オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

27 / 190
026/宿の一室

 

布袋に詰められた硬貨――――(ごう)

ちゃりちゃりと鳴る音は、当初よりも遥かに寂しく。

今後を考えて小さく溜息を吐く。

 

(本当に入っては直ぐ出ていくな……最初は。)

 

持ち込んだ武具防具、道具の各種を売り払う前に鑑定を依頼した。

それを引き受けたのは何年生きているのかも分からない、剃髪した老人だった。

 

鑑定代、そして売却費。

それらを合わせて受け取ったのは5000業。

鑑定代として持っていかれた費用が1000業程度で済んだのは良かったのか悪かったのか。

 

その後に先に霊能力者用の宿へと足を運び、一泊二日の予定で先に取る。

食事込みで二人一室、合わせて1000業。

 

塩など必須品を買う費用は父上から別口で預かっているとは言え。

道具に費やす金額と、今後を考えれば今回使えるのは精々半分といった所か。

しかも独り立ちすればそういった費用も当然自分持ち。

中々自立までが遠く、吐く息は異様に重い。

 

(何か加工系の能力に手を伸ばすのも有りなのかねえ……。)

 

中身は綿などでなく、もっと簡易で量を集められる加工された葉ではあるが。

普段寝ている場所よりも遥かにマシな布団の上で転がる白を横目に。

少しだけ能力構築を考えようと呪法を立ち上げる。

 

「白ー、ちょっと能力決めで時間掛けていいか?」

「構わんがー。 買い物は明日か?」

「ああ。 父上から紹介された薬屋にも行きたいし。」

 

念の為に声を掛ければ問題無しとの返事。

まあ白は暫く術技底上げよりは『無』の常時効果系を上げていく時間だし。

余り悩む必要がないのは助かるところ。

 

(さて。)

 

今回の幽世で上がった深度は『2』。

最初は『3』だと思っていたが、写し鏡で見る限り何処かで上がっていたらしい。

合計深度で『4』……つまり自由に使える能力上昇が6、霊能力が4。

この内霊能力に関しては何も考えなくていい。

取り敢えず振っておくステータスが決まっている。

 

(……取り敢えず実数値で10までは『渉』『速』『体』振りでいいな。)

 

『朔/深度4』
『力』『霊』『体』『速』『渉』『呪』

 

深度1では全て1スタート。

其処から3上がっているわけだが、最初の上昇で上がったのが『速』『霊』『渉』。

途中途中で負傷したのが影響したのか。

今回上がっていたのは『力』が1に『体』が2、『速』が2と『渉』が1。

そして手に入ったフリーを必要部分に2ずつ振り分けて完成。

 

(流石に10まで行ったら威力とかが不足し始めるし。

 『霊』と『力』に多少振って……『呪』は取り敢えず常時効果(パッシブ)で対応っと。)

 

出来ればどの霊能力も『10』は欲しい。

ただ主に使う物はガンガン上げていって最低で『50以上』は目指したい。

『無』の常時効果(パッシブ)で霊能力を底上げるものもあるが、余り補完にばかり割いていられない。

というのも、一部幽世内の仕掛けとして霊能力数値(ステータス)を要求されるものがあるから。

それも部隊員全員がそれぞれ判定されるので、完全に切り捨てていると開発側の罠に引っ掛かる。

……ランダムに現れる街人の、ランダム会話でしかヒント貰えないってどうなってんだ。

 

(さて、問題は能力側なんだが……どうしたもんかね本当に。)

 

実際、加工系――――或いは金銭を稼ぐ為に多少振る事自体は多分問題ない。

後半店販売系のアイテムの上位互換を確実に入手する場合、必要なのはコネか腕。

確実性を取るのなら仲間内で抱えておくのが理想なのは間違いない。

ただ、それを活かすには当然霊能力数値が必要になる。

 

今一番掛かり、そして今後も掛かることから鑑定補助系をこの段階で齧る?

……或いは白に加工系の能力を取って貰い、手慰みと物品調達に活かす?

何も考えずに戦闘継続系を取ってもいいが、身体への疲労は別問題だと分かったし。

 

「ううん…………。」

 

頭を抑えて考えつつ、適当に写し鏡を覗いていれば。

肩を叩く見知った手の先。

 

「……どうした?」

「いや、悩んでいるようだったのでな。」

「あー……。」

 

……相談するか?

と悩むのも今更だよな。

 

「……ならちょっと話聞いてもらっていいか?」

「ああ。 何に悩んでおる?」

「能力の取得先。」

 

あー、と口にする。

彼女自身も妖の時との違いを体感した筈だから。

なんとなく俺の言いたいことが分かっての発言だろう。

 

「当初は戦闘系にするつもりだったが、身体が出来てないのもあるんだろうなー。」

「幽世でのことじゃな?」

「ああ。 それに迂闊に新しい()()()を取れば……分かるだろ?」

 

感覚系、なんて分類が有るわけではない。

ただ迂闊に目と同じように耳や鼻、そういった部分の拡張をしてしまえば。

同じような現象が起こった場合対応が出来ない、という問題が有る。

 

「ならどうする?」

「今悩んでるのは幾つか。 鑑定補助を取るか、加工系を取るか、戦闘継続系を取るか。」

「……ふぅむ。 取り敢えずご主人、悩むくらいじゃったら一つ頼んでも良いか?」

「頼み?」

 

ああ、と一言。

 

「ご主人も術技系……前衛を張れる、とは言わなくても当てに出来るモノを早めに取っては?」

「ああ……。」

 

確かにいつかは取らなきゃだし……。

身体が出来る前から腕に馴染ませておく、というのは全然有りか。

 

「だったら――――。」

「であるなら吾も――――。」

 

侃侃諤々。

二人での相談は、予想よりも長く。

そして予想よりも良い形で進んでいく気がした。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。