鬼とギターとヒーローと   作:ブレイアッ

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お気に入り100件ありがとうございます!
ぼざろの二次創作名乗っていいのか分からない作品ですが、よろしくお願いします!


七之巻 君、繋ぐ 下

伊豆ヶ岳

 

 隼王を走らせて下北沢から一時間と少し。

 道の途中で合流したアカネタカの案内で予想よりも早くにバンキさんのベースキャンプに到着した。

 

「タツマキさん、お疲れ様です。すみません、お休みだったのに」

 

「いや、元々は俺が風邪引いたのが悪いんだし、気にしないで。

 それにしても久し振りだね、ささっち。また一回り逞しくなったんじゃない?」

 

「そうですか? ありがとうございます」

 

 バンキさんの弟子。ささっちこと、佐伯(さえき)佐々彦(ささひこ)くんは少し照れくさそうに答えた。

 ちなみにささっちというあだ名は、名字と名前から頭文字を一つずつとっても「ささ」。名前の頭二文字をとっても「ささ」だから「ささっち」。ヒビキさん命名だ。

 

「それで、状況は?」

 

「童子と姫はバンキさんが退治しました。

 残るヤマアラシですけど、こっちの場所はもう特定してあります。

 ここ十五分ほど移動してないのでこのまま日の出まで動かないんじゃないかと」

 

 流石バンキさんの弟子。俺が来るまでの間にディスクアニマルを出して魔化魍の位置を特定してるどころか、動向の考察までしてる。

 これは一人立ちが近そうだ。

 

「なるほど。場所が分かってるなら丁度いい。早速行こうか」

 

「もう出るんですか?」

 

「変異種が相手ならこっちの前提が通じない事もある。想定外の事態になる前に退治さておきたいからね」

 

 ギターケースを開けて風斬を取り出し、軽く素振りして調子の確認する。

 うん、流石はみどりさん。完璧な仕上がりだ。

 現場での持ち運び用のケースは無いので抜き身のまま肩に担ぐ。

 ディスクはどれにしようか……よし、アサギワシにアカネタカ、後はリョクオオザルにしよう。

 

「さて、変異種が相手だと守れる保証は無いけど、来るかい?」

 

「勿論です。稀代の呪術使いと名高いタツマキさんの戦い。勉強させてもらいます」

 

 うん。キラキラした、学ぶ気に溢れた良い目だ。

 でも、稀代の呪術使いってのは小っ恥ずかしいな。

 

「よろしい。じゃ、案内よろしく」

 

「はい!」

 

 ささっちはディスクケースからディスク一枚取り出すと、真上に放り投げ、左手首の変身鬼弦を鳴らした。

 空中の銀色のディスクは茜色に染まり、アカネタカへと変形する。

 

 ピューゥィ!

 

 高らかにひと鳴き。俺達の頭上をぐるりと旋回すると、小さな翼を羽ばたかせる。

 

「こっちです」

 

 アカネタカが先導し、俺達はヤマアラシの元へと向かった。 

 

 

 

ーーー

 

 

 

 STARRY

 

 タツマキさんが慌ただしくSTARRYを出てから一時間くらい経った。

 お店の方はライブが始まるとお客さんはそっちの方に意識が向いて、ドリンクコーナーでの仕事は暇になってくる。

 

「後藤さんって、何がきっかけでギター始めたの?」

 

 ふと、喜多さんがそんなことを聞いてきた。

 

 私がギターを始めた理由……何て言おう。

 人気者になりたかったから?

 ちやほやされたかったから?

 確かにそれもある。というか大いにある。

 でも、やっぱり一番は……。

 

「あっ、ち、小さい頃に助けてくれた人が、ギターを弾いてたから……です」

 

 それから、カニのお化けやギターの鬼さんのことは少し濁しながら、しどろもどろになりながら話す。

 現実味の無い話だし、今まで正直に話しても、学校の先生もお母さんも信じてくれなかったから。

 お父さんだけは信じてくれたけど、たぶん想像力豊かな子供の作ったお話程度にしか思ってないと思う。

 

「憧れてるのね」

 

「え?」

 

「だって後藤さん、その人の事を宝物みたいに話すんだもの。その人の事が大好きで、尊敬してるんだって伝わってくるわ」

 

 憧れてる……うん。その通りだ。

 私はあの鬼さんに憧れている。

 

「私もね、きっかけは憧れだったの」

 

「へ?」

 

「リョウ先輩がね、前のバンドで路上ライブしたのを見て一目惚れしたの。

 ちょっと浮世離れした雰囲気とか、ユニセックスな見た目とか。何より楽器が様になってるのがきゃーって感じで」

 

 きゃー?

 

 でも、そっか。

 友達が沢山いて、誰とでもすぐに仲良くなれる陽キャな喜多さんと、友達のいないぼっちで陰キャな私とは正反対だと思ってたけど、ギターを始めるきっかけは同じだったんだ。

 なんだろう。少し親近感が湧いてきた。

 

「あの〜、カシオレ下さい」

 

「はいっ、少々お待ち下さい!」

 

 グッバイ親近感。調子乗ってすみませんでした。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 伊豆ヶ岳

 

 アカネタカに案内されて辿り着いたのは岩肌が露出した開けた斜面。

 そこに寝そべる巨大な化物が一体。

 水牛のような頭に熊のような身体。長い尾を持ち、背中から肩、胸にかけて動物のヤマアラシのような針が生えた化物。それが魔化魍ヤマアラシだ。

 

「なるほど、これは一筋縄では行かなそうだ」

 

 真っ先に目につく針は、金属のような光沢を放っていた。

 通常の種はもっと毛が変化したような、サイのツノに似た質感の筈だ。 

 あれだと飛距離も貫通力も高そうだ。

 倒し切れずに取り逃がすのだけは避けたいな。

 

「よーし、ささっち。ちょっとあっち見てなさい」

 

「? はい」

 

 ささっちがこちらに背を向けたのを確認して革ジャンを脱ぐ。

 

「えっ、ちょ、ちょっとタツマキさん! な、何で脱ぎ始めてるんですか!?」

 

「え、何でって変身したら服弾け飛ぶじゃない? 今は服これしか持ってないから着たまま変身するわけにもいかないしさ」

 

 うーむ、ついこの間まで高校生だった青年の隣で服を脱ぐというのは完全に事案でしか無いけど、非常事態ということで堪忍してもらおう。

 頑張れ青年。

 

 服を畳んで木陰に置いて、靴下も靴も脱いで一糸纏わぬ姿になる。ズボンから呪術でベルトに変化させている装備帯を外して、素肌の上から腰に巻く。

 

 さて、俺は露出狂でも露出癖があるわけでもないので早々に変身鬼弦を鳴らして変身する。

 人から鬼の姿に、ベルトは呪術によって変化し、装備帯へと変わった。

 

「もうこっち見て良いよ」

 

「う、はい……」

 

 あら、赤い顔。

 

「さて、ささっち。君は呪術使いの竜巻鬼を見たいんだったね」

 

「はい」

 

「じゃあよく見てなさい」

 

 音撃弦・風斬に音撃震・旋風をセット。音撃モードになった風斬を地面に突き刺して片膝をつき、弦の一本に指をかける。

 

「鬼幻術・音響結界」

 

 ビィィィィン……。

 

 弦を爪弾き、清めの音が響く。

 音は風に乗り、ひろく、ひろく、ひろがりゆく。

 

 日本には古来より『鳴弦の儀』と呼ばれるものがある。

 矢を番えずに弓の弦を鳴らし、その音で邪気を祓うという儀礼だ。

 これはその発展形。音撃弦より奏でる清めの音で場を清め、一種の聖域を作り出して魔化魍を閉じ込める結界を生み出す鬼の呪術だ。

 

 今ではこれを使う鬼は殆どいない。

 と言うよりも、音撃武器とかディスクアニマルとか、色々な技術が発展したおかげで結界を生み出すまでもなく倒せるようになり、必要が無くなって廃れていった術の一つだ。

 

 さて、これで戦いの準備は整った。

 ヤマアラシも結界に閉じ込められた事を感じたのか、しきりに辺りを見回している。

 

 こちらに気付かれたらささっちが危ないので、風斬から旋風を外して剣モードに戻し、跳躍。ヤマアラシの正面に躍り出る。

 

「竜巻鬼、見参ッ!」

 

 こちらの姿を確認したと同時に怒るような雄叫びを上げるヤマアラシ。

 鋼鉄の如き針を矢のように射出してくる。

 

 それを風斬で斬り落と──すのを止めて咄嗟に横に跳んでかわす。

 

 嘘だろ滅茶苦茶速いッ!

 射出速報だけじゃない、間近で見て分かったけどドリル回転もかかっていた。

 

 さっきまで俺がいたところに目をやると針が深々と突き刺さっていた。

 

 伊豆ヶ岳は角岩(チャート)で出来た山だ。

 チャートは鉄よりも硬い天然の岩石だ。

 それにいとも容易く突き刺さす程の威力となると、下手に風斬で受けると壊されかねない。

 そうなれば音撃が出来なくなってこのヤマアラシを倒せなくなってしまう。

 

 なるほど、これは厄介だ。

 

「あれを使うか」

 

 装備帯のバックル部分から旋風を外し、風斬にセット。音撃モードに変形させる。

 切っ先を地面に突き立て、意識を集中させる。

 

「スゥ──……」

 

 再度発射されるヤマアラシの針。

 その場に立ち尽くして動かない俺はさぞや狙い易かっただろう。

 

「鬼幻術──」

 

 だが、それはこちらも同じだ。

 

「──風縛りッ!」

 

 瞬間、俺の眼前に発生する強烈な下降気流(ダウンバースト)

 迫り来る針の悉くを地面に叩き付け、さらにはヤマアラシの巨体を押さえ付ける。

 

 【鬼幻術・風縛り】。代々【竜巻鬼】に伝えられてきた強烈な下降気流を起こして魔化魍をその場に縛り付ける術だ。

 術者の実力にもよるけど下手な魔化魍ならこれだけで潰せる程の威力を持ち、極めれば天候を操り竜巻すら起こせると伝えられる秘術。

 欠点があるとすれば物凄く集中力と体力を消耗する事。少しでも気を緩めれば術は解けてしまう。

 

 風斬を両手に構え、鋒矢(ほうし)が如く突撃する。

 踏み込みで足元の岩が爆ぜて砕け、ヤマアラシ目掛けて一直線に。

 

「ゼァッ!」

 

 瞬き一つの時間で距離を詰め、身体ごとぶつかるようにヤマアラシの腹に風斬を突き立てる。

 

 ギィンッ!

 

 火花が散り、金属と金属がぶつかるような甲高い音が響く。

 

「うっそだろ……ッ、刺さらないッ!?」

 

 風斬の切っ先は、ヤマアラシの毛皮に阻まれていた。

 渾身の一突きを防がれた驚愕と同時に、風縛りの術が解ける。

 自由になったヤマアラシの大樹のように太い脚が、目の前に迫っていた。

 

「ぐ──ァッ!」

 

 蹴り飛ばされ、木々を薙ぎ倒し、岩肌に背中を叩き付けられる。

 

「ぃ、づぅ……っ!」

 

 痛みに悶えている時間は無い。

 ふっ、と(りき)み、鬼の基本技能である治癒術を発動させる。

 血が流れる背中の傷も、蹴りを受けてヒビの入った左腕もあっという間に治った。

 

「っ、ふぅ……っ、はぁ」

 

 荒く息を吐き出す。

 足の短いヤマアラシが蹴りをしてくるとは思わなかった。鬼の肉体でなければ即死だったな。

 

「た、竜巻鬼さん……ッ!」

 

 真横から声がして、そちらを見る。

 スマホを握りしめたささっちがいた。

 

「さっき、意識を取り戻したバンキさんから竜巻鬼さんに伝言がありました。

 まず、あのヤマアラシは毛が硬くて皮が厚いから音撃弦は通りません」

 

「うん、それはさっき体感してきた」

 

「でも、バンキさんが尻尾の付け根に傷を付けたそうです。そこなら弦が通るかもしれない、と」

 

 道理で長い尻尾による攻撃が無かったわけだ。

 それにしても、アレに傷をつけるとかバンキさん凄い。

 

「流石はバンキさん……だっ!」

 

「わっ!」

 

 ささっちを横脇に抱え、追撃として放たれたヤマアラシの針を跳んで避ける。

 ええい、顔を赤らめるな青年。そこにあるのは脂肪じゃなくて筋肉だ。

 

 ちょこちょこと小刻みに跳んでヤマアラシが放つ針を避ける。

 うん、速度は早いけど発射までラグがあるし、アレが飛んで来ると分かっていれば避けるのは案外容易い。

 

「ムォォォォン!!」

 

 中々当たらなくて痺れを切らしたのか、ヤマアラシが背中側の針を真上に飛ばし、雨のように降らせてきた。

 

 槍が降るってこんな感じなのかな。

 

 確かにこれなら広範囲を攻撃出来るけど、射出しない分、針の速度は通常種のヤマアラシと同程度。

 つまりは、風斬で十分に払い落とせる。

 

 ささっちを抱えて駆け回り、避け回り、時には立ち止まって風斬で払い落とす。

 

 そうして一分弱が経とうとした頃、ようやくヤマアラシの針の雨が止んだ。どうやら打ち止めらしい。

 

 

 

 

 

 ヤマアラシの側面に立ち、空を見る。

 日は傾き、西日がヤマアラシの背を照らしていた。

 日が沈む前には(かた)を付けたい。

 左腰のディスクを全部ささっちに手渡す。

 

「サポート任せたよ。ささっち」

 

「……はいっ!」

 

 うん、いい返事だ。

 

 ささっちに背を向け、風斬を順手に構える。

 

「いざ、参るッ!」

 

 俺がヤマアラシの側面から正面へ駆け出すと同時に、鬼弦の鳴る音が聞こえてくる。

 次いでディスクアニマル達の鳴き声。

 

 一羽のアサギワシを先頭に、アカネタカが三羽。ヤマアラシの目前を飛び回って撹乱する。

 目視での狙いを付けられなければヤマアラシは針を飛ばせない。ナイス判断だささっち。

 

 ヤマアラシの正面へ躍り出る。

 風斬の切っ先を真下に向け、陽の光を刀身に宿し、魔化魍の姿を写す。

 

「秘剣──影うつし」

 

 きらり。

 

 風斬が写した陽光が、魔化魍から光を奪う。

 ヤツが俺の姿を見る事は二度と無い。

 

 ヤマアラシの股下を(くぐ)り、尾の付け根へ。そこにはリョクオオザルにキアカシシ、ルリオオカミがしきりに上を指していた。

 バンキさんが付けたという傷は探すまでもなく、既にリョクオオザル達が先に見つけてくれていたようだ。

 

 見上げてみるとなるほど、十字の傷跡が深々と残っていた。

 

「これだな」

 

 風斬の切っ先を十字傷の中心に突き刺す。

 今度は毛皮に阻まれる事無く刺さった。

 

「音撃斬・竜巻回廊ッ!」

 

 音撃弦を掻き鳴らし、清めの音を注ぎ込む。

 変異種と言えど魔化魍。浄化されれば辿る道は(ただ)一つ。

 

「オォォン…………ッ」

 

 ヤマアラシは断末魔の声を上げ、土塊へと還った。

 

 

 

ーーー

 

 

 

 魔化魍ヤマアラシを倒した後、ベースキャンプに戻る頃にはどっぷりと日が暮れていた。

 

 何故かと言えば、まぁ、自業自得と言うか、俺が風縛りで巻き起こした下降気流(ダウンバースト)で吹っ飛んだ服を探していたからなわけだけど。

 ディスクアニマルを総動員して服を探した結果、こんな時間になったわけだ。

 

 たちばなへの報告はささっちに任せて、隼王のリアトランクに仕舞っていたスマホを確認する。

 お、虹夏ちゃんとリョウちゃんからロインが来てる。

 

 

 

< 虹夏ちゃん

今日

      
既読

16:24

ごめんね、途中でいなくなって

いえいえ!色々とありがとうございました! 16:25
      

また来てください! 16:25
      

      
既読

17:36

ありがと

 

ここから未読メッセージ

 

喜多ちゃんが結束バンドに入ってくれる事になりました!!! 21:46
      

Aa          

 

 

 

 おぉ! あのメイドの喜多ちゃん結束バンドに入るのか!

 じゃあこれで四人かぁ。どんなバンドになるのか楽しみだ。

 

「『ライブ、楽しみにしてるね』っと」

 

 さて、リョウちゃんの方は?

 

 

 

< リョウちゃん

今日

      
既読

14:50

今日お団子の配達行くよ

わかった 16:03
      

ここから未読メッセージ

食べられる草教えて 21:46
      

Aa          

 

 

 

 …………草?




タツマキ/竜巻鬼
実は呪術に長けた鬼。結界や念力のような様々な術を使う。
緊急事態とはいえ人前で脱いだ人。

後藤ひとり
誰かに憧れてギターを始めるという共通点が出来たので喜多ちゃんとの仲は原作より早く進展しそう。

ささっち
本名は佐伯佐々彦。お父さんの名前は佐伯栄。次代の裁鬼。
今回はサポートとラッキースケベ?担当。たぶん次回から名前しか出ない。






ハガネヤマアラシ
一本一本の毛が硬いし皮も硬い。
タツマキの風斬が比較的軽いのもあって刺さりにくく、バンキの付けた傷跡と佐々彦のサポートで何とか撃破した。
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