「実際体感してみんと分からんの」と。
一度白と伽月で戦ってみることにした。
取り敢えず手に入れた、付与効果が何もない両手で握る大型の刀。
恐らく大人からすれば握るのに丁度良い、手頃な刀に近いものだと思う。
(……地味に業が痛い。)
貯蓄が吹き飛んだりという事は流石にないが。
稼ぐ手段が固定化されている今はとにかく出費が大きい。
本来なら宿代でもっと吐き出している部分を節約できていてこれなのだから。
食い物にされる未成人能力者達はまあ悲惨と言うに尽きる。
ぶんぶん刀を振って感触を確かめている新入り。
その顔は……というよりその目は何だか輝いて見える。
唯の刀だぞ?
「おお……!」
「なぁご主人。 あの刀付与効果とかは?」
「なにもないぞ。」
「呪われてたりは?」
「しない。」
上に持ち上げ、全ての方向から見つめている。
放っておいたら頬擦りさえ始めそうだ。
若干怪しくさえ見える光景に白が一歩引いた。
まぁ、うん。 その気持は分かる。
俺も少しだけ距離を取りたい。
「となると、これが本質ということじゃよなぁ。」
「だなぁ。」
或いは趣味か。
人形趣味とまでは言わないが、この年頃の子だともう少し趣味あるんじゃないか?
と思いつつ横目で
能力を用いない占いは半分趣味化しているし。
薬の調合から派生した、香り袋のような小物作り辺りも趣味。
何も知らないやつから見ればそれはそれで内向的、地味なタイプだな。
(俺は俺で
素体の武具防具道具はかなりの数が用意されていたゲーム版。
それに加えてランダム性で加わる付与効果の山々。
欲しいのを求め始めれば、幾ら掘っても無限に終わらなくなる類のゲームだけあった。
(そう考えると俺等って大分濃いな……。)
ならあの程度も受け流すべきだろうか。
素振りを始め、快音を立てている彼女を見つつちょっと考え。
いやそれにしては独特過ぎるな、と脇に置いた。
「まあ、新しい武具を手に入れればああなる気持ちも分からんではないが。」
「分かるのか白。」
「というかご主人もたまに表情が嬉しそうになっとるぞ。」
え、それマジでか。
今までに手に入れた
そう思いつつ、腰に佩いたその武器に目が行く。
銘を『白鳥/黒鳥』。
二対で一つの武器で、その名前の通り柄が白と黒で彩られているのが特徴の刀。
持つ効果は『二刀流時に利き手でないほうの武具攻撃力増加』。
本来二刀流時に受ける攻撃力減少を補助するようなモノ。
とは言え、将来的にはその辺のペナルティを越えて二刀流時の方が攻撃力が上になる。
言ってしまえば、大器晩成の構成だから序盤補助用。
「……なんじゃ、急に目線を向けてきて。」
「いや、武具って言われて最初に浮かんだのがそれでな……。」
頬を染めてもじもじとされても困る。
実際俺の武具は付与効果枠が多いだけの
「俺も
「今は唯の贅沢じゃろうに。」
まあな。
で、いい加減止めるか。
今度は地面に叩き付け始めそうに見えるし。
というよりは刀で地面を掘り起こそうとしている、か。
……アレも、『地雪崩』とかの通常攻撃+範囲攻撃の術技だっけかなぁ。
「良いか、武具叩き折っても知らないからな。 全力で加減しろよ。」
念の為に念押し。
俺の根本が戦士と言うか、剣士に向いていないからなのか。
修練は大事だし、その間熱中するという考えは分からないでもないんだが。
相手と戦い続けたい、強い相手と戦いたい……そんな気持ちは未だに分からん。
自分と向き合うもんだろ基本。
そうすりゃ能力も手に入るんだから目に見えて強くなるの分かるし楽しいじゃん。
「分かっておる。 ……念の為に以前使っていたのも取ってあるしの。」
「あ、ずるい!」
「ズルいじゃねーんだよ!?」
ボソリと呟く白に大きく反応。
それを見せてほしいとかワイワイギャアギャアと。
なんか一気に打ち解けてる感がある。
背中の羽……妖に対して何も感じないのか分からんが。
ひょっとすると
「……大変……です、ね?」
「いや、突き詰めた求道者とかよりは遥かにマシなんだけどさぁ。」
苦笑いを浮かべる
まあ白からすれば、本能的なところで能力者と戦えるのはもしかすると幸福なのかもしれんけど。
伽月は……戦えるのが嬉しいというよりは競い合えるのが嬉しい、か?
「じゃあまあ始めるぞ……この小石が地面に落ちたら開始な。」
へし折ったらこいつらの食費から払わせてやる。
その辺に落ちていた小石を持ち。
二人が確かに頷いたのを確認して、宙に放り投げれば。
――――瞬間。
二人の気配が、『剣士』へと切り替わった。
(普段からそうしてろよ。)
多分、冷めた目で見ている俺がおかしいんだろうな。
今だけは。