私のトレーナーさんは不思議な人だ。私の、というよりは私達の、だけど。
テンポイント先輩の担当としてその手腕を振るい、テンポイント先輩の実績や他の人からの推薦もあってチーム設立をすることとなった。神藤誠司、それが私のトレーナーさんの名前です。デジタルさんの調べによると、身長178cmで顔は多分、イケメンの部類に入る、と思う。言葉を濁したのは、トレセン学園には男の人なんてほとんどいないからその辺のことは分からないからなんだけど……。でも、同じクラスの子はトレーナーさんのことをカッコいいと言っていたので多分イケメンだと思う。
そんなトレーナーさんだが、とても顔が広い。学園だけにとどまらず、学園に来るお客様のほとんどがトレーナーさんと知り合いなのか挨拶を交わしている光景をよく見る。例えば、学園でちょっとした工事があった時に親方?らしき人と話している時もありました。
『お、神藤さん!久しぶりじゃないか!どうだい?トレーナー業の調子は?』
『順調ですよ。そっちはどうです?儲かってますか?』
『はは!神藤さんのおかげでウチも工事の仕事が増えてきたからな!お陰様で儲かってるよ!』
『俺がしたのは紹介だけですよ。仕事が増えたのは皆さんが頑張ってるからです』
『その紹介があってこそのもんだ!また困ったら頼らせてもらうよ!』
そんな会話があったのは記憶に新しいです。
それに、この前なんかは農家の人を代表してお礼にきたという人も学園に訪れていました。その人はトレーナーさんからの紹介だったらしく、トレーナーさんには特に感謝していました。
『神藤さん、いつもありがとうねぇ。今年は規格外の野菜が多かったから心配だったけど、神藤さんのおかげでなんとかなりそうだよ』
『いえいえ。学園には食べ盛りなウマ娘の子達がたくさんいますから。こちらとしてもありがたい限りですよ』
『それでも、感謝させておくれ。神藤さんのおかげで、この子達も廃棄しなくて済むんだから』
そんな会話をしていたのを見たことがあります。
学外の人だけじゃありません。トレーナーさんは学園の生徒からも頼りにされています。生徒の悩みを解決しているのを頻繁に見ていますし。
『神藤さ~ん!この前寮長に一緒に謝ってくれた件ありがとうございました~!』
『おう、次からは門限の時間ギリギリにならないように気をつけろよ』
『神藤さん。花壇のことなんですけど……』
『花の種類を増やしたい、ってやつだな?丁度最近珍しい花の種を取り寄せたんだ。後で渡しておくよ』
『はい!ありがとうございます!』
『なぁおっちゃん!ゴルシちゃん号の修理どうなった!?』
『それならもう済んでるぞ。ついでに改造も施しといた』
『マジかよ!?次乗る時が楽しみだぜ~!』
……とまぁ、結構な頻度で学生から感謝されているのを見かけます。勿論、そんなトレーナーさんを良く思わない人だっていますけど、トレーナーさんはそれを気にするような性格ではないのであまり相手にしていません。
そして勿論、私達プロキオンのメンバーもそんなトレーナーさんを頼りにしています。
『ミスター?面白いよね。アタシ達の意見を尊重してくれるし、何より一緒にいて飽きないよ』
『……今のあたしがいるのは、お兄のおかげだし。だからまぁ、感謝はしてる』
『おれが奇跡を起こせたのは、間違いなくあの人のおかげ。だから、あの人の頼みならなんでも聞くし、なんでもするよ』
『私は体質のせいで一杯迷惑を掛けたのに、トレーナーさんは嫌な顔一つせずに付き合ってくれました!スペちゃんとも仲直りできましたし、本当に頼りになるトレーナーさんです!』
『走るのに悩んでたデジたんに道を示してくれた人ですね。後、デジたんの同士です!うへへぇ、今度ウマ娘ちゃんのレース鑑賞会をするんですよ~』
『カレンが悩んでる時、相談に乗ってくれたんだ。お前のやりたいことをやれ、他のことは俺がサポートしてやる……って。いつだってカレン達のやりたいことを優先させてくれる。お兄ちゃんって優しいよね』
『誠司はどんなことがあってもボク達を見捨てへん。結果を残せんくても、大敗してもや。ボクもトゥインクルシリーズ走っとる時はめっちゃお世話になったなぁ。今でも昨日んことのように思い出せるで。皐月で初めて負けた時とかダービーで励ましてもろうた時とか菊花賞なんてボクが原因やったのにあまり責めんかったしホンマに優しいんよ。そうそう!有マん時とか……』
……なんか2名ほど重い人がいましたが、まぁ概ね頼りにしているという評価です。勿論私も頼りにしています!秋の天皇賞の時とか、チームのみんなも含めて本当にお世話になりましたし!
総じて、私達のトレーナーさんは優しくて頼りにされている、という印象が強いです。そんなトレーナーさんが今何をしているのかというと……
「理事長!なんですかこの大きな機械は!?また無駄遣いをしたんですね!?」
「べ、弁明ッ!?違うのだたづなよ!これは〈耕し君4号〉!前の3号が抱えていた問題点であるレース場にタイヤ痕がついてしまうという欠点ッ。その欠点を克服した優れものだッ!」
「別に前の3号でも十分だったじゃないですか!神藤トレーナーも、理事長を甘やかさないでください!どうせあなたが作ったんでしょう!?」
「誤解ですたづなさん!確かに作ったのは俺ですけど……。なんとこの<耕し君4号>、前回の3号と比べて色々とやりくりしてコストカットしたおかげで、3号にかかった費用よりも50%ほどお安くなっています!しかも3号よりもやれることは増えてます!」
「まぁ!それはお買い得ですね……っじゃ、ありません!そもそも作らなければお金は掛からないんですよ!?後誤解でもなんでもないでしょう!」
学園の理事長と一緒に、トレセン学園の練習場前で正座しながらたづなさんに怒られてます。しかも朝から。
「また怒られてる……」
「どうしたの?オフサイド……っあれは、プロキオンのトレーナーさん?理事長と一緒に怒られてるけど、何かあったの?」
「……多分、また理事長の無茶ぶりに悪ノリしたんだと思うよ、スズカさん」
「えぇ……。この前もゴールドシップと一緒に怒られてなかったかしら?」
私はスズカさんの言葉に頷きました。確かにこの前も、ゴールドシップさんの奇行に悪ノリして生徒会の人に怒られているのを私も見た記憶があります。いい大人がなんで生徒に怒られてるんですか……。
トレーナーさんを不思議な人、と言ったのはこれが原因なんです。確かにトレーナーさんは普段は優しくて頼りになる人だって言うのは事実なんですけど、時々人に悪ノリしては怒られている……っていう光景が良く見られるんです。一度だったり二度目だったらストレスでも溜まってるのかな?と思ったりしますけど、さすがに1週間に2回や3回のペースで怒られてる姿を見たらそんなことは絶対にないと分かります。
ただまぁ、学園の生徒も笑って見過ごしたりしているので本当に悪いことはやってないって言うのは分かるんですけど……。
「神藤トレーナー!テンポイントさん1人を担当している時はあんなに大人しかったじゃないですか!なんでまた前みたいに逆戻りしてるんです!?」
「しょうがないんですよたづなさん!毎日毎日面白いアイディアが出てくるんですから!だったら満足するまでやるしかないじゃないですか!」
「自重してくださいあの時みたいに!」
あんな姿を見せられたら、さすがに素直に尊敬することはできません。すごい人ではあるんですけど……。
「プロキオンのトレーナーさん、普段は仕事できるのにどうしてなのかしら?」
「それが分かったら苦労しないよスズカさん……」
「苦労してるのね、オフサイド……」
スズカさんが私を憐れんでいるような目で見てきます。スズカさんの優しさが身に沁みる……。
その後もトレーナーさんは理事長と一緒にたづなさんに怒られていました。懲りてくれたらいいんですけど、多分無理だと思います。
次回ガチャはロブロイですね。
簡単なキャラ紹介も終わったので次回から日常的なお話にしていきます。