オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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043/五人目

 

”血盟”とは何か。

 

一言で言ってしまえば、部隊全体で共有する霊力の形を用いた儀式呪法。

データで言ってしまえば、『その部隊だけが持つ固有の能力』。

 

その部隊に属する人物達が持つそれぞれの形を利用したモノの為、効果は未知数。

そして、常時効果と発動人員に応じた起動効果のそれぞれを持つ。

 

パッと聞くだけならば利点しか無いが、勿論こんな強力な効果に制限を掛けない開発ではない。

とは言っても他のものよりも単純な話。

『生涯を通して血盟を結ぶ行為に回数が存在する』というだけの話。

そして最大で血盟を結ぶことの出来る同時人数制限は能力に比例し、最低で7人、最大で10名。

システム的にパーティーの控え要員の人数を削ってくるという悪行。

 

何より、血盟を結ぶ為に必要な行為。

相手の血液なり体液を体内に取り込むこと。

普通であれば選ばれるのはまず前者。

故に血で結ぶ連盟。

 

つまり。

強力な効果を求めて、何度も結んでは解除なんてことは許されるはずがなく。

事実上、これを実行する部隊は『生涯その部隊として活動する』意思表示として扱われる。

 

それを知る相手の前で言えばどうなるのか。

 

「…………良いの?」

 

()()()()()()()()()()()、という誓いを立てたような扱いを受ける。

頷きながら答える。

 

「元々考えていたことではある。 散々にお前自身から言ってたのもあるしな。」

 

余談ではあるが、今まで俺達三人でこれを血盟を起動しなかったのも理由がある。

起動時の効果……呪法としての効果を成り立たせる際の問題。

それは、最小でも2~3人の行動を必要とするから。

 

当時、実質的に結んでも常時効果しか期待できず。

また現状で起動してしまえば後衛に特化しそうという問題。

無論それでも問題はないのだろうが、出来るならバランスが整った上で結びたい。

 

(……組み合わせとランダム要素が交じるから真面目に想像できない効果なんだよな。)

 

なんて、その当時は思いつつ二人に説明し納得して貰った覚えがある。

まあ白は当然のような顔をして。

リーフは嬉しそうに微笑んでいたが。

 

「ただ、出来ればこれは一度外に出てから。

 つまり戻ってきてから行う形にしたいと思っている。」

 

儀式陣とかは必須ではないと言え、初めての起動時にはあったほうが色々と便利。

何より、その方が全員の意志の確認がし易い。

複数人での血盟ともなるとお猪口、或いは醤油皿位の小さめの器が必要になる。

人数が不明だったからまだ準備してなかったが、手配して貰ったほうが良さそう。

 

「……此方としちゃ直ぐにでもしてほしいんだがな。」

「口約束、程度には思ってませんから……。」

 

やれやれ、といった顔を浮かべる親父さん。

約定として提示したものを切り捨てるつもりはない、と明言した俺。

紫苑さんは面白そうに眺めているし、白は不機嫌さが気配に滲み出始めている。

 

まあ、親としては当然だろう。

結んでしまえば確実。

安心……とは言わなくても、途中で捨てられたりする可能性は排除できる。

 

ただ、超能力者としての視点だと少しだけ変わる。

合う合わないを実際に試した上でないと怖くて実行なんて出来ない、となる。

それは性格面であり、腕前の面であり。

その人物の背景を全て無視して、個人単体で見詰めた結果を踏まえてするかを決める。

 

そんな前提を無視して俺が口にしたのだからその位は妥協して貰える筈だ。

親父さんと話していた内容では暗に前提となっていたように思うが。

今回、自分から切り出したことでこの件に関してのみは主導権を握れた。

向こうから言われていたら……まあ、この場とは言わずとも。

出るまでに実行は必要不可欠になっていただろう。

 

順番が前後するだけ、とは言え。

何となくではあるが、戻ってから――――巫女関係者を仲間に加えてからにしたかった。

そんな内心は、彼女達を含め誰にも言えない真実。

 

「それで、紫雨。 お前の答えを聞かせてくれ。」

「……今?」

 

不思議なことに。

彼女はその言葉を発することを恐れているようにも思えた。

今まで散々言っていた事を前言撤回……というわけでは無さそうだが。

 

「嫌なら無理とは――――。」

「いやじゃ、ない。 でも。」

 

おや、とは思いつつも。

口にしようとした言葉に被せるように返るのは反論。

……んん?

 

「ボクでも、良いの?」

 

瞳に映っていたのは、恐らく怖れ。

あの雨の日に見たような、自分では何も出来ないことを知った時のような目。

 

「何が出来るかもわからない。」

 

意識してか、無意識だったのか。

それは分からないにしても。

多分、彼女は俺に寄り掛かっていた面は大いにある。

 

「それでも、良いの?」

 

だから口にして。

行動を取って。

 

そうして今、彼女が恐れているのは多分。

自分のせいで、俺達に何かが起こる事へのモノ。

 

「今更過ぎるだろ。 それでも俺はいいんだよ。」

 

そうして、それさえも受け入れると改めて告げた。

青臭いなぁ、と笑いつつも怒りが隠れていない親父さんとは目線を合わせないようにしつつ。

まあ今言ったこと、口説いてるようなもんだしな……そうもなるよなぁ。

俺、まだ年齢二桁にも達してないんだけど。

 

「……うん。 よろしく、お願いします。」

 

目の前で、頭を下げる彼女と。

妙な気配を漂わせる一人と。

面白そうなものを見る女性と。

ずっと俺の背中を、引き千切りそうな勢いで抓り続ける式の中。

 

痛みに耐えつつも、これで五人目が確定した。


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