モブ死神に憑依したみたいです   作:神話オタク

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尸魂界編完結です! ここまで評価&感想、お気に入り、本当にありがとうございます!
お気に入りも4500を越え、評価は100件!
作者の夢幻、虚像でしかなかった天満くんに血や肉、骨、そして何より生き様を与えてくださったのは、ここまでの声があってこそです!


INTRUDER OF FATE(5)

 双殛の丘では遂に殛刑の最終執行者が姿を現していた。四人は丘への階段を駆け上がりながら、巨大な炎の鳥を視界に収めながら焦ったように息を吐く。天満、仙太郎、清音の三人はまだしも、肺を病んでいる浮竹にとってみれば階段を駆け上がるというのは重労働だ。

 度々、咳き込んでしまうのではと心配そうに顔を合わせる回数はもう二桁はとうに越えていた。

 

「まずい……間に合わないか……!」

「いえ……感じます、この地下深くから、一護くんの霊圧が」

「けどよぉ! たった一人でアレを止められるってのか!?」

 

 仙太郎の言う通り、巨大な火の鳥、燬鷇王は斬魄刀百万本分の破壊力があるという。独力でそれからルキアを救うなんてこと、普通では考えられない。だが、天満はそれに対しては何も言う事なく、ただまっすぐ羽ばたく執行者を見つめていた。

 そこに必ず、英雄が現れるのだと信じた瞳で。

 

「な、なんだぁ!?」

「あれ、誰か居る……あのオレンジ髪!」

「ほ、本当に双殛を止めたって言うのか!」

 

 一護が背負ったその斬魄刀、斬月で燬鷇王の嘴を受け止めたことで、なんとか浮竹たちも間に合うことができる。双殛の丘に辿り着いた浮竹は素早く燬鷇王の首に黒い帯のようなものを巻き付けていく。地面に杭が止められ、そこに八番隊隊長、京楽春水の手が置かれた。

 

「よう、この色男。随分待たせてくれるじゃないの」

「すまん、解放に手間取った」

「──止めろ!」

「えぇ、俺がっスか!?」

「奴ら、双殛を破壊する気だ!」

 

 四楓院家に仕える蜂家でもある二番隊隊長砕蜂がその霊具の用途に気づき声を上げるが、既に一手遅く、盾のような部分に二筋ある穴に浮竹、京楽の斬魄刀が差し込まれる。

 二人の霊圧が増幅され、帯を伝い、火の鳥はバラバラの矛へと姿を変えてしまった。

 

「うあっ!?」

 

 その破壊の余波、衝撃に全員が身を屈めた瞬間を一護は見逃さず、斬月の柄の巻布を回し霊圧を上げていく。双殛の磔架にもまた、矛の衝突で破壊されないだけの霊圧強度があるのだが、彼にとってみればそんなものは関係ない。斬月を突きたて、真ん中部分を地面を貫通するほどの衝撃で叩き落して、破壊していった。

 

「そ……双殛の磔架を……」

「……ブッ壊しやがった!」

「な……何なんだアイツは!」

 

 処刑の瞬間に立ち合おうとしていたものたちは勿論、味方をしたはずの隊長副隊長たちも驚きに彼を、殛囚のルキアを脇に抱えた死神を見上げる。

 ──それと同時に鬼道衆を薙ぎ倒しながら双殛へとやってきたのは朽木白哉によって敗北し、致命傷を負ったはずの阿散井恋次だった。

 

「何を呆けておるのだうつけ共! 追え! 副隊長全員でだ!」

 

 恋次にルキアを任せた一護は、砕蜂の怒号によって動き出した三人の副隊長の前に立ちふさがり、副隊長たちはあっという間にのされてしまう。近くで清音の小さな悲鳴が聞こえたがそれを天満が手で制した。それをほぼ無意識に押しのけようとしたところで刀がぶつかり合う音がする。瞬歩によって不意を打ったはずの白哉の刀が一護の刀によって防がれていたのだった。

 

「ね、姉さん……!」

「おい清音! 巻き込まれちまう!」

「三席──っ、炎輝天麟!」

 

 まずいと天満は咄嗟に砕蜂の仙太郎に向けられた蹴り、恐らく蹴りであろう超高速の白打を天麟で受け止める。

 市丸との戦いで砕けた刀は元通りになったものの、腕が痺れるほどの蹴りに思わず顔を歪め、そしてもう一発の蹴りを寸でのところで今度は炎輝で弾き飛ばした。

 

「待て、砕蜂!」

「動くな」

「元柳斎殿……!」

 

 そのまま睨み合った後、浮竹と京楽、伊勢七緒は総隊長、山本元柳斎重國に追いかけさせる形で旧市街の方角へ一時撤退、それによって天満は息を吐いて砕蜂に刀を向けた。

 隊長格ならいざ知らず、見覚えすらもない一般隊士(モブ)に二度も攻撃を凌がれたことで砕蜂は苛立ち気味に天満を睨みつける。

 

「貴様等の行為は十三隊の矜持を忘れた恥ずべき裏切りだ」

「俺も席官なんですよ、一応ね」

「どうでもいいことだ……これ以上恥を晒さぬよう、この私が葬ってくれる」

 

 霊圧が噴き上がり、天満の頬に汗が伝うが、彼女が行動を起こす前に疾風が通り抜け、砕蜂を巻き込んで連れていく。それを清音と仙太郎は呆然と見送り、天満は一つ小さく息を吐いた。

 ──後は、隊長一人だが彼女がどう動くか、これが天満にとっては賭けのような行動でもあった。

 

「……刀を納めなさい、天満さん」

「俺の名前……ええ、俺もこれ以上の戦闘の意思はありません」

「二刀一対の斬魄刀を持つ席官は、唯あなただけですから」

「そうでしたね」

 

 天満は二刀を両手持ちの一刀に戻し、鞘に納める。そして四番隊隊長卯ノ花烈に言われる前に気絶した三人の副隊長を彼女の前に集めて肉雫唼が虎徹勇音以外の二人を腹の中に入れていく。

 だがこれで本当に暇になってしまったな、と天満は思案した。残りはもう白哉と一護の戦いが終わればもう藍染たちが双殛の丘へ集まる頃だ。もう只の十席である自分に出番はない、業平とのんびり隊舎で空が裂け、反膜(ネガシオン)によって去っていく市丸にエールでも送るかそう考えていると卯ノ花に呼び止められた。

 

「天満さん……何処へ?」

「ああいや、俺はもう役目を終えたかなーって」

「あらもう一箇所行く場所があるのではありませんか?」

「……待ってください、卯ノ花隊長、それって……」

「──乗ってください。そこで話をしましょうか」

「はい……お二人は浮竹隊長のことを頼みます、総隊長の霊圧を感じますので」

「おうよ!」

「任せて!」

 

 内心は冷や汗を流す。何故こうなるのか、最初は適度な処でフェードアウトする予定だったのにどうしてこうも行かなければならないのか、と。

 ──実は天挺空羅によって藍染裏切りの報が伝えられるのは護廷十三隊の隊長と副隊長、副隊長代行の二人、そして直接関わりのない織姫以外の旅禍たち。即ち、一般隊士や下位の席官には全ての真実は有耶無耶にされるものだった。つまり天満も真実が有耶無耶にされる側であるはずなのだが。

 

「──清浄塔居林、ですね」

「あらあら、気が逸っているようですね?」

「違います、何故俺を巻き込むのかと問うているんです」

「……只の席官、とは言いませんよね?」

 

 その圧力、殺伐とした殺し屋集団だった初代護廷十三隊の、霊圧ではない歴戦の圧力を受け、天満は大人しく首を横に振った。そもそも本当に訊きたかったのは何故、自分が藍染の死が偽造であることを知っていると思っているのか、ということだ。

 天満の内心を読んだかのように卯ノ花は、ゆっくりと語り始める。

 

「山田七席が、あなたのことを話してくれましたから」

「……花太郎さんが」

「そしてあなたは真実に近いと判断していましたが、まさか行く先が本当に出てくるとは思いませんでした」

「カマを掛けたんですか……!」

「はい、ですがあなたがそう言うということは藍染隊長は」

「……居る、というかもう日番谷隊長が向かってるはずです」

 

 その後は天満の知っている通り、隊員に負傷者を任せ彼女は完全禁踏区域である四十六室の居住区画、清浄塔居林へと副官を随伴させ向かう。藍染惣右介を捜すために。だが、そこに何故か天満も随伴させられており、勇音もまた彼がついてくることへの疑問と不信感を募らせていた。

 

「勇音、私たちはこれから清浄塔居林へ向かいます」

「……それって完全禁踏区域じゃないですか、何だってそんなところに」

「……藍染隊長、いや、この事件の黒幕である藍染惣右介がいるからです」

「──っ!?」

 

 信じられない、と卯ノ花に視線を送った勇音だったが彼女は小さく首を振って事実であることを伝えた。そして天満は補足として公開しても問題ない情報を()()()調()()()()()()として伝えていく。

 四十六室は少なくとも現世での朽木ルキア発見時には殺害されていること、それ以降の命令は全て藍染による改竄であること。その言葉にまた、勇音は信じられないと目を閉じた。

 優しかった、暖かかった藍染がそんなことをする理由など、想像もできなかったからだった。

 

「……天満さん」

「はい……これは俺も()()()()()()()()、四楓院夜一が彼らを導いてきたという事実から、これは浦原喜助と藍染惣右介との間に起こった抗争、のようなものかと推論できます」

「浦原……って確か、前の技術開発局の……!?」

「ええ、技術開発局初代局長及び、元護廷十三隊十二番隊隊長浦原喜助……成る程、あの事件も藍染隊長が」

 

 浦原が追放された事件を知っている卯ノ花が一人で納得したような言葉を発したところで三人は中央四十六室の前にやってきた。既に扉は開かれており、天満の言葉通り十番隊の両名がその場を通り抜けていったことは明白だった。

 その場で倒れ伏したかつての最高司法機関の賢者たちを尻目に、その居住地であった清浄塔居林へとやってきたところで冷気が身体を襲う。

 

「……やはり此処でしたか藍染隊長、いえ……もう隊長と呼ぶべきではありませんね、大逆の罪人、藍染惣右介」

「どうも、卯ノ花隊長……そしてキミも居たのか」

「あなたの部下には世話になりましたよ」

「……それは、キミに差し向けた彼のことか、それともギンのことかな?」

「どっちでもいいでしょう」

 

 対峙してしまった、ここで対峙してしまった以上は最早しょうがないことだと思いっきり敵意をぶつける。意味のないことだ、彼は隊長が総出でかかっても倒せないほどの実力の持ち主、卯ノ花が全力を出せない、即ちこの場では卍解を使えない以上、彼を捕らえることは難しいことだった。

 

「すぐに此処だとわかったのかな?」

「……あなたがあれほどまでに精巧な死体の人形を作ってまで身を隠したのなら、そこは瀞霊廷で最も安全な此処において他はありません」

「惜しいな、読みはいいが間違いが二つある。まず一つ目に僕は身を隠すためにここへ来たわけじゃないそしてもう一つ──これは死体の人形じゃあない」

 

 瞬間、藍染の手に鏡花水月が握られ天満も目を瞠る。此処に来た時の最大の目的は()()()()()()()()()()()()()()()()()だった。識っているだけのものよりも実際に体験したことに勝るものはない。だが、それが()()()()()()()()()()()、彼の眼にはもう藍染が藍染の襟を掴んでいるようにしか見えない。発動の瞬間も、今も催眠下にあることも信じられないほどだった。

 ──そして彼が思考している間に全ての能力と東仙要も部下であることを()()()()として語った藍染は、市丸の袖の下から伸びてきた千反白蛇によってその場から移動しようとする。

 

「最後に、稲火狩天満──キミの眼は何処を見ている?」

「都合のいい未来を、常に」

「それはあくまでキミにとってじゃあないかな?」

「理解されないと子どもみたいに泣きじゃくった挙句、只の死神に成りたいだけのあんたには言われたくないね」

「……キミは本当に、キミのことは覚えておこう、稲火狩天満」

 

 卯ノ花への称賛ではなく、天満への問いかけと好戦的な瞳を最後にその場から消えていった。

 それは天満なりの意趣返しであり自分に対して市丸の偽物を寄越してきたことへの報復でもあった。勝手に世界に絶望し、勝手に自分に都合のいい世界を神になって創り変えようとしている藍染に、彼が思いもよらない言葉を掛けるのは天満にとっては案外簡単なことだった。

 

「三人を捕捉します!」

「いえ、天満さんなら彼の行き先も判っていますよね?」

「ええ、双殛の丘です」

「勇音……今知った事実と彼らの行き先を全ての隊長、副隊長の位置を捜索、捕捉して伝信してください」

「はい」

「そして同じ伝信を、あの旅禍たちにも」

「……はい!」

 

 こうして、天挺空羅によって全ての隊長と副隊長、そして織姫を除く旅禍へと真実が伝わっていく。その間に卯ノ花は日番谷と雛森の救命措置を始めたため、天満の出番は本当に幕を閉じたことを実感した。まさか藍染と対峙するとは思っていなかったため、その霊圧というか冷気に身体が軋むような感覚さえあった。

 

「天満さん」

「はい」

「お行きなさい」

「……失礼します」

 

 こうして彼は只の十席へと戻っていく。十三番隊の十席、詳しいことは何一つ秘匿された一般隊士(モブ)の立場へと。

 だが今回の事件で一つだけ実感したことがあった。天満にとっては気づきたくもない不都合さを孕んだ事実ではあるのだが。

 ──自分もまた、運命という引力にどうしても抗えずに引かれることがある。今回の卯ノ花に随伴したことや浮竹との随伴、そして市丸の神鎗を受け止めたことも。

 

「おう天満、終わったか」

「……ああ、業平か……これでお前を一瞬でも疑わなくて済むよ」

「どういうことだ?」

「いいや、こっちの話だ」

「……旅禍の処遇、どうなりそうだ?」

「間違いなく不問、賭けてもいい」

 

 天満がそう口にし、空を指さす。その指の先で、丘の空がひび割れる瞬間を二人は目にした。他の隊士たちや業平も口を大きく開けるその光景は正に地獄の釜が開いたようなもの。

 巨大虚の群れが丘に向けて光を射出していく。同族を助けるために世界を隔絶させる光、反膜(ネガシオン)を放ったのだ。

 ──これが終わりではない、これは始まりでしかない。蝶の羽ばたきでしかないこの天満という存在が、大きな嵐を巻き起こし、大きな変化にしていく。そういう強い眼差しで、彼は遠くに見える人影、三人の隊長を見つめ続けた。

 

「ギン」

「なんですか?」

「彼について、知ってることを教えてくれないか?」

「あの子は、天満クンは十席に収まるような子じゃあないってことくらいやろか」

 

 虚圏にて、藍染は市丸を呼び、尽く予想とは違う動きを取る男、稲火狩天満について訊ねていた。

 特に最後、自分の問いかけに対して全てを見通したような返答を、ひどくつまらなさそうにしたことに対して興味を持っていた。鏡花水月の能力を識り、そして二刀一対の斬魄刀というイレギュラーを持ち、彼に対して理解という単語を使用した。最初に浮竹に対して憧れと言った彼とは正反対の言葉、どちらかが嘘だったとしたら後者であることは明白だったが故に。

 

「次に会う時に、彼は卍解を習得してくると思うかい?」

「……いいや、あの子肝心なことはなーんも教えてくれんかった──けど、()()()()()()()()()()()()()()()()()と思います」

「……何者なのですか、あの男は」

「要には、どう視える?」

「いえ、私は()()()()()()()()()()()()()

 

 そこで藍染は更に驚き、市丸は一人で嗤う。市丸は天満と牢で会話した際に一番最初に東仙要の名前を出していたことで東仙も裏切り者であることを読んでいたと知ったことだが、鏡花水月の能力に気づいていればこそという見方をしていた。

 だが、彼は徹頭徹尾彼に視られるのを避けていたことを藍染も市丸もここに来て知らされた。東仙からすれば少し特別な斬魄刀を持ちはするが脅威とは思えない存在だったためにその認識のズレによって気づくことはできなかった。

 ──それは天満が自身の秘密に気づきうる存在は東仙要だろうと感じていたからだった。眼の見えない彼は、それ故に特別な感覚を有する。魂が二つあると判ればどうなるか知れたものではないと天満は十席というあまり隊長格に近くない立場を利用して東仙の前には姿を現さなかった。

 

「彼は脅威だ。更木剣八や卯ノ花烈、山本元柳斎重國に並べて警戒する必要がある」

「……はっ」

「あの時、もう少し話をするべきだったか」

 

 引き抜くかという話をしたあの夜のことを藍染は回想していた。四十六室の命令だと言えば彼は従わざるを得ないだろう。そこで飼い殺せば、あるいは言葉で懐柔すれば。藍染はいつの間にか彼が副隊長として自身の傍に立っている姿を思い描いてしまっていた。そんな未来があったのかもしれないとでもいうような、妄想というには些か具体的な映像、実像を結んでいた。

 

 

 

 

 




これにて「定められた侵入者」(尸魂界編)が終了です!
次回少し後日談を交えて、破面編に移行します。間違いなく長くなります。
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