オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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暫く会話パートが続くかと思います。すまねえ。


016/指摘

 

「先ず、俺達の前提として。

 ()()()が能力の指導を一切しない、というのは先ず無い。」

 

ぱちぱちと飛び散る火の粉が辺りへ舞う。

人数分用意された湯呑――持ち運びやすいように金属製、高い――が置かれ。

話をする準備が整ったと判断して、口を開く。

 

「一番最初……覚醒時から先導者が付くまでの間の事は置いておいて。」

 

先導者。

文字通りの意味で、”先達”。

この業界で生きていく限り、同業者は三つにしか分類されない。

即ち。 先達、同期、後輩。

 

年齢とかそういうのは関係ない。

文字通りに入ってから生きてきた年月だけを見る。

一切活動していなかったとか、そう言ったのは何となくの霊力の濃度で分かる。

だからこそ、年下であっても警戒を怠れないというのは当然のこと。

――――と、ゲーム内で偉そうなおっさんが言っていたのを覚えている。

 

「伽月の話を聞く限り、当初から先導者がいたのなら何かしら教えるのが基本だ。

 俺だって父上から知識を教わった上で、最後は自分で決めた形だったからな。」

 

実の肉体と精神とは別だが、口にする必要はない。

それを共有するのは白だけで、リーフにすら明かしてはいない。

何となく察されている部分はあるが……口にしていない以上、そういうもの。

 

「それで、もう一度確認の意味で聞く。

 伽月の能力方針に関して何も聞いてないんだよな?」

「……そう、ですね。」

 

だからこそ、その時点でおかしい。

何も教えないにしろ、大分類くらいは教えても良い筈だ。

それに『写し鏡の呪法』の重要性もそう。

逆に言うなら、()()()()()()()()()()が疑問になる程だ。

道具で代用できる、と考えるのは一部の突き詰めすぎたタイムアタック勢くらい。

『自身の内側の情報を水鏡に映し出す』、と書かれただけで必要性が――――。

 

「……いや、待てよ。

 なあ伽月。 お前()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

そうだ、そもそもの大前提。

取得するにしろ、最初だけは呪符を使用しなければならない。

それさえも教わっていないと判断しているが、その手の知識は何処で得た?

 

「ああ、それは……姉と、兄弟子からです。」

 

そういえば言ってませんでしたね、と漏らした。

但し、その顔は思い出したくないものを思い出すように沈痛に。

 

……一家全員が能力者、ってことか。

確かに俺みたいに一族全てがそういうモノ、という事もあるだろうし。

劣性遺伝にはなるんだろうが子孫にも才能は伝わっていくもんなんだろうな。

 

「姉?」

「はい。 私と……父と。 そして姉と兄弟子の四人で暮らしていました。」

 

勿論他にも住人は住み着いている、排他的な村だったらしい。

二度と戻ることは有りませんけどね、と。

嫌悪感を隠すつもりもなく吐き出すその顔で、何となく察するが。

彼女自身が言い出すまでは何も聞かなかったことにして先を促す。

 

「ってことは……実質的に先導者はその姉と兄弟子の方になるのか?」

 

少しだけ考えるように。

顎に手を置いて目を瞑り、そして開いた彼女は答える。

 

「……先導者、というのは能力なども指導してくれる人……という意味でいいですか?」

「そうだな。 大枠でも、どういう能力があるかを教える人物と言い換えても良い。」

 

間違ってないですね、と呟きつつ。

 

「『写し鏡の呪法』……自分で能力を決めることの重要性と、初めの一枚は姉から貰いました。

 それからは……誰にも相談せずに、使えそうなものを自分で選んだのが答えです。」

 

姉から聞いたのは、正確には以下の通りだという。

 

()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()()()()

()()()()()()()()()()()()()

 

「そう言われ、大分迷いながらではありますが……能力を決めたんです。」

 

何故そんな事を言うのか、という根本的な理由さえも分からないままに。

二年程前に言われた通り、自分で自分を決めて生きてきたと。

刀の技術……後から考えれば本当に基礎の基礎だけを教え込まれ。

そうして幽世に同行させられていた、と。

 

「死にたくはなかったので、生命力と書かれた能力と刀に関するものを。

 それと……万が一を考えて、複数体を相手にできるらしいものを選んだんです。」

 

成程な、と言葉にした。

 

「こういう言い方はあんまり良くはないが、間違ってはない。

 実際その最初の一手を掴めずに能力者として発展出来ない場合もあるらしいからな。」

 

自分が能力者だ、というのは何となくでも分かるもの。

そして他者も『自分と違う雰囲気』から察されるもの。

だからこそ追い出されるし、その場にはいられない。

けれど、『能力を取得する手段』を知らないという格差が発生する。

 

言い換えるなら、元の世界での創作にあった幻想世界の魔法使いと平民の差か。

魔法を使う才能があっても、それを使う最初の切掛を知らなければそもそも使えない。

だからこそ、今生きている霊能力者は幸運か。 或いは先導者が必ずいることになる。

 

「ならもう少し深掘りするぞ。 姉から最初は聞いたとして……能力者としての常識は?」

 

それは、と口を開こうとして。

少し押し黙り――――結局、決意して口にする。

 

「全員から聞きました。 その……組合? に関しては父から。

 幽世については姉からで。 兄弟子からは……寧ろ普通の生活の知恵を教わりました。」

 

…………ふぅむ。

そう考えると。

 

「知識が入り混じってるのは、それが原因か?」

 

そう、ポツリと漏らした。


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