艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

106 / 118
第106話

潜水艦の居なくなったハワイ近海は静かなもので、深夜の暗闇の中を小型モーターを動力とした大型のゴムボートが疾走している。

ボートには迷彩服にヘルメット、プレートキャリア、M4A1やHK416、Mk48mod1、Mk11mod0で武装した掌サイズの兵員が搭乗しており、ヘルメットのベルクロには『Ghost』と刺繍されたワッペンが貼り付けられている。

 

 

その中でボートの前側に乗っているのは、愛銃のHK416A5を手にしているクリスだ。

 

 

 

「艦長、時間です!」

 

 

クリスの側に居る、Ghost小隊のチーフである大尉がそう話し掛ける。

 

 

「了解!」

 

 

腕時計で時間を確認し、ヘルメットに取り付けられたGPNVG-18ナイトビジョン越しに前方を見る。スコープ越しに見えるのは、緑一色の景色の中に黒く見える陸地だ。

その陸地に向かってボートは一直線に進み、やがて陸地との距離が3キロにまで縮まると、ボートの推進機を切ると、オールを使って陸地に接近、浅瀬に到達すると全員がボートから降り、海水を被りながら浅瀬から陸地へ向けて走り出し、ボートを岩場に挙げる。

 

 

「時間通りだ」

 

 

ボートを岩場にロープで括りつけ目立たない場所へ隠すと、岩場から近くの砂浜に集まった。

 

 

「flog、こちらGhost。上陸成功」

 

『Ghost、こちらflog。こちらも上陸した。行動を開始する』

 

「こちらGhost、了解。以後は通信管制、緊急時以外での無線交信を禁止する」

 

『了解。over』

 

 

 

チーフがそう交信を終え通信機の電源を切る。

 

 

「現在地確認」

 

 

部下の1人が地図を広げる。

 

 

「現在地はハワイ島の南グリーンサンドビーチ。此処を起点にして我々は島内の敵状調査と捕虜の所在確認、可能ならば破壊工作も行う」

 

「艦長、捕虜になっている者を発見した場合はどうします?」

 

「発見しても接触はするな。我々が上陸している事を知られてはならない」

 

「では見捨てろと?」

 

「そうだ。見つけても見なかった事にしろ」

 

「…………」

 

「気持ちは分かる。だが我々の任務は偵察であって捕虜救出ではない」

 

 

チーフが隊員にそう告げる。それでも納得が出来ていない隊員にチーフの代わりにクリスが話し掛ける。

 

 

「反攻作戦はまだ始まったばっかりだ。次の段階に移れば捕虜救出は必ず行われる。その時は我々も動く事になる。今回の任務はその時に備えての事だ」

 

「成る程……分かりました」

 

 

 

隊員を納得させ、改めてこれからの行動の確認を行う。一枚の写真にIRライトを照らされた。

 

 

 

「この世界の合衆国空軍から提供された、この島の航空写真だ」

 

 

 

写真には高高度から撮影したハワイ本島が写し出されている。この世界のアメリカ空軍にも存在しているU-2偵察機によるモノで、高精度を誇るカメラで撮影された写真には島内の建物等の人工物や森の中にある木々、地面の凹凸などが非常に高精度に写し出されいる。

 

 

「ドラゴンレディは別世界でも健在ですな」

 

「お陰で此処まで来れたんだ、感謝しないとな。我々の目的はこの島の敵情偵察だが、敵そのものは東のヒロ港に集中している」

 

 

航空写真のヒロ港にはハワイ諸島を含めた太平洋最大の深海棲艦の基地があり、そこには深海棲艦の上位個体の一種と言われている港湾棲姫が居る。これは主に深海棲艦が基地としている場所には必ず居る者で、主に基地の全てを統括しており、それは即ち基地一帯の海域を支配下に置いていると言う事になる。

それだけではない、港湾棲姫を守るように戦艦棲姫や、小笠原にも居た集積地棲姫、他にも上位から下位の深海棲艦が多数ひしめき合っている。

 

 

 

 

「とんでもない戦力ですな」

 

「あぁ。写真越しだがこうして見て見ると、敵の底なしの兵力には恐れ入る。しかし我々はその敵の親玉の懐に居るんだ、敵情探るのも我々の得意とする分野だ」

 

 

そう言うとクリスはチーフに目配せし、チーフは小隊の1人に指示を飛ばす。

 

 

「兵曹長、レイヴンの用意は?」

 

「何時でもどうぞ」

 

「よし、飛ばせ」

 

 

兵曹長の隊員がRQ-11レイブン小型無人偵察機を投げ飛ばした。レイブンはそのままヒロ港がある東方向へ向かっていき、兵曹長は手にしているレイブンを管制する端末を使いレイブンを操作する。

 

 

「リンク接続」

 

 

レイブンからのカメラ映像が端末のディスプレイに写し出される。小隊はレイブンを先行させ、ヒロ港までのルート上に敵や障害物が居ないかを探らせ、目的地に着けばそのまま上空からの偵察に使用するのだ。

 

 

「兵曹長、道案内頼むぞ」

 

「了解です」

 

「行くぞ」

 

 

Ghost小隊は目的地のヒロ港に向けて移動を開始した。

 

 

 

 

 

 

一方その頃、オワフ島では………

 

 

 

「艦長、Ghost小隊は行動を開始しました」

 

 

オワフ島に潜入したバーク率いるflog小隊も、無事にゴムボートでオワフ島に上陸していた。目的はGhost小隊と同じく敵情偵察であり、偵察目標はオワフ島のパールハーバーに陣取っている敵の航空機動艦隊であり、それをまとめている空母棲姫や配下の軽空母級や巡洋艦級、戦艦級等の上位個体達の戦力を偵察するのが目的であった。

 

 

「この世界のパールハーバーってどんな感じかしらね?」

 

「軍港なのは一緒の様ですが、港湾内にはこちらの合衆国海軍の艦艇が多数残っているとの事で。どうやら此処から撤退する時に残されたモノがそのまま様です」

 

「それもアイツらに利用されてる可能性もあるって事?」

 

「恐らくは」

 

「同じ合衆国の艦として彼女達を救ってあげなきゃならないわね」

 

「同感です」

 

「じゃ、さっさと終わらせましょう」

 

 

 

flog小隊はオワフ島内に消えていく。

 

 

 

 

そして残りのモロカイ島、マウイ島の北部近海には……

 

 

(そろそろだな)

 

 

海中をアリゲーターガーが遊弋しており、彼の艤装からSDVが切り離され、それにクリスとバークのSealsチームの合同分遣隊が乗り込み、モロカイ島とマウイ島がある方向へ向けて消えていった。

 

 

(頑張って来いよ)

 

 

アリゲーターガーは分遣隊を輸送する任務を終え、今度はハワイ諸島に潜入している潜入部隊の回収のためハワイ諸島近海で待機状態に入った。

 

 

 

 

 

 

 

続く




皆様からのご意見とご感想お待ちしております。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。