オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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古戦場が中止になったのでちょっと書きました。


033/落子

 

『幽世の夢の果てで』には隠し要素がそれはもうごった煮のようにある。

 

システムなら、ステータスが1上昇すればどの程度ダメージに影響が出るのか。

スキルなら、どういう組み合わせで能力を取れば派生能力が出てくるのか。

イベントなら、どの条件を満たせばヒロイン/仲間キャラが現れるのか。

 

一つ一つを掘り下げていけば、”推測”は出来上がるが答えではない。

公式が攻略本でも出してくれれば良かったのだが。

生憎、クソゲーと定められて暴落が起こったことで会社が倒産。

実際のプログラム部分もブラックボックスが多く、確定まで持っていくのは出来なかった。

 

その中で、ある意味最も(ディープに浸かっている奴等の中では)有名なキャラ。

”神職”系の中で、通常にやっていては絶対に出会えないキャラクター。

 

先ず出会えるかどうかがゲーム開始時点でランダム。

次に性別もランダム。

超能力者としての全ての基準も出会った時点で最低値。

 

そんな彼/彼女が発見された当時、一躍有名になった理由。

その存在が持つ特異性は、『先天的な才能による取得制限の全撤廃』。

恐らくは血の影響に拠るものなんだろうが……これがどれだけ壊れてるかは言うまでもない。

 

その為に、最初に満たさなければいけない条件は――――『最低で一回以上クリアする』事。

出現確率は暇な奴等の情報集計が正しいのなら、出現開始時で1%。

その後クリアした回数分だけ加算され、最大で50%だった筈。

 

つまり、本来なら出会えるはずもないんだが……この世界は()()()()()()()()()()()()()()

であるなら、出現しているのかどうかの確認に時間を費やしても問題はない筈だ。

寧ろ仲間達にどう説明するか、と言う方が余程難しいんだが……。

 

(……夢で見た、とでも言っとくか。)

 

何言ってるか分からない、と言った表情をしたままの白が目の前にいる。

リーフも、伽月もそうだ。

廃れた神社ということは、荒れ果てた霊地。

……つまり、這い出てきた妖が拠点にする場所。

幽世から抜け出たことで知識を蓄え、人を喰らう存在の巣へ自分から向かうと言ってるのと同じ。

 

仲介所を経由した、討伐依頼ならまだしも……ってところだよな。

俺も普通に考えればそう思う。

 

ただ、そこに向かうのが最初の条件。

正しく言えば、存在していることを知らなければ『その人物』と誰も気付けない。

血縁上の父親……日ノ本が産まれ、神々が消え去った頃より続く()()()()の末。

存在自体が認められない、秘された人物は。

許されない愛の先に生まれ落ちた子だから。

 

(先ずはいるかどうかを確定させたい。 ……その前に説得から始めるか。)

 

乾き始めた唇を舐め、口を開く。

 

以前の――――当初の話からして。

俺と白は常に同じ目標を抱いている。

俺の特異性に関しても伝えている。

けれど、こうした唐突な内容まで全てを伝えるのは無理だ。

何とか向こうに気付いて貰えるように話を持っていく必要がある。

 

「一応理由がないでもないんだぞ。」

「と、言うと?」

 

そう問い掛けたのは、不思議なことに最前列にいる白ではなく伽月。

おずおずと手を上げながらではあるが、知りたがりの癖が出たのか。

 

「基本的に俺達が探したい神職の家系……本物の血筋ってのは隠れて生きてる。

 そりゃそうだな。 妖からすれば自分を簡単に成長させる生贄だからな。」

 

”神職”の家系の特徴。

それは、目覚める超能力者の家系を辿ればどんなに傍系であっても血が混じっていること。

その血が濃ければ濃いほど、使用できる派生能力が初期から多い。

俺達が探す存在……『始祖』の家系から血を分けられた末裔であれば、誰でも神職となる。

 

だからこそ。

表に出てくる超能力者は兎に角血が薄い傍系の鍛え上げた存在、という側面がある。

血を薄めない為に、けれど病を引き起こさない為に。

婚姻関係さえも管理されているという噂さえ存在する。(そしてそれは凡そ正しい。)

 

「だからこそ、普通に発展した神社なんざ行っても深度差が酷い相手しか見つからない。

 どころか多分二人は嫁候補として見られるかもな。」

 

何方も相当にレアな存在だ。

口にさえしなければ大丈夫だとは思うが、勘が鋭い相手ならリーフの違和感には気付くだろう。

だから、少しばかり脅しを挟む。

 

「翻って廃れた神社。 此処を制圧すると、一つだけ確実な利点がある。」

「……利点。 霊脈……いや、龍脈のことでも言っておるのか?」

「ああ、それだ。」

 

霊地、である以上存在するモノ。

そしてこのゲームにおける三つの舞台として設定された三箇所。

それぞれで恐らく名前は違うのだろうが、大地の真下に走る力の陣。

 

グネグネとしつつも、円を保っているとされるその上にこそ。

神社は必ず設立されている。

何しろ、将来的に調べれば分かることではあるが……龍脈を抑え込む役割もあるのだから。

 

「龍脈の上で力の線の存在が分かれば、俺かリーフなら追える。

 隠された神社を調べる時の正攻法を使うだけだから、問題にもならない。」

 

廃れた神社の清浄化依頼……から発展する神職を仲間にできるイベント。

条件は五感の何れかを発展させる能力を持ち、それの使用回数が一定以上であること。

 

「逆に言うと、これ以外を利用するほうが面倒になるから一回だけでいい。

 俺に付き合ってくれないか?」

 

頭を下げ、頼み込む。

認められるかはまた別問題ではあるが――――。

それでも押し通そうとして。

 

そこから、少しだけ。

記憶が、曖昧に塗り潰されている。

 

視線を、上へと持ち上げた筈だ。

 

――――だぁめ。

――――ゆるさない。

 

ふと。

不快な声を、聞いた気がした。

 

ぴぃん、と。

張った糸を幻視したような気がした。

 

何となく、絶対に許さないような。

そんな誰かの思惑を、幻視したような気がして。

 

無意識のまま、指を右から左へ。

その糸を、断ち切るように動かした。

 

「…………仕方ないのう。」

 

――――恐らく、それは俺の空想の中だけで。

実際には何の動きもせずに、目線を伏せたままだった。

 

頭の上から聞こえた白の言葉で、我に返る。

 

「……助かる。」

 

不自然にならないよう。

そんな言葉だけを、発するのが精一杯だった。

 

それを聞いていたのは。

恐らく見ていたのは、感じていたのは俺だけだったのだろう。

 

――――今のは、何だ?

 

ばくんばくん、と跳ねる心の音。

恐らく、唯の幻視。

幾度となく見てきた、見えてしまう何かの断片。

 

(そうだ。 ……その筈だ。)

 

けれど、不思議と薄れることのない強い敵意。

 

不思議にも程がある事に。

それに対しては、絶対に立ち向かわなければいけないような。

そんな予感を、強く抱いていた。

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