モブ死神に憑依したみたいです   作:神話オタク

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INTO THE DARK(1)

 虚夜宮(ラス・ノーチェス)の玉座にて、藍染は睥睨する。

 そこには四体の破面と一人の人間がいた。ウルキオラ、ヤミー、グリムジョー、ワンダーワイス、そして織姫。そんな彼らを見下ろした藍染はゆっくりと口を開いた。

 

「ルピはやられてしまったようだね」

「よくわかんねぇ二刀流の男の卍解にやられちまったんスよ」

「……そうか、それは残念だ」

「ハッ、バカが」

 

 織姫はそれが即座に天満のことだと理解した。だが藍染は特に興味を持つ素振りもなくそれならばと織姫にグリムジョーの腕と背中の数字を治させ、再びNo.6(セスタ)へと返り咲かせた。

 高笑いをし、自分こそが真の十刃No.6だと言わんばかりの勝利の咆哮をヤミーもウルキオラも興味がなさそうに聞き流していた。

 藍染はそんな高笑いの中で天満の卍解について思考する。この局面、まだ序盤というところで手札を見せてくれたルピへの感謝を込めて、そしてその能力と成長を鑑みて瞬時にN()o().()()()()()()()()()()()()()()と判断していた。

 ──そんな一幕から時は遡り、突然の十刃襲撃から一晩明け、霊波障碍も収まった頃、天満は織姫宅で緊急招集を受けていた。最後にやってきた一護はそんな顔ぶれに何かあったのだと感じていた。

 

『井上織姫は破面に拉致──若しくは既に殺害されたものと思われる』

「浮竹隊長!」

『解ってる、俺だってこんなことは言いたくない』

 

 緊急回線の内容は井上織姫の消失について。最後に穿界門を抜けてから連絡がつかなくなっていたが、生存した護衛によれば門を抜ける最中に突如破面の襲撃を受けたのだと説明された。現世に来ていないのならそのまま拉致されたか、それとも殺害されたか。いずれにしてもそのどちらかだった。

 

『……そうか、それは残念じゃ』

 

 だが、一護の傷を治したことで証拠となり生存しているもののそれは裏切ったという認識になると山本元柳斎は語った。天満はその流れを識りつつ黙ってその様子を眺めていた。結局、ここで穿界門が後ろから現れ白哉と剣八が迎えとしてやってくる。日番谷先遣隊は即時帰還し、瀞霊廷の守護をすることになっている。

 ここでルキアについていくか、それとも空座決戦へと参加招集されるのかと考えていると後ろから声を掛けられた。

 

「……稲火狩天満」

「は、はい? 如何しましたか朽木隊長」

「兄に頼みがある」

「……え」

 

 天満としては朽木白哉とは刀を一度は交えたとはいえ、あまり積極的に関わるような相手ではなかった。だがこうして話しかけられたからには身構えつつも言葉を交えなければならない。しかもこのタイミングでの頼みとくれば、大方の内容は予想がつくものの、それを天満に告げるのが意外だと感じた。

 

「恋次とルキアは恐らく、ここから浦原喜助の元へ行くだろう。私が受けたのは連れ帰れという命のみ……後のことはルキアの心次第だ」

「特にルキアさんにとって井上さんは友人であり仲間ですからね……助けに行きたいという気持ちは一護くんに負けないかと」

「──浮竹に話は付けてある。二人と共に、虚圏へと渡ってくれ」

「朽木隊長……」

「私もすぐに向かう……それまで、ルキアのことを頼む」

 

 何故俺に、と天満は少し考えて自分がルキアを助けるためだけに瀞霊廷を裏切って、隊長である白哉とも刀を交えたからだと結論を付けた。その実績とルキアを仲間として思う気持ちを汲み、天満を義妹を護る刃として買おうというのだ。

 彼にとって誇りであり、何よりも強い亡き妻との約束。それを託された天満は、目を閉じてわかりましたと告げた。

 

「……兄様に?」

「はい、実力不足かと思いますが」

「謙遜してんじゃねーよ、あの朽木隊長に認められたんだ。胸張れよ」

「阿散井副隊長……はい」

 

 恋次はやや微妙な表情こそしていたがそう告げて天満の肩を叩く。天満からすればもう既に恋次も充分に白哉に認められているのだが、やはり副官であり尊敬し常に越えたいと背中を追い続けているとそういうものを見逃してしまいがちなのかも知れない。

 だがそれを気づかせるのは決して他者ではなく、当事者同士での話だ。そうでない、恋次の感情も天満には相手をする暇がないと感じていた。恋愛感情を実らせるのも育てるのも、この激動と戦争の日々ではどうにもならない。天満はそう思っていたし、二人がいずれ結婚しているのを知っているからこそ、彼の嫉妬混じりの感情も受け流せていた。

 

「おかえりなさい……でいいんスかね?」

「浦原……一護は?」

「黒崎サンと石田サン、茶渡サンは既に虚圏へと乗り込みました」

「……やっぱりか」

「まぁ一護くんですからね、総隊長の命を素直に聴くような男ではないでしょう」

「ま、それは三人も同じようなもんッスけどね」

「ところで兄様に頼まれたとはいえ、天満は大丈夫なのか?」

「……多分、浮竹隊長に話を通したって言ってましたし」

 

 浦原は何のことだか分からずに扇子を広げて口許を隠したが、天満はそれに気づいて種明かしをする。本人としても後で恋次とルキア、そして日番谷からも聞かされた話だったが、天満は先の命令違反が積み重なっていたため席官たちの監視を受けるための先遣隊選出だったというのだ。現世での任務ならば逆に好き勝手できないと判断されたと言っていたらしく、大人しくしているつもりもちゃんとあったのにという天満の愚痴に浦原は少しだけ可笑しそうに口許を緩めた。

 

「それなのに、こうして命令無視しちゃうんスね」

「させられるんです。俺の意図してることじゃない」

 

 必死に否定するが、恋次にもルキアにもその言葉を真剣には取り合ってもらえず天満は己の運命がそうさせるのだと天を仰いだ。

 そんなことを話している間に、浦原は何やら長い詠唱を唱えて空間に穴を穿つ。

 ──裂けた空間の先に広がっているのは黒腔(ガルガンタ)。浦原が何度かやってきた破面の空間を裂く「解空(デスコレール)」の発動の痕跡からなんとか不完全ながら接続が可能になった虚圏への道なき道だった。

 

「中に足場はなく自分の霊力で足場を作って移動することになります、そのまま暗がりへと進んでいけば出口となります」

「わかりました……でもどうやって一護くんたちに追いつくんです?」

「ああ、黒崎サンたちのいる座標にだいたい合わせられるようにしてるんで、それほど離れた場所には出ないッス」

 

 そういう仕組だったのかと天満は新しい情報に納得しつつ黒腔に突入していく。先導し足場を作る役目を担った天満は言われた通りに濃淡の濃い方向へと走り始める。

 最初は恋次が先導すると言っていたが、ルキアに反対されたためこうして天満が先導する。理由としてはこの中で一番鬼道が、つまり霊力操作が上手いのはルキアだが総量としては天満の方が高いためだった。出力だけなら恋次の方が上だが、彼は操作が大の苦手であるため一番うしろを落ち込み気味についていく。

 

「……なんつーか、几帳面だな天満」

「そうです? 割とざっくばらんに足場作ってますけど」

「そ、そうか」

「そう言うな天満、恋次は副隊長だが未だに三十番台の鬼道すら詠唱破棄で扱えんからな」

「うるせぇ!」

「……今度、俺が教えましょうか副隊長」

「うるせぇってんだ!」

 

 天満としては覚えてある程度以上には使えるものの斬魄刀自体が鬼道系に類し拘束も攻撃補助も全て斬魄刀で賄えてしまうため活躍の機会が少ない。そもそも斬魄刀戦術と鬼道の組み合わせは基礎理論として片手で斬魄刀を振るうのを前提としている。一応二刀でも扱える鬼道が無くはないが。

 

「それよりも私が許せぬのは一護だ」

「ああ、俺たちを信じて待てなかったんだ。一発くれぇは殴ってやらなきゃ気が済まねぇ」

「……物騒な相談してますけど、俺を巻き込まないでくださいよ、お二人とも」

 

 こうして一護は再会した際に殴られることになるんだろうなぁと天満は盛り上がる二人の会話を背中に感じつつ同情する。

 そんなやや緊張感のない雑談をしているとやがて空間が割れ、常夜とどこまでも広がる白い砂漠で出来た世界が目の前を埋め尽くした。

 

「よっと……ここが虚圏か」

「本当に何もないな……」

 

 目を閉じて霊圧を探知すると、そのまま進行方向に一護の霊圧を探知する。同時に既に別の、虚の霊圧も探知したためルキアと恋次とお互いに顔を見合わせて疾駆していくとその全体像が見えた。

 月牙天衝を顔に受けても平然としている虚は白砂の番人であり悪戯好きの十刃落ち(プリバロン・エスパーダ)でもある破面No.102ピカロを虚夜宮に閉じ込める役割も果たしていたルヌガンガだった。

 

「あやつ……一護の月牙を受けて平然としているのか?」

「どうやら、砂で身体を構成されている虚のようですね」

「そうすると俺の蛇尾丸じゃあ攻撃しても無意味か……!」

「ですが、砂である以上水分で固まるかと」

「ならば私の出番だな、舞え──袖白雪」

 

 解号と共にルキアの斬魄刀を構成する全てが白で染まる。氷雪系にして最も美しいとされる斬魄刀、袖白雪の鋒を彼女の前方の砂に突き刺し、その冷気を刀身に集め、一直線に放つ「白漣」を繰り出す。流砂による蟻地獄を生み出していたルヌガンガもまさか横から攻撃を受けるとは思ってもみなかったのか、口を大きく開けたその姿のまま凍りつき、地面に倒れ崩れ落ちた。

 

「ルキア……恋次……天満さん……!」

 

 感動と驚きに満ちる一護に向かってルキアと恋次は砂丘を飛び越えていく。その表情、自信に満ちた微笑みに一護は駆け寄っていくが、何が行われるかを黒腔内で知っていた天満はのんびりと砂丘を滑るようにして下りながら殴られた一護とルキアたちの仲間としての眩しさに目を細めた。

 

「つーか、天満さんまで来てたのか」

「安心してくれ、俺はキミを殴る理由はないよ」

「……おう」

「十席という立場は暇でね」

「天満! それでは席官でないから私が此処へ来たみたいになるだろう!」

「あ、すんません、失言でした」

 

 一護からすれば仲間として来てくれた恋次やルキアはまだしも、天満はルキアを共に助けようと言ってくれた人物ではあるが戦友としての意識はそれほど強くはない。にも関わらず二人と共に来たことを少し疑問に感じているようで、それを疑問視しているということは石田や茶渡はもっと疑問に感じていたが、一護の質問で全てが解決する。

 

「そういやそのマント、どうしたんだ? どっかで拾ったのか?」

「これは……虚圏は砂埃が酷いから持っていけと渡されたのだ」

「誰に?」

「……兄様に」

 

 それは織姫救出のために動いた三人にとっては大きな驚きとなった。規律と掟の絶対守護者にして堅物でもある朽木白哉が虚圏へ向かおうとするルキアと恋次、そして天満にマントを手渡したのだから。

 同時にそれは彼が三人の虚圏への突入を認めたということでもあり、一護はあの白哉がズイブン丸くなったもんだと呟いた。

 

「俺は朽木隊長に頼まれて、二人のお目付け役ってところかな」

「てめぇ……一応席次は俺の方が高けーんだからな」

「まぁ恋次では心配という兄様の気持ちは理解できる」

「それに一護くんたちだけっていうのも心配だったみたいで」

「ああ、あんな薄汚い小僧一人にウロつかれては虚圏側も不愉快だろうと」

 

 怒りの拳がバワバワの身体に突き刺さりバワッと苦悶の声がする。

 そのタイミングでルキアは遂に気になっていた存在に触れていく。天満も敢えてスルーしていた破面の三人、ネル・トゥ、ペッシェ・ガティーシェ、ドンドチャッカ・ビルスタンはそれぞれ名のり、最後に決めポーズと同時に名のりを上げた。

 

「グレート・デザート・ブラザーズ!」

「怪盗ネルドンぺ!」

「熱砂の怪力三兄弟!」

「揃ってねーよ」

 

 この三つが重なるように同時に言い放ったため、一護がすかさずツッコミを入れる。全員が虚であることを伝えた後にバワバワを含めて、改めて「グレート・デザート・ブラザーズ+1」と「怪盗ネルバドンぺ」と「熱砂の怪力四兄弟」という形で落ち着いた。もう既に誰も聞いていなかったため落ち着いたのだった。

 ──それから数時間後、漸く、長い道のりを経て一護たちは虚圏にある巨大な宮殿、虚夜宮(ラス・ノーチェス)へと辿り着く。殺気石ではないことを見抜いたルキアと交代するように、一護と恋次が斬魄刀を振り、壁に穴を開けた。

 

「暗くて何も見えやしねー」

「フ……しょうがねぇな、俺に任せときな!」

 

 その瞬間、天満が何かを察知したような顔をして、それに気づいたルキアもまた恋次が何をするのかを察した。詠唱をきちんと唱えればまだよかったものの、格好を付けて詠唱破棄の「赤火砲」を操作して灯りとしようとし──そして失敗した。ほんの僅かな、蝋燭にも劣る灯火を見せられ、石田が眼鏡のブリッジを持ち上げる。

 

「へぇ、随分と小さな灯りだね。キミがそんな控えめな奴だとは知らなかったよ」

「たわけっ! 下手なくせにカッコつけて詠唱破棄なんぞするからこうなるのだ」

「……副隊長、そういう役割は俺がやりますので」

 

 その後、鬼道が全く使えない一護からもフォローされ恋次は灯火のせいか顔を紅潮させた状態でうるせぇと叫ぶ。

 黒腔内で同じようなやり取りがあったのにまだするのか、と天満はちょっとだけ呆れていたが、これがヒントとなって恋次は打開策を閃くため、それを奪うようなことはしたくなかった。無論、この後の展開に暗がりからの不意打ち等があれば迷いなく赤火砲を使っていたと確信できたが。

 ──そのまま壁を抜けるとトーチに火が灯され、部屋の全体が視認できるようになる。その部屋を見て全員が──()()()()()()全員が驚き、焦りを抱いた。

 

「……別れ道か」

「面倒な処に出ちまったな」

「……遂に、こうなったか」

 

 天満の呟きは誰にも聞き取れなかった。

 虚夜宮の回廊は宮殿側である程度弄ることができる。故に入口が六つなのは不思議なことではない。一護、石田、茶渡、恋次、ルキア、そして天満の六人を相手にするのに入口が六つなのは当然だった。だが彼が知っている別れ道よりも一つ多いことが彼の驚きと僅かな焦りを生んでいた。

 

「六人、別々の道を行こう」

 

 一護の言葉に全員が同意する。そして恋次の掛け声で円陣を組み、手を重ねてからお互いの道を進んでいく。

 ──天満にとっては初めてとなる、ほぼ全てが未知という震えてしまいそうな程の道だった。だが戻るわけにはいかない。此処に来たのは一護たちの成長を間近で見るなんて物見遊山ではない。自分の信じる救世のために、少しでもよりよき未来のために刃を振る覚悟を持ってきた。それはたとえ『BLEACH』の展開と変わろうとも変わらないものだった。

 

「さて、どいつが出てくるかな」

 

 せめて待機組のNo.1〜No.3にぶつけるなんて真似はよしてくれよと祈りつつ、十刃落ちは全てNo.100+元十刃時の数字という考察を思い出していた。一護と戦うドルドーニが元No.3の現在No.103であることが確定していて、残りがNo.105のチルッチ、No.107のガンテンバイン、そしてNo.102のピカロだ。空白の番号は天満も知らないのだから出てこられると困るため市丸の回廊操作に全てを託すことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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