一つ、思い出したことがある。
俺も遭遇したことのないイベント。
やり込んでいたプレイヤーが掲示板で書き込んでいた内容だ。
『そういえば、西洋出身のヒロインが漏らしてた内容なんだけど。
なんか、西洋の方限定の能力が幾つかあるらしくてさ。
その中に、
『kwsk』
『情報はよ。』
『普通に使うだけなら戦闘中にランダム効果が出るお祈りスキル。
ただ、そういうのを無視して……
確か、そんな書き込みで。
俺も当時は
そして結局その後、誰も発見できなかった曰く付きの話。
そして、
彼女の現状に良く似た背景を持つ西洋のヒロイン。
屋敷の中に閉じ込められ続け、家の為だけにその身を捧げることを強要される姫。
名前さえも誰からも呼ばれずに、救い出した時に初めて名を告げる彼女。
その彼女が浮かべていた視線と、瓜二つ。
「やっぱり……おかしい、ですよね?」
薄らと、空間に溶けそうな言葉。
咄嗟に身体が動き、彼女の腕を取っていた。
「いや、おかしくはない。 珍しくはあるけど。」
同一視するのは何方にも失礼だと分かっている。
ただ、貴族の少女と同じような状態であるとするなら。
彼女の、
そんな脳裏に残った知識と。
悲しそうな表情を前に、見ているだけなんて出来なかった。
「わ、わっ。」
そうした結果は劇的で。
目の前の、薄い肌は紅色に染まり。
けれど腕を振り解こうとはせずに。
そして、俺の背後から見知った妙な気配が強くなった。
「……そんなこと言えば、霊能力者は誰も同じなわけないんだから。
全員がおかしいってことにならないか?」
彼女がそうしたように。
俺自身も、腰の水筒の口元を緩め。
一滴の水が浮かび上がり、俺自身を写したかと思えば能力画面へと切り替わる。
別に必要はないが、大気中のモノを使用するよりは負担が軽く済む方法で。
「俺だってこんなだ。 目がおかしい能力者、って言われれば否定できないし。」
そして、画面を反転させる。
触ることは出来ずとも視界に入れることは出来る。
だから、『狩る者の眼差し』や『徒人の慧眼』……
更に言えば家系で引き摺っている堕ち人関係に数値異常。
見えていない部分にこそ、俺の危険度は潜んでいるのだがそれは置いといて。
「…………で、でも。」
完全には言い負かせられない。
けれど、心に罅は入れられたように思う。
それはそうだ。 まだ知り合ってほんの少し。
その程度で変わりきってしまうのなら、あんな表情は浮かべない。
「リーフがそう思うんだったら、それでもいいよ。」
ただ、それを知った上でも。
「俺はそう思い続けるってだけだから。
君がどう思おうと、唯の女の子ってだけだから。」
恐らく、彼女を狙ったという悪魔は彼女の霊力のことを知っていたのだろう。
文面をそのまま読めば『尽きることの無い霊力』。
そんなもの、一度捕らえられれば死んだほうがマシの状態が永遠に続く。
だから、彼女は本来は選ぶべきなんだ。
それを強要すること自体が俺の我儘でも。
自分の手で道を切り開くか。 誰かに庇護されて生涯を終えるか。
その二択を。
「ぁ、ぁぅ……。」
顔の赤みが更に増していた。
後ろからの圧力が更に増していた。
手を離しても、彼女の手は空中を漂っていた。
「……まあ、俺としてはそんなところかなぁ。」
いい加減面倒になってきたので後ろを向く。
殺気、なんて言葉で済まないような笑顔を浮かべていた。
「白。」
「何じゃ、ご主人?」
ニコニコと。
ただ、今手を取ったりすれば多分握り潰される気がする。
少しずつ解きほぐす必要はありそうだ。
……後で二人きりの時に説明しないとな。
「
だが、今はストレートに伝えるのが先。
ぐっ、とあからさまに怯む様子を見せた白。
ともだち? という声が、後ろから聞こえた。
「そんな事を言ってもだな?」
「俺に対しては後で幾らでも言えばいいが……。
見た目同年代の、同性別の、同じ
それがどれだけ珍しいのか、此奴にはまだ分かるまい。
主人公だからこそ、仲間として加えられる人物がそれなりに見つかるが。
それにしても日ノ本北から南まで全て行ったり来たりすることでやっとだ。
多分、この規模の街で今直ぐ見つかるのは……後一人いれば良い方だろう。
田舎に行けば尚の事。
自分達とは違うのだから、と。
殺されて終わる能力者がどれだけいるのか、態々作り込んでくるスタッフの悪意を知らない。
「だから、俺に反発するのは構わんが。
彼女とはちゃんと向き合え。」
多分、俺だけじゃどうしようもないだろうし。
「…………分かった。 が、ご主人。」
「うん?」
笑顔で手を握ってきた――――あっ、やば痛たたたたたたたたた!?
めっちゃミシミシ言ってる!
「
そんな言葉を耳元で呟いて。
手を離し、彼女からすれば目前のリーフへと目線を向ける。
今の言葉と。
先程までの台詞と。
後は、色々な痛みとで。
俺自身、今どんな顔をしているのかは分からないが。
……多分、全員が顔を赤くしているような気がしていた。