オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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042/血盟

 

白が戻るまでそれなりの時間が必要で。

その間に用意するもの――――特に重要視する物品を話し合い。

戻ると同時に動き始めた。

 

『お、おい?』

『今直ぐ荷物置いてお前も来い。 行きながら話す。』

 

一人だけ話においていかれた彼女を引き摺るように連れ出す。

……何だかんだ言って、彼女はこの部隊を作った時の最古参。

そして俺と意志を共有する、現状唯一の存在。

完全に蚊帳の外にするつもりは欠片もなく。

本日二度目の店に向かい、扉を開くまでに話は済んでいた。

 

『むうう……。』

 

ただ、認めたりしているかは別問題。

必要、とは分かっているのだろうが個人感情が認めない、に近い。

 

……まあ、今回に限っては俺の意志を突き通させて貰うが。

何かしらで機嫌を取る必要性はありそうだ。

数年の間に慣れた対処を思い浮かべながら、店の戸を開く。

内側から聞こえる、やや高い声二つと低い声一つ。

 

「どーする、お父さん。 西側の街へは実質的に封鎖みたいなもんだけど。」

「仕方ねーだろ。 幽世が出た時と同じような対応を進めつつ、だ。」

「ボクは留守番のペース落とす方向でいいんだよねー?」

 

どうやら当然のように現状について話していたようで。

情報入手速度としては……まあ、株仲間なら普通なのか?

専門の斥候……忍者みたいな人員を裏で飼ってるとか言っても不思議ではないけど。

 

ドアに付けられた鈴が鳴ったことで、視線が全て此方に集中するのを感じる。

だから、開きながらに全員に伝える。

 

「その件に関して情報提供、及び相談と依頼があります。 お時間貰って良いですか?」

 

ぎぃ、と音がして。

内側に白と共に踏み込む。

紫雨がいる現場だからだろう。

表情を無へと切り替えて、付き従う形を取っている。

 

「朔……情報提供、だと?」

「はい。 まだ確証はないので売買と言った話でもないです。」

 

そうなれば成人にして商人、株仲間の一員と言った面が強くなる。

どれを取っても俺なんざ指先で潰されるだけだし、何より確証がない。

偽報を彼に伝えるほど、俺は死んだ人間になりたくない。

 

「ですが、今日紹介した俺の部隊員……伽月に関係している可能性があります。

 一旦お話をさせて貰えますか?」

 

今は対等な立場ではない。

此方から頼み込む場面。

大きな借りを作るような、普通なら跳ね除けられるのも当たり前の行動だ。

 

事実。

一度大きくふぅ、と息を吸って自分を落ち着かせている紫龍さんの眼光が鋭い。

普段の何処か好々爺とした、年上の男性ではなく……純粋な先導者としての側面。

 

「二人は排除したほうがいいか?」

「いえ。 全部聞いて貰ったほうが助かります。」

 

分かった、と案内されたのはやはり本日二度目の客室。

対話室、と言い換えてもいいその部屋に五人が座り。

他に話が漏れない事を確認した上で、全てを打ち明ける。

 

推定探している相手。

相手の腕前。

此方の目的。

その為に取りたい行動。

 

基本的に、超能力者の組合側では今回の騒動の犯人を特定に動くはずだ。

その腕前と、後は運次第で時間制限が決まると思っていい。

 

「……成程、な。 念の為に確認するが、お前も今日まで知らなかったんだな?」

「ええ。 人を探してる、ってのだけは聞いてましたが……。」

 

此処までの行動を短絡的に取る状態になっているとまでは想定外。

伽月が対峙し、斬られたのは当人同士の話だから関係はない。

今回の場合は”不特定多数”を狙う可能性があるが故、の話だ。

 

ふぅ、と一度溜め息を漏らすのを見て。

良し、と自分の頬を叩いた後。

元の……普段の親父さんの雰囲気へと移り変わる。

 

「おとーさん?」

「大凡朔の考えで間違いはないが、幾つか追加しておくぞ。」

 

俺の視点から足りていない部分の補足、ということで。

姿勢を正してお願いする形へ。

 

「先ず時間制限云々と言ってたが、恐らく最長で次の季節に移り変わるくらいまでだと思え。」

 

この世界、通信技術が全くと言っていい程成長していない。

だから遠くに連絡する際も手紙や護衛を雇った上で自分で向かうのが普通。

 

だとしても、今回の場合は面子という問題がある。

”被害者に理由がない場合”で、最長として三月程。

理由がある場合はまた変わってくるそうだが、それでも半年程度が限度。

それまでには捕捉し、捕らえるなり斬り伏せるなりの末路が待っているのは確実だと。

 

「次に……お前南に行くと言っていたな?」

「そうですね。 ”央麗”に立ち寄れるかまではちょっと分かりませんが。」

 

北麗、東麗、西麗、南麗、央麗。

昔でいうところの関東平野一帯辺りを占める、”五麗”と呼ばれる一帯。

この辺りは初心者向け、余り恐ろしい妖が現れない傾向にある。

成人まではこの辺で鍛えておこうと思っており、それに賛成したのも親父さんだ。

 

そして、俺が目指そうとしている場所は央麗と西麗の間辺りに存在する廃神社。

この詳細な位置までは、まだ誰にも明かしていない。

……此処でなければいけない理由も、同じく。

 

「大分無理な道程で行く……のも変わらないか。」

「はい。 途中までは楽しますけどね。」

 

商人が通る道は、細いながらも通れるくらいにはなっているはずだ。

仮にいなかったとしても、超能力者が通った道中を途中までは利用すればいい。

そして、此処に来た真の目的。

 

「紫雨。 お前が望むなら、今回の依頼に対する謝礼として部隊に迎え入れることも構わない。

 詳しいところは親父さんとかと相談した上にはなるが……。」

 

一息、挟んで。

彼女に対しての、命を懸けさえする契約の名前を発する。

 

「『血盟(けつめい)』を部隊員全てに行うつもりだ。 お前がそれを受け入れるのなら、だけど。」

 

――――さて。

どうなるかな。


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