オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

88 / 168
二章終了!
Chapter2終了時のデータは明日辺りに出します。


045/”もしも”

 

悪夢(ゆめ)を見た。

目の前で部隊の仲間達が裂かれていく姿を。

見知らぬ友人が、見知らぬ恋人が散っていく姿を。

 

淫夢(ゆめ)を見た。

見知らぬ誰かが、見知った誰かが覆い被さる。

重なり、溶け合い。 けれど精神だけは溶かさないように。

 

可能性(ゆめ)を見た。

探索技術に重点を置き、聴覚拡張する場面。

白ではなく、竜種のような西洋の妖として分類されるような少女を呼んだ。

里で鍛えている際に、幼馴染と出会った。

親友だと思える同性に出会えた。

 

夢を、夢を、夢を。

普段見るものと違い、視覚だけで見る夢。

声は聞こえない。

触感も無い。

ただ、見ることが出来るだけ。

 

幾つも幾つも。

流されて、食い止めようとして。

けれど何をしても決められたように話が進んでいく。

 

見覚えのある事象(イベント)

見知らぬ事象。

 

干渉しようとしても、結局無駄で。

幾つも見る内に目覚め。

予定されたように準備を整え。

再び眠っては、同じ様に夢を見る。

 

起きている間の行動に違和感は抱かれていないようで。

ただ、俺自身の意志と身体の動作が別に動いているような感覚だけを覚えて。

再び夢を見る中で――――何千個目かの夢を見ている時に、ふと気付いたこと。

 

”頭の上に糸が見える時と、見えない時がある”。

 

何故見えるのか、いつ見えるのか。

そういった差異を追いかけられる程頭が回っているわけではないが。

そんな中で、特に気になった夢は三つ。

 

『伽月と思われる女性が、男性を斬り伏せ。

 死骸を前に口元を歪め、幽世に消えていく夢』。

『死んだ目をした紫雨と思われる女性が、もう一人と共に鎖に繋がれる夢』。

『何かに操られるようにして動く俺達を見て、唯一人微笑む女性が暗室に佇む夢』。

 

そのどれも、頭上に吊るされた糸に操られるようにしていた。

そして気になった理由は――――まあ、全員が知り合いだからなのだとは思うけれど。

()()()()()()()()()()ような、そんな悪影響を感じたから。

そうなってしまった原因はお前だ、と責め立てられている気がしたから。

 

目を覚まし、寝て。

寝ては夢を見て、馴染ませ。

何かが浸透するような感覚を覚えながら、また目を覚ます。

 

見てはいけないものを見ている、そんな感じもする。

見なければいけないものを見ている、そんな感じさえする。

 

最後の方には、寝ているのか起きているのかさえ曖昧になりつつも。

そもそも、起きているような夢を見ているのではないか。

そんな事に気付いてから少しして。

見ているものが何なのか、朧気に理解が進んだ頃になって。

 

半ば唐突に、強い衝撃を頭部に受けた気がした。

 

 

「んむぅ……。」

 

ちゅん、ちゅん。

 

鳥の鳴き声。

俺の腕に抱きつくように、薄い胸を擦り付けている白を寝惚け眼で認識する。

その片手が俺の頭上へと伸びており、寝惚けながら叩いたらしい。

追いやろうとするけれど、どうにも力が入らずにそのまま室内を見回す。

 

(…………眠った翌日。 ……やっぱり、混乱させるための夢か?)

 

壁に掛けられた出立予定日までのカレンダーもどきを見れば、夢で見た日数と一致しない。

脳裏を辿れば、眠る前に見た日時と一致するところから見て。

あの夢……の中に混じっていたのだろう何かの悪意なんだろうなぁと納得した。

 

ずきり、と頭痛が走る。

何方かと言えば目の奥、脳に直結しているだろう部分。

思わず空いた片手で目を押さえながら、深く深く息を吐いた。

 

(――――多分、最初に見た『俺』の夢で最後に受けた何か。 アレが主因だよなぁ。)

 

俺の頭に結ばれた、糸を切断するような行為。

ふと気になって白を見てみれば、誰かに切られたような糸の残滓が少しだけ残っていて。

そのまま空気に溶けるように消えていくのを見てしまう。

 

は、と思わず口を開きながらそれを見据え。

……必要なことだったんだろう、と考えるのをやめて。

おそらく変わってしまった自分自身を『写し鏡』越しに確認する。

 

深度に変化はない。

超能力に変動はない。

能力に変化は――――。

 

未取得/0点
【無】『狩る者の眼差し』1/1任意対象の生命力・霊力・状態を確認する眼差しを得る。
『彼方ノ幻想視』■/■あり得ざる世界を見つめる目。【禁忌】【干渉:五感】

 

「…………ナニコレ。」

 

見覚えのない能力。

見知らぬ修飾子、見知らぬ権限、見知らぬ派生。

 

そんな言葉を、ついつい漏らしてしまった。

 

 

 

得たモノは大きく。

本来得る筈もないモノ。

 

失うだけの筈のモノを抱え続けることを許された、干渉権限。

それを認めるか認めないかは別として。

五感の一つを選んだことで――――覚醒めてしまったのは、変わりようのない事実。

 

五つの存在を手に入れて。

欠けた一つに手を伸ばし。

それでも尚、と得ようとするのは。

 

人として。

いや、全てを失ったからこその、権利なのだろう。

 

これより三幕。

 

”失い続ける”事を決められ続けた誰かと。

異邦人との出会いと。

反抗を始める、序幕。

 

 

 

<Chapter2/宵の明星、刀刃振るう黒き修羅>:End

 

          ↓

 

Next:<Chapter3/因果は巡る、幻夢と巫女と>

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。