オカルト伝奇系恋愛鬱ゲーに放り込まれました。   作:氷桜

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002/疲労

 

無駄に出立前から疲れてしまった。

両手に白と紫雨を掴んで引き摺ってきたからか。

相手から逃げてきたからか。

 

……これが反映されて超能力(ステータス)伸びたら嫌だなおい。

 

「…………疲れた。」

「な、何だったんじゃあ奴は……。」

「出入り禁止、で対応出来るかなぁ~……?」

 

多分最も疲れたのが俺で。

途中で()()()()し、俺の後ろに隠れる珍事と。

紫雨にしては物珍しく、顔色を青くしつつも冷や汗をかく状況。

 

「…………お、おつかれ、さま?」

「何があったんですか……?」

 

俺達が戻る頃には、朝日が既に山間から覗き始めていた。

ずっと立っているよりは……ということで腰掛けていたらしい二人は。

俺達の突然の逃走に眼を白黒させていた。

 

「何がと言うか……誰がと言うか……なぁ?」

「……ちょーっと、ボクが見たことがない人種、かなぁ……?」

 

二人が特に争うこと無く普通に話す光景。

疲労ありきだというのは分かっているが、それなりに珍しい。

そして、彼処までこう……愚かな人種は昔に読んだ小説のモブとかそのくらいしか浮かばない。

 

「ちょっとだけ休ませてくれ……その間に説明するから……。」

 

荒い呼吸は少しずつ落ち着いてくる。

本来ならとっくに出立していたはずなのに、その前段階からこんなに消耗するとは。

それも精神的な部分を含むのはやめてくれ。

 

ふぅ、と一度大きく息を吐いた。

 

「俺が出ていく前に零した言葉聞いてたよな?」

「…………不味い、って、話?」

「そう。 リーフはよーく知ってると思うけど。」

 

ちらり、と目線をやった先は紫雨。

それだけで何となく頷いてくれてはいるが、説明を続ける。

 

「行った時に最初に浮かんだ感想は『逢引でも持ち掛けてるのか?』だったんだよなぁ……。」

 

浮かばせたくもない、先程の出来事を想起する。

 

『色々と騒々しいけど何も知らないのか?』

『これから幽世に? こんなに可愛いのに傷でも受けたら大変だろ。』

『俺が護ってやるから……。』

 

金髪、大型の大剣を二本に金属鎧。

年齢としては成人に足りるか足りないか。

身体付きからして筋肉質というよりは痩せ型、只管にアンマッチ。

そんな相手が紫雨に粉を掛けていて。

紫雨の表情が嫌悪から以前と同じく無表情、怒りを通り越した人形状態に変動していて。

 

(うわぁ。)

 

言葉を思い返すだけで……朝から何を抜かしてるんだ、という気分と。

初対面の相手に言う言葉じゃねーだろ、という感情。

総じてアホらしい、という答えに行き着いていた。

 

ちょっと相手するのも馬鹿らしかったので、紫雨に言葉を掛けて。

そのまま連れて行こうとすれば、俺に対して明らかに嫌悪感。

そして白を見てまた顔がにやけて、駄目だこれと速攻で判断。

 

『何か用かよ?』

『あ、ひょっとしてそっちの子の弟とか?』

『部隊全員美人とかそういう奴!?』

 

……多分だが、俺達の考えは一致していたと思う。

紫雨から視線が白に移った隙を狙い、こっそり取り出した煙玉。

全員が微かに頷いて、周囲に他に誰もいないのを確認して。

一方的に話し続けるやつの顔面に叩き込み、腕を掴んで離脱。

 

『げほっ!?』

『は、煙玉!?』

 

後ろで叫ぶ声に、街の人々も何事かと騒ぎ始め。

そんな姿を背に走り、何とか裏路地……店前まで逃げてきたという感じ。

途中幾つか普通じゃ曲がらない道を進んだので、純粋に追われても何とかなると思う。

何より、”誰も名前で呼ばなかった”から顔しか知らない訳だしな、相手。

 

「……と、まあそんな感じ。」

 

話す内に大分落ち着いてきた。

肉体的には、というだけで精神的には摩耗する一方ではあるのだが。

二人を見れば、朝の元気っぷりとは比べ物にならないくらいに疲れている。

 

……まあ、普段からああいうの無視してるからな。

直接相手するとやっぱり疲労が酷いんだろう。

 

「……どこでもそういう方はいるものですねえ。」

「伽月がしみじみ言うってのも変な話だな……。」

「いえ、私の村の若い男性と言えばそういうのが多かったので。」

 

そして私に声を掛けてくるけれど、決まって弱い人ばかりで、と。

……ほぼ独力で何とかしてた伽月より弱いってどうなってんだろ。

まぁ……先ず先導者はいなかったんだろうなぁ。

いたとしても碌なやつじゃなかったのは間違い無さそうだが。

 

「って、こんな話してる場合じゃねえ。」

「……そう、です、ね。」

「……ごめん、ちょっと嫌なこと思い出したのもあって動悸が収まらない……かなぁ。」

 

ああ……まあ、紫雨ならそうなっちゃうか。

ただ此処で待ってたらいつかは見つかるし、動けなくなる。

一月は離れる都合上、それだけあれば多少は落ち着くだろうし……。

 

「ちょっと無理して貰うことになるが、大丈夫か?」

「ぇ、何を……?」

 

余りこういう事したくはないんだけど。

紫雨の片腕を首に回し、肩を貸す形で立ち上がらせる。

あわわ、と口走る声が耳の傍で聞こえた。

……普段は自分から色々して来る癖になぁ。

 

「落ち着くまではこうして連れてく。 白も良いな?」

「むぅ…………ま、致し方あるまい。」

 

じーっと目線を向けていたが。

唯一動けない一人を連れて行くのなら、という目線か。

それとも抱えた過去を知っているからか。

今は譲ってやる、という態度で了承する返事。

 

……俺はお前のものじゃないんだが。

それを今言っても仕方ないか。

 

「リーフに伽月、ちょっと急ぎ目で街から抜けるぞ。 出来れば見られたくない。」

 

恥ずかしいし。

はい、という異口同音の声。

荷物を担ぎ始める二人を背に。

普段より顔を赤くした紫雨と二人、裏路地を進み始めた。

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