鬼とギターとヒーローと   作:ブレイアッ

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誤字報告をしてくださった方。本当にありがとうございました。



今回はタツマキパート多めです。
AIにタツマキくん描いてもらったので貼っときますね。

【挿絵表示】



四之巻 竜巻く鬼

 奥多摩

 

 

 真夜中までびしょ濡れになりながら風斬捜索をした翌朝。

 

 耳に当てたスマホからコール音が鳴る。

 電話をかける先はお茶とお団子が美味しいお店。甘味処たちばな。またの名を猛士関東支部。

 俺を始めとする関東で魔化魍(まかもう)と呼ばれる化物と戦う鬼をサポートする組織が猛士でこの甘味たちばなって店が関東の拠点だ。

 

『ハイ甘味処たちばな!』

 

 電話の向こう側から聞こえたのは元気な女の子の声。

 

「あれ、イライザちゃん?」

 

『タツマキさん! おはよーございます! うちのベースがご迷惑かけてます!』

 

「あはは……うん、おはよ」

 

 電話の相手は清水イライザ。甘味処たちばなでバイトしているイギリス人の女の子だ。きくりのバンドメンバーでもある。

 

『開店前からってことはタケシの話ですか?』

 

「まあね。支部長、いる?」

 

『ちょっと待っててくださいねー? テンチョー! テンチョー! タツマキさーん!』

 

 ドタタっと足音と一緒に声が遠ざかっていく。

 ああ、イライザちゃんまた保留押し忘れてる。

 

 しばらくすると保留音が鳴ってすぐに途切れる。

 

『はいはいお待たせしました店長ですよ』

 

「あ、おはようございます。支部長」

 

 聞こえてきたのは優しげな老齢の男性の声。

 立花勢地郎さん。甘味処たちばなの店長で、猛士関東支部の支部長だ。

 

『おはようタツマキくん。えーっと、今は奥多摩でバケガニ退治だっけ?』

 

「ええ、そのつもりだったんですが……」

 

『あら、もしかして外れた?』

 

「まぁ、そんなとこです。昨日、童子と姫は倒したんですけど、そいつら足を伸ばして攻撃してきまして。宙に飛ぶし、見た目も今まで相手してきた奴らとはかなり違ってたんでバケガニじゃないなと」

 

『なるほどねぇ……その特徴はもしかすると、イッタンモメンかも』

 

「やっぱしイッタンモメンですか。確か飛ぶやつですよね」

 

『そうそう。タツマキくんの弦だとちょっと厳しい相手かな~』

 

 魔化魍と呼ばれる化物には色々な種類がある。

 そして、それを退治する俺たち鬼には、魔化魍ごとにそれぞれに適した武器というのがある。

 身体の大きな相手には超近接型の太鼓と撥の【音撃鼓】。通称、撥。

 空を飛ぶ相手には遠距離射撃が出来る管楽器の【音撃管】。通称、管。

 硬い殻や刺を持つ相手には攻撃力の高い弦楽器の【音撃弦】。通称、弦。

 他にも鈴とか色々あるけど、基本はこの三つに区分される。

 

 俺が得意とするのは【音撃弦】。その次に【音撃鼓】。

 今回のイッタンモメンは空を飛ぶ魔化魍だから、本来は【音撃管】で相手する化物だ。

 

『うーん、本当なら管の鬼にヘルプに行って貰いたいんだけど、今は空いてる人がいなくてねぇ』

 

「ショウキさんが三濃山、トウキさんが高萩でしたっけ? あれ? イブキ兄さん今週空いてませんでしたっけ?」

 

『あぁー、それなんだけどね。イブキくん、今は香須実と吉野なんだ』

 

「ってことは今動ける管の鬼一人もいない、と」

 

『ごめんね』

 

 電話の向こう側から本当に申し訳無さそうな雰囲気が伝わってくる。

 

「仕方ないですよ。鬼の人手不足は今に始まった事じゃ無いですし。こっちで何とかやってみます」

 

『何か出来る事はあるかい?』

 

「それじゃあ遠慮なく。みどりさんのとこに預けてるヘビのディスク届けて頂いてもいいですか?」

 

『ヘビのディスクね、了解。他には?』

 

「んー、お団子!」

 

 

 

ーーー

 

 

 

 下北沢

 

「それじゃあ第一回バンドミーティングを始めます! 拍手!」

 

「パチパチパチパチ〜」

 

「あっ、えと、パチパチパチ〜?」

 

 開店前のSTARRY。

 伊知地さんと山田さんとテーブルを囲んで拍手する。

 

「それじゃあえっとね~……」

 

 …………?

 

「ごめん全然仲良くないから何話したら良いか分かんないや」

 

 身も蓋もない!

 

 あっ、あっ、こういう時って何か話題とか出した方が良いのかな!?

 ご趣味は何ですかとか? お見合いか〜い!

 ああああ〜っ、爆笑ギャグとか全然なんにも思いつかないよ〜!

 えっと、えっと、え〜〜っと〜〜っ!

 

「助けてオオカミさん!」

 

「うおっ!?」

 

 無意識にポケットから銀色のディスクを取り出して顔をガードするように両手で持っていた。

 びっくりした。自分ってあんなに大きな声出せるんだ。

 

「びっくりした~。あっ、それCD? 変わった見た目してるね! あれ、でもCDにしてはちょっと分厚い?」

 

「違う、ディスクアニマル。ぼっち、猛士だったんだ」

 

 あれ、もしかして山田さん私の名前覚えてない?

 

「あっ、あの、私、後藤ひとりです……タケシじゃないです……女の子です……ごめんなさい……」

 

「?」

 

 えっ、何でそんな「何を言ってるのか分からない」みたいな顔を?

 

「あー、気にしないで! リョウってたまーに変な事言い出す時あるから!

 もうっ、ぼっちちゃん困ってるじゃん!」

 

「変じゃない」

 

 あ、ちょっと嬉しそう。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 時は少し流れて、昼過ぎ。

 タツマキのベースキャンプ。

 

 キュルキュルキュル……。

 

 イッタンモメンは空を飛ぶ魔化魍だけど、基本的には水生だ。

 なので、近場の水辺を片っ端から探して行く。

 こんな時に頼れるのがディスクアニマルたち。

 彼らに様々な場所を探してもらい、音を集めてもらう。そして戻ってきたディスクの録音を聞いて俺たち鬼は魔化魍の居場所を突き止めるんだ。

 手持ちの水中対応のディスクアニマルはセイジガエルのみ。十五枚しかないカエルをフル稼働してイッタンモメンの捜索中だ。

 

 キュルキュルキュル……ォォーゥ……。

 

「ん? これかな?」

 

「あっ、アタリ、出ました?」

 

「たぶんね。イッタンモメンは初めてだから自信ないけど。十中八九アタリって感じかな? 場所は……なるほど。昨日童子と姫と戦ったとこのすぐ近くだな」

 

「これから出発ですか?」

 

「出発はヘビが届いてからかな。イッタンモメンを水の外に出す手段が無いし。

 ところでさ」

 

「はい?」

 

「酔い覚めてる?」

 

「……恥ずかしいのであんまり見ないで下さい」

 

 そっぽを向いて赤く染めた顔を隠す。誰だこのお淑やかな美人。あ、きくりか。

 山の中で2泊。流石に酒のストックも切れるし酒も切れる。酔いどれ天才ベーシストは完全にシラフに戻っていた。

 ぐるぐるの濁った目には光が戻り、呼気から酒気が失せ、大きな声は小さくなり、大きな態度も小さくなる。どこに出しても恥ずかしくないベーシストだ。

 いや、この状態のきくりは超が付くくらいの陰キャコミュ障だからどこにも出れないけど。

 

 ふと、後ろの方で草木をかき分ける音が聞こえた。

 

「お、いたいた」

 

 振り返るとそこにいたのは白髪交じりの男性。

 シュッ、と敬礼に似たハンドサインをして笑うその人は。

 

「ヒビキさん!」

 

「よっ、はいこれ頼まれてたやつ」

 

 ヒビキさんが背負っていたリュックをテーブルの上に置き、中からディスクが入ったケースと、お団子が入った紙箱を取り出した。

 

「ありがとうございます」

 

「あと、これはイライザから」

 

「お酒!」

 

 ヒビキさんがテーブルに置いたパック酒をシュパッと取るや、慣れた手付きでストローをさしてぢゅーっと一杯。

 

「ぷはーっ! 生き返るー! ヒビキさんありがとー!」

 

「ほどほどにしとけよ。またお医者さん(明日夢)に怒られるぞ」

 

「はーい!」

 

 ああ、目が濁ってぐるぐるに。

 酔いどれ天才ベーシストが帰ってきた。

 

「お茶用意しますね」

 

 テーブルにスチールコップを二つ並べて粉末緑茶を入れる。朝に沸かしたお湯を入れたポットからお湯を注げばお茶の出来上がりだ。

 ヒビキさんが持ってきてくれた紙箱から串団子を出して頬張る。

 うん。美味しい。

 

「それにしてもタツマキお前、団子の食い方が若い頃の師匠に似てきたな」

 

「ほぅでふ……んく、そうですか?」

 

「そうそう。一人立ちしたばっかのトドロキとそっくり」

 

 ふふ、師匠に似てると言われるのは悪い気はしない。むしろ嬉しい。

 

「それでどうよ、調子の方は」

 

「カエルたちが頑張ってくれたおかげで魔化魍の居場所は大方特定出来ました。後は持ってきて頂いたヘビで水中から追い出して倒すだけですね」

 

「なるほどな。助けはいりそうか?」

 

「いえ、大丈夫です。ヒビキさんはここで待ってて下さい」

 

「そっか。それじゃあ頑張ってな」

 

「はいっ!」

 

 勢い良く返事をして、勢い良く追加の団子を頬張った。

 あ、お団子無くなった。

 

 

 

 

「ここか」

 

 ヘビのディスクが入ったケースを片手にやって来たのはカエルが突き止めたイッタンモメンのいる場所だ。

 

 ディスクケースを地面に置いて、二箇所のロックを外して蓋を開ける。

 中には十五枚の銀色のディスクがあった。

 

「さ、頼んだよ」

 

 【変身鬼弦・音震】の弦を爪弾く。

 ケースの中のディスクは鈍色に色付き、飛び出してはヘビの形へと変わる。

 ニビイロヘビ。水陸両用ヘビ型のディスクアニマルだ。セイジガエルより早く泳げる。

 

 ニビイロヘビたちは一直線に水の中へと入っていく。

 

「さて、やりますか」

 

 風斬を地面に突き刺し、再度音震の弦を爪弾く。

 清らかな音色が響き、鬼面から音が波紋のように揺らめく。

 額の前に翳せば、俺の額に鬼面が現れるのを感じる。

 

「はっ!」

 

 左手を勢い良く横薙ぎに振るえば、俺を中心に風が渦巻く。

 風が服を斬り裂き、吹き飛ばしていく。

 素肌を晒すのは一瞬。皮膚は黒く、身体は大きく、人の身から鬼の身へと変じる。

 

「せあっ!」

 

 下から上へ、鋭く右手を振り上げ、渦巻く風を切り裂けば、この身は完全な鬼へと成る。

 

「竜巻鬼、見参」

 

 水面がぶくぶくと泡立ち、盛り上がっていく。

 

「ビィュゥォアァーッ!」

 

 水飛沫を上げてエイに鳥の翼を合成したような魔化魍。イッタンモメンが飛び出た。

 その体にはいくつかのニビイロヘビが噛み付いたままぶら下がっている。ナイスお仕事!

 

 イッタンモメンはこちらに真っ直ぐ飛んでくる。

 俺は地面に突き刺した風斬を引き抜き、構えた。

 

 イッタンモメンは空中に滞空すると、長い尾を伸ばして攻撃してきた。

 槍のように鋭い一撃を飛んで避ける。

 尾の一撃で空いた穴を見て、ぞくりと背筋に寒気が走った。あれは当たったらただじゃすまないな。また明日夢さん(主治医)に怒られるのは勘弁だ。

 

 何度も繰り出される尾の一撃を飛んで避ける。

 数歩下がって避ける。

 間一髪で避ける。

 

「よし、掴んだ」

 

 腰のベルト(装備帯)のバックル部分から【音撃震・旋風】を取り外し、風斬にセットする。

 エレキギターに見立てるならピックアップ部分。

 セットすると同時にカシャンと音を立てて風斬の刀身が展開。剣からギター型の音撃モードへと変形する。

 

「ビィュゥォアァーッ!」

 

 イッタンモメンの尾の一撃を一歩後ろに下がって避ける。

 地面に突き刺さったと同時に跳躍。

 

「ふっ!」

 

 尾を足場にさらに跳躍し、イッタンモメンの背中に着地。

 振り落とされないよう、音撃モードの風斬をイッタンモメンの背中に突き刺し、ぐりぐりと押し込む。

 案の定暴れられるけど、ここまで来れば後はこっちのもんだ。

 

 親指の爪をピックのように変形させ、風斬の弦を掻き鳴らす。

 

「音撃斬・竜巻回廊ッ!」

 

 強く、激しく、荒々しく。

 清めの音を響かせ、イッタンモメンの体内へと注ぎ込む。

 

 邪気に汚され、人食いの化物と化してしまった大地を清め、元のあるべき姿へと戻す。

 それこそが古来より続く、俺達鬼の役目だ。

 

 鳴らす。鳴らす。掻き鳴らす。

 

 暴れ狂うイッタンモメンは次第に大人しくなり、そして──。

 

 ドォンッ!

 

 と、大きな音と共に、イッタンモメンの胴体に大穴が空き、次の瞬間、爆散。

 土塊や枯れ葉へと戻り、はらはらと舞い散った。

 

「あっ」

 

 倒した後の事、考えてなかった。

 肝心な事を思い出しても手遅れで、次の瞬間。

 

 ドボン。

 

 と、池のど真ん中に落ちるのだった。

 

 




後藤ひとり
今回は出番少なめ。


タツマキ
今回の主役。
この後風邪をひいて一週間休んだ。

ヒビキさん
仮面ライダー響鬼の原作主人公。43歳。
今回だけ見るとディスクとお団子を届けに来ただけの気の良いおじさん。

廣井きくり
タツマキ経由で割と猛士の飲み会に紛れ込んでるのでヒビキさんとも知り合い。

清水イライザ
甘味処たちばなでバイトしてる。猛士の事は少し知ってる。前回、岩下志麻がきくりのベースをたちばなに預けたのは彼女がいるから。
ところでアニメのイライザさん可愛すぎません?



次回は軽くタツマキの紹介とかを挟んでから五之巻投稿になります。
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