが重要になる伝承。
つまりは――――嘗ての世界における力関係を背景とした脅しに近い荒業。
(弟は姉に勝てない……ってだけじゃねーんだけどなぁ、あの関係)
正直色んな意味で恥ずかしい部分を含む伝承だってある。
けれど、少なからずこの世界の隠しキャラとしての
だからこそ、相手は誤認する。させる。
それだけの、児戯に等しい御為ごかし。
「……頼めるか?」
「朔、さん?」
年上の、母御と呼んで差し支えない女性の声を意図して無視する。
今眼の前にあるのが、そういった存在であることを怜花さんは理解しているはずだ。
進む距離がどうしても短くなっているのは半ば病人である彼女を慮っている部分も多分にある。
今だって、伽月を見る目はどうしても冷たく――――或いは、畏れを秘めた目をしているのだから。
だからこそ、無視する。
「……とうか、じゃなきゃ駄目なんですね?」
「そうだな、お前以外じゃ絶対に無理だ」
相手に対して対等だと思えていなければ無理。
周囲からの認識ではなく、自認識として必要なのは相手に対する態度の強さ。
自我の強さは、少なくともこの世界で生きる上で最も必要とされる精神の根幹なのだと思う。
(だから、俺は他にあんま強く言えないんだけどなぁ……)
煽っている側面が確実にあるから。
頼んでいる側面も確実にあるから。
その結果、少女達が見つめてくる瞳の色に関して言及出来る権利を失っていく。
至極当然のこと。
「だから、頼んだ」
「はい!」
だから、リーフが見つめてくる
気付かない振りをする。
気付いていることに気付かれれば、多分。
「リーフも、出来る限り早急に頼む」
「……分かり、まし、た」
胃痛で済めばマシな事態に発展するのは確実だろうから。
其の為に、覚悟だけは決めておく。
『もう遅いと思うけど』
……目を逸らしてることに追求すんのはやめろ。