オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

37 / 190
036/月夜

 

話を終え、部屋を出て。

食事を終え、部屋に戻る。

そんな日常生活ではあるけれど。

普段と場所が違えば、流れる時間も変わって見える。

 

気付けば宵の夜。

しかし普段と違って、外の景色は引かれた電気で明るく光る。

……この電気を発生させる大元も、特定の妖の残滓(ドロップアイテム)なのだけど。

それらを意図せず無かったことにし、世界は今日も回っている。

 

(……なんて、俺も疲れてるのかね。)

 

幽世の中とは違い、外の月は三日月で。

案内された部屋の窓から眺めるそれは、普通のものとは違って見えた。

 

(普段なら寝てるか起きてるか、中途半端な時間では有るんだが……。)

 

どうしたものかね。

便所で用だけでも済ませて考えるかな、と扉に手を掛ければ。

近くから小さく軋む音が、扉越しに聞こえる。

 

かたり、かたり。

直ぐ側の階段をゆっくりと、誰にも気付かれないように昇る音。

()()()()()()()()()()()()

 

(リーフ……?)

 

その後姿は、食事時に着ていた衣装と酷似はしていても色合いが違う。

黒い外套を取り外し、何にも染められていない白い衣装で。

 

(確か、二階って荷物置き場くらいにしか使ってないって話だよな?)

 

中程か、もう少し上か。

その程度まで移動するのを確認してから、気付かれないように部屋を出る。

 

かた、かた。

ゆっくり、差足、忍び足。

自然とそんな歩き方に慣れてしまっているからか、或いは向こうが集中しすぎているからか。

此方は上を見上げ、けれど向こうは俺には気付かない。

そのまま、二階の何処かへ姿を消していく。

 

その時に身体が動いたのは、本当に自分でも分からない。

好奇心なのか。

老婆の依頼からなのか。

或いは、この身体の持ち主の意思からなのか。

ただ導かれるように、気付けば俺自身も階段を登り始めていた。

 

かた、かた、かた、かた。

軋む音は変わらずに。

上と下とを注視して、誰も来ないことを密かに祈って。

やがてその祈りが通じたのか。

異常が見当たることもなく上へ――――その曲がり角へと移動する。

 

そっと、顔だけを覗かせれば。

屋根から微かに入る月光の下で。

ぶつぶつと何かを呟きながら、手元のカードを開く少女の姿。

 

「今日は、大丈夫だった。」

 

手元のカードを開いて、再び元へ戻している。

 

「明日は、どうかな。」

 

一度束をシャッフルし、もう一度上を開いて戻す。

 

「明後日は、どうかな。」

 

更に一回。

 

「その次の。」

 

更に。

 

「その次。」

 

繰り返す。

 

「次。」

 

夢幻に。

 

「――――。」

 

身体が一瞬、濃く薄くと点滅して見えた。

同じ動作を無限に繰り返す。

ぶつぶつと、何かを呟きながら。

()()()()()()()()()()()()、次へ次へと繰り返す。

 

「…………リーフ?」

 

声を掛けたのは、その姿が余りに曖昧過ぎたから。

人ではなく、或いはまた別の何かではなく。

昼間の姿とは全く違い、何処か神秘的な気配が浮かんで消えている。

 

「…………朔、くん?」

 

下を向いていた顔が起き上がる。

その眼だけが曖昧に、何処か遠くを見つめている。

 

取り替えっ子(チェンジリング)

『運命神の導き』。

彼女の性格の出来た時と、彼女自身の背景。

 

彼女達の話から聞いていた内容で、浮かび上がるのはたった一つ。

 

「……()()()()()()()()()?」

()()()()()()、だよ?」

 

自身が得てしまった能力で。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()という事実。

 

変だなぁ、とほにゃりと嗤う。

当たり前のことじゃない、と小さく微笑む。

 

「……ルイスさんは知ってるのか?」

「知らないと思う、よ? これ……私の、我儘、だもの。」

 

何があっても失いたくない。

そう思い込んだが故に、その能力を暴走させ。

そして彼女の中のナニカが、正しくその力を発揮させている。

 

占い。

或いは占術。

()()と同じ言葉だからこそ、言霊として仙人の持つ力という意味を併せてしまう。

 

人が至ったその先。

『神』と似た意味を持つ存在。

未来を見通す、運命神の権能。

 

危機を避けたいという心からの感情。

足りない瘴気は無限に汲み上げられる霊力が補って。

『人のままでいなくては、意味がない』――――そんな心が結晶化してしまう。

 

(……此奴、()()()()()()()()()()()()()()()。)

 

人が人のまま、その存在だけを変質させる。

それ自体が壁を超える理由であるのなら。

元々が違う存在が、変質化する理由を求めてしまえば。

 

(……こうなる、ってことか。)

 

納得したくはないが納得してしまった。

そして恐らく、()()()()()()()()()()()()()

 

絶対に彼女には気付かれたくない、という思いがあって変わったことだから。

俺自身がもう少し近付いていれば或いは、気付く機会も無かったかもしれない。

 

「ああ、そうだ。」

 

ぽん、と手を叩いて何かを思いついたように。

そして、俺を見て小さく微笑む。

()()()()()()()()と、信じ込んでいるように。

 

「朔くん……も、先のこと、知りたくない、かな。」

 

未来が見えていれば安心だ。

全ての道程が作られていれば、危機が分かっていれば。

()()()()()()()()()()()()()()

 

「……はじめての、お友達。」

 

>>だから、私が護る。

 

「……はじめて、引かないでくれた。」

 

>>だから、私が導く。

 

「……だから、特別。」

 

>>だから――――。

 

何かを、言いかける前に。

今ならまだ、止められると心の何処かが叫んでいる。

 

「……リーフ。」

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

>>行動を待機しています...

 

だから。

その言葉を断ち切るために。

必要なものは、なんだろう。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。