本体―車無田圭史(しゃむた けいし)
破壊力―B スピード―C 射程距離―B
持続力―A 精密動作性―E 成長性―E
能力―本体やスタンドが伴った行為を全て「この世のなんてことない日常の風景」「太陽が毎朝昇るのと同じぐらい当たり前の行為」として周囲に認識させる。彼がたとえどんな悪質な行為に及んだとしても、その被害者すら何の疑問も抱くことはない。
まだ葉一がサンジェルメンで調査をしているころ。
仗助は、暇つぶしに家の近くを散歩していた。
「待ってください、そこのステキな髪形の方……!」
ふと、背後から色っぽい声が仗助の肩を叩く。
「ステキな髪形……? えッ、お、おれのことッスか?」
「もちろんですッ! あぁ、やっと会えた!」
仗助の動揺を無視するように、その女性は手を固く握った。
そして、彼の頭には1㎜も浮かんでいなかった言葉が不意を突いた。
「アタシ……あの時助けてもらってからッ! アナタの事が好きなんですッ!」
*
「なッ……、にゃにイイーーッ?!!! かかか、か、カノジョォォッ?!」
飛び上がる大声に、通行人が思わず目を寄せる。
見やれば、コンビニ「オーソン」前で二人の不良が屯していた。
「バッカ億泰、声がデケエよ! そもそも、まだ付き合っちゃいねーッての!」
「仗助、お前、お前ェッ! なんかの冗談だろ! なぁ、冗談だと言え、ジョースケ! 言ってくれェッ!!」
億泰――虹村億泰は、脂汗を大量にたらしながら仗助に詰めよる。
心なしか、涙が浮かんでいるようにも見える。
「なんで! なんでお前なんだ仗助ッ! どーしてオレだけ取り残されるんだァッ!?」
「んなこと言ったってよォー、『告白』! されちまったもんは仕方ねぇしなあ~~ッ! いやー、ようやく世の女のコがこの仗助君の魅力に気づく日が来ましたかあーッ!」
一方の仗助。
困惑の色こそ浮かべているが、口角は緩んでいる。
「仗助ェッ! オレの前で浮かれるんじゃあねぇ!! もう一回やってみろ? 今度はオレの『ザ・ハンド』が出るぞッ!」
「分かった、分かったから落ち着けって! まだ康一は葉一のヤローと同行してるみてーだし、邪魔になっちゃ悪ィからしばらく黙っとくつもりだよ」
仗助、億泰、康一。
普段なら大抵この三人で集まるところだが、本日は一名欠けている。
「でもよ仗助……そういうことならよォ。待たせてんだろォ……? 返事だよ、なんて返す気なんだ?」
「まぁな……確かに助けてやったとはいえ、話したのはほんの一瞬だし。ショージキなところ、決まってねぇってのが本音だぜ。まだどんな音楽が好みかも知らねぇ女に、安易にYESっつーのは気分よくねぇしな」
「それによ、万が一にもまた山岸由花子みたいなプッツン女だったらよ……笑い話にもできねぇぜ」
山岸由花子。
康一に好意を寄せている、少々「プッツン」した女性である。
「そうだな……フゥ、少し冷静になってきたぜ。話聞いてくれてありがとな、億泰。おめーに話して正解だったぜ」
「なぁ仗助……。彼女が出来てもよォ~、付き合い減らすなんて言わねぇでくれよな~ッ」
「何湿っぽいコト言ってんだよ、いつだっておれとおめーはダチだろうが」
「だよな~ッ」
*
「オイ葉一……こりゃあ一体どういうことだ」
夜。
仗助は承太郎と共に、葉一を迎えに行っていた。
「どうもこうもない。彼が調査の途中でケガをしてね。手間をかけるが、治してやってくれないか」
葉一は、大ケガで意識を失った康一を地面に横たえた。
まもなく、仗助が葉一に掴みかかる。
「『ケガをしてね』だと……? フザけんなよ。どう見ても康一のケガは深刻じゃあねぇか! てめー、いったい何してやがったッ!!」
「よせ仗助、そこで止まれ。まずは康一くんのケガを治すのが先だろう。意識が戻ったら、本人に何があったのか直接聞けばいい」
仗助は慌てて康一に手を触れた。
見る間にケガが消え去っていく。
「葉一、おめーこれで依頼を問題なくこなせたとでも思ってんのかもしれねーから言っとくがよ。おれはおめーが何も起こさず、素直に依頼をこなすかどうかを見るつもりだったんだぜ。この康一のケガを見りゃあよお~~、そんなことは微塵もなかったと簡単に判るがな〜ッ」
「もちろんこれで信用を得られたと思うほど、私の面の皮は厚くないさ。康一くんのケガも、そりゃあすまないと思ってる。だが、実際犯人はとっちめたし、康一くんもケガが治った。信用するとはいかずとも、そろそろ開放してくれてもいいんじゃあないか?」
葉一は顔色を窺うように頼み込んだ。
その横で、回復した康一がムクリと起き上がる。
「仗助くん……ぼくがケガしたのは、もとはと言えば不用意に犯人へ近づいたからなんだ。
康一が口にした言葉は、葉一にとっては予想だにしていないものだった。
(
「康一くん……?」
康一は葉一の方を向くと、黙って首を横に振った。
「康一よお、おめーがそう言うなら信じるけどよ……。誰かに脅されて嘘言うようなタマじゃあないことくらい、よく知ってるからな。ただ、何もコイツに甘くする必要はねぇんだぜ。実際におれは、こいつが女に手を出すのを見てんだからよ。ま、その女に『告白』されるのは予想外だったケドなーッ」
「え」
「は」
「何……?」
「アッ」
仗助のうっかり発言に、その場にいる全員が固まった。
「こここ、告白ーッ?! 仗助くん、それ本当?!」
「やれやれ……どうりで妙に浮かれてると思ったぜ」
康一は顔を真っ赤にして叫ぶ。
一方の承太郎は、すっかり呆れ顔だ。
「仗助……後で変な逆恨みされないように先に忠告しておくがな、あの女に接触するのはやめておいた方がいい。そもそもスタンド使いだということも、それを用いて殺人をしたことも話したはずだッ! それに、あの女は……!」
「や、やかましいッ! おれだって康一の一件があってからチョット焦ってたんだよォッ! そもそも、胡散臭いお前の話がどこまで本当かだって分からねぇじゃあねぇか! スタンド使いだって話も、お前があの子を襲うための言い訳だったんじゃあねぇのかッ!?」
「何だと……?! 貴様、私をペテン師呼ばわりする気かッ!」
思わぬタイミングで口を滑らせたせいで、仗助はパニックに陥った。
しかも、よりにもよって不信感を抱いている葉一に反発されたとあっては、素直に聞き入れられるはずもない。
「それにあの子……おれの髪形を『ステキな髪形』だってッ! 真正面からちゃんと髪形褒めてもらったことなんて、高校入ってからこのかた全ッ然なかったんだよーッ! しかも! しかも女のコッスよ! 女のコ!!」
億泰に張った虚勢がボロボロと剥がれていく。
なんだかんだ、彼も男子高校生である。
「『ステキな髪形』か。いかにもお前が喜びそうなことを言うあたり、確かに少し胡散臭いな」
「じょ……承太郎さんまでッ! 康一、お前は応援してくれるよなッ?!」
思春期真っ盛りに、初めての告白。
こういう時は周りに反対されればされるほど、かえって素直になれないものだ。
「いや……ぼくも由花子さんの件があったからさぁ……。素直に喜べないというか、ハイ」
「康一もかよッ……! こいつはグレートにショックだぜ……。けど、その程度でへこたれる仗助くんじゃないもんネーッ!! 『据え膳食わぬは男の恥』ってやつだッ! 男仗助、この手に青春を掴み取るためにッ! 行ってきまァーーすッ!!」
葉一たちの呼びかけもむなしく、仗助は走り去ってしまった。
「ありゃあダメだな。髪型をけなされた時とはまた違うが、周りがすっかり見えなくなってやがる」
「だ、大丈夫かなーッ」
自分の経験もあってか、康一はひどく心配そうだ。
「ま、彼女の調査はほとんど済んでいるし……弾みで再起不能にされるようなことがあっても、私はもはや別に構わないしな」
「再起不能だと……? スタンド使いとはいえ、そこまでのことになるような女なのか?」
承太郎が鋭い目で葉一の方を見る。
その視線に少し怯みながら、葉一は調査資料を取り出した。
「
葉一が並べる資料に、康一はギョッとした。
承太郎は顔をしかめ、葉一の方を睨む。
「やれやれ、こういうヤツの事はもっと早く伝えてほしいんだがな」
「聞かれなかったもので。だが、予想通り仗助が向かってくれたおかげで、面白いものが見れそうだ。せっかくだ、君たちにも見せてあげよう」
言うなり、承太郎と康一の視界が突如として切り替わる。
「こ……これって……?!」
「仗助の視覚をコピーしておいたんだ。煽れば間違いなく彼女の元に行くと思っていたからな。そして、それを君たちにペーストさせてもらった。今見えているのは、彼自身が見ている景色そのものだよ。しかしまた……これはまた面白いことになっているじゃあないか」
視界に移る景色に一同が仰天するなか、葉一だけはひどく楽しそうに笑っていた。
「さてさて……今夜はがっかりせずに済みそうだな」
新年、あけましておめでとうございます。
結局先月中の更新は出来ませんでした……無念。
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次回「万羽優子は東方仗助が好き!? その2」
お楽しみに。