オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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ちょっと体調崩して昼間投稿できなかった……。


009/目的

 

翌日。

念の為普段用意する量に加え、少しだけ追加で仕入れたことで懐が寂しくなりつつも。

 

「身体の方は?」

「大分良くなりました。 改めて感謝を。」

 

日が出る前に、俺と伽月は一対一で向かい合っていた。

 

「そうなると近いうちに出ることになるよな?」

「そう……ですね。」

 

少しだけ歯切れが悪い会話。

何となく彼女が何を求めているのかは分かっている。

 

伽月当人が言っていた通り、組合関係に向かおうと思っていた理由。

それは俺自身も少しだけ期待していた、『仲間探し』という側面が大きいはずだ。

無論金銭的……目的のために一切業を使用しないというのも考え難いと思うからそれもある。

ただそれらが出来ない以上、彼女はどうするのか。

いや、()()()()()()()

 

「……あの。」

 

少しだけ間が空き。

恐らくは頼み込もうとでもした彼女の行動を、平手を向けることで静止する。

 

「まぁ、待ってくれ。 それを聞く前に、確認しておきたい。」

「確認……ですか?」

 

そうだ、と首肯する。

その為に俺は二人に声を掛けなかった。

俺だけでも確認しておきたいことがあったから。

 

「話せる範囲でいい、と最初の時点では言ったが……。

 出来るなら途中でさよなら、みたいなのは避けたいわけだ。」

 

彼女がこうして旅に出た目的。

もう少し言うなら、()()()()()()()()()()()()()()という部分。

唯でさえ能力者同士の修練には時間を費やすものなのだから。

その時間を”勿体ない”と思ってしまうのは。

恐らく、変わった視点故なのかもしれない。

 

「だから、たった1つだけでいい。 教えてくれ。」

「……はい。」

 

一拍開ける。

最近になって、こうした奇妙な空白を利用できると気付いてしまった。

タイミングを変える。

相手に考えさせる。

昔は全く気にしてなかったのに、妙なことばかり身についていく。

 

「伽月が求める最終目的は――――そして、終わった後はどうするつもりだ?」

 

現状、俺達は兎角人手が足りない。

信用出来て、長期で動ける仲間が足りない。

それがある程度以上に折り合いが付くのなら、俺は受け入れるつもりだった。

 

二人には、其処まで細かい話はしていなかったけれど。

部隊の長として、その辺りの対応は俺に任せられていると言って良い。

だからこその昨日の、体感上で合うか合わないか。

仲間云々の話を持ち出し、確認しているのだから。

 

「……ですよね。 話さないのは不誠実ですか。」

「先に言っておくと、俺達は『平穏な生活』が送れるまでは動き続けるつもりだ。」

 

暗にほぼ終わりは見えない、と告げる。

其処まで付き従うかどうかは別だが、此方の都合で打ち切りというのは無いと教えた形。

少しだけ奇妙な顔をしたが……それも一瞬で。

 

「……また、奇妙な目的ですね。」

 

くすり、と小さく笑う。

手元に握り拳を当てるような、不思議な動作をしながら。

それが奇妙に似合って見えて。

少しだけ、内心に触れた気がする。

 

「私は…………私の目的は。 今の所、人探しです。」

「今の所?」

 

……つまり、これから先で変異するかもしれないということか。

その会う人物次第で対応を変える、と言い換えて良いかもしれない。

 

「はい。 そして、それが終わったら……そこは特に考えてません。

 少なくとも……元の場所に戻ることだけは有り得ませんけれど。」

 

その言葉に混じったのは……多分嫌悪感と敵意。

つまり、生まれ育った時に対してそれ相応に何かがあったということか。

……何となく、大枠では見えてきた。

 

「ですから。」

 

改めて、と一度区切る。

恐らくそれは、彼女なりの礼儀だから。

 

「……同行させて貰えませんか? これでも、多少は剣技に覚えがあります。」

 

だろうなぁ、と。

他に選択肢がない以上、近寄っては来ると思った。

そしてその選択は、占い結果としては間違った方向へは進んでいない。

俺達にとっては、という前提が付いてしまうけど。

 

「結局、直ぐに別れることは考えなくて良いんだよな?」

「それは……はい。 恐らく、今の私ではどうしようもないでしょうから。」

「?」

 

少しばかり寂しそうで。

ただ、その目に宿った炎は只事ではないモノ。

 

……人探しなのに、今じゃどうしようもない?

 

「もう一歩踏み込んでいいか? ああ、能力の見せ合いは二人も交えてからで。」

「はい、事情までは話せませんけど。」

「分かってる。 ……探してる相手って、誰だ?」

 

首筋と背筋にちりちりとした悪寒。

以前にも感じた、嫌な予感の時特有の覚え。

それを発しているのは俺自身の肉体というよりは精神……だと思う。

 

「兄弟子……私にとって、追わねばならない人です。」

 

情念、というよりは執念に近い気がした。

深度で差があるというのに、俺を見つめるその光は酷い重圧を帯びていて。

様々な感情が入り混じった結果産まれてしまった、重力だとも思った。

 

(……怖っ!?)

 

重い女、というのが多分近い。

現在は余り突かないようにしよう。

 

「……分かった。 まぁ、何にしろ合わせるところからだな。」

「それで……申し訳ありませんが、少しばかり金銭に都合を付けて頂けませんか?」

 

そうして話が落ち着いたところで。

恐らくはもう一つ切り出そうと思っていたのだろう、業の融通を依頼される。

 

「武具防具か?」

「はい。 ……刀だけでも、身に付けていないと不安ですから。」

 

普段から身につけるやつは早々いないぞ、と。

言うべきか少しだけ悩んだ。


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