オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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039/明け

 

翌日。

何とか二階から(白の力を借りて)彼女を降ろし。

自分の部屋で僅かなりとも睡眠を取った朝のこと。

 

朝食を頂き、そろそろ出るか、と。

準備をしていた時。

部屋の戸を叩く音と共に声がする。

 

「朔。」

 

そう声を掛けて来たのはルイスさん。

準備を止めて、扉を開いた。

 

「どうかしました?」

「どうしたもこうしたもあるかぃ。 ほれ。」

 

手元に持っていた瓶を見せるように渡される。

透明なそれの中には、褐色に染まった丸薬が複数個。

 

「昨日言ってたやつだよ。 それで50個入ってる。」

「え……もう準備できたんですか?」

 

あれ、()()()()()()()()って効果が強く見られて派生一個目(いちにんまえ)くらいの作成難易度の筈。

作れるものの範囲が広い作成系能力は派生数も多いから、色々取ると能力ポイントも喰うんだよなぁ。

 

「あぁ、と言っても在庫があったってだけさね。 基本的に能力深度に対して一個の割合だ。

 大体太陽が上る前に飲めば翌日の……日が変わるくらいまでは持続する筈だよ。」

 

……となると、白は今能力深度(スキルレベル)2だから一回で二個、と。

レベル上げるにしても在庫数と相談して、だな。

変に端数が余ると収まりが悪い。

 

「すいません、助かります。 それで、値段は……。」

「ああ、良い良い。 今回は無料にしておくよ。」

 

値段を聞こうとすれば手の前でひらひらと。

……いや、昨日聞こうと思ってたけど結局忘れていて。

今こうして渡されれば、払わないわけには行かないんだが。

 

「ええ……?」

「あぁ、ちゃんと理由はあるんだよ?」

 

それも多分、()()()()()()でって言えることが。

へ、と気の抜けた言葉が漏れた。

 

「自分で分かってないのかぃ?」

「まぁ……はい。 すいません、何が?」

 

若干呆れた顔をされた。

そして同時に誰かを心配するような声色で独り言を漏らしている。

『苦労しそうだ』ってなんのことだ。

 

「リーフのことさ。」

「……ああ。」

 

そう言われて思い至る。

……というよりも。

想定していなかった事を指摘された、という感覚が強い。

 

昨晩話をしていたのはリーフ当人でもあり、内側の誰かで。

当人からすれば夢か、或いは夢見心地に感じる現実程度の認識だと思っていた。

だからもうちょっと忠告はしておこうと考えていたのだけど。

 

「あの子から色々言われたよ。 多分、お前さん等が何かしたんだろ?」

「いや、殆ど何もしてませんよ。」

 

精々口で色々言ったくらい。

俺としては間違って見えたことを指摘したくらい。

とは言え、そうやって介入した以上は今後も付き合っていこうとは思っていたけど。

 

「……ま、これは婆からの礼ってことさ。 次からは業も頂くけどねぇ。」

「……なら、もっと稼がないと怖いですね。」

 

互いに小さく笑う。

それでちゃんとやり取りが出来て、仲良くしていけると確信できた。

 

「あぁ、そうそう。 内緒にして欲しいとは言われたが、リーフから一つ頼まれてねぇ。」

「?」

 

何故それを俺に明かす?

面白そうだ、と思っている感情が見え見えなんだけど。

そして多分、それで苦労するのは俺になるんだけど。

 

「あの子に薬の作り方を教えることにしたよ。」

「……へぇ。」

「元々引き継がせようとは思ってたんだけど、あの子から言い出すとはねぇ。」

 

……成程ね。

自分の意志で最初に選んだのは、自分の家系の技術か。

まあ、彼女らしい。

 

「……ま、あたしから言えることは一つだけさ。」

「今まで色々言ってましたけど。」

「うっさいね。 あと一つってことだよ。」

 

途中で茶々を入れれば当然に反論。

 

「お前さん等、帰るのは良いけれど気をつけなよ?

 そして、()()()()()()()()

 

……そう言われて、思い出すのは二人の話。

世界の一欠片になって欲しい、と頼まれた内緒の話。

 

「まあ、命大事に。 そんな精神で帰りますんで。」

「もし危ないと思ったら一回帰ってきな。 部屋くらいなら貸してやるからさ。」

 

そうならないことが理想なんだが。

これで必須攻略目標的には回復地点が入れ替わった……って感じなんだろうな。

親切で言ってくれているのだから、もしもということで答えておく。

 

「戻ることになったらそうします。」

 

じゃあね、と立ち去る彼女に再度挨拶し。

部屋の中へ戻ろうとしたタイミングで、二人の部屋の扉が開く。

 

「ご主人。」

 

ひょっこりと頭だけを覗かせて。

左右を向き、誰もいなくなっているのを確認した上で此方に近付く。

何かから隠れているようで、少しだけおかしく見えた。

 

「……何してんだ?」

「いやな、ちょっと色々あってな。」

「は?」

 

何故に?

……ああ、いや。 昨晩の記憶の影響か?

 

「大体何考えてるか分かるがその通りじゃ。」

「さっきルイスさんと話してたが、俺のことも覚えてたっぽいしなぁ。」

 

まあ、当然のことしか言ってないから落ち着いた後の謝罪とかそのくらいはあるかも。

ただ、彼女の考え全部を読み切れないからなぁ。

 

「なんか重い話じゃなきゃ良いんだが。」

「十分重いものを背負うって話、昨日したばかりじゃろーが。」

 

細い目で俺を見るのはどういうことだ。

また俺には別の理由ってことか? それは。

 

「ま、リーフから伝言じゃ。

 帰る前に、言いたいことが有る、と。」

 

……まあ、俺も言っておきたいことが有るからいいんだけど。

 

「いや何処にいるんだよ。」

「分かるじゃろ?」

 

白は上を見上げて。

それだけで、何となく何処だかが分かった。

 

「……もう一人の彼女と同じ場所、ってか。」

「そのくらい常に気が回ればなぁ。」

 

うっせえ。

 

戯言を口走り。

文句を言い合い。

それが俺達の対話だと言わんばかりの行動を取りながら。

 

昨晩と同じ場所へ――――階段へ脚を掛けた。

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