艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第107話

ハワイ島へ潜入したGhost小隊はハワイ島内の道路の中に居た。

暗闇の中をナイトビジョンとレイブンからの映像を頼りに敵の目を避けながらハワイ島東のハワイ州道11号線に沿って移動している。

 

 

「しかし、車両で移動して大丈夫なのでしょうか?」

 

「奴らは此処を自分達の棲家にしているんだ。自分の家の中をパトロールする馬鹿は居ない」

 

 

小隊は上陸後、11号線に出ると道路沿いに放棄されていた3台のジープM38発見し、それが奇跡的に動いたため、ソレに小隊20人がすし詰めになりながらも足代わりにして移動している。

 

 

 

「そろそろ夜明けだな」

 

 

既に潜入から数時間が経過し夜が明ける時間が迫ってきている。全員がナイトビジョンと共にヘルメットを外してブーニーハットに被り直すと、辺りは夜明け直前の薄暗さにより徐々にではあるが視界が効きはじめ、鳥も鳴き始めている。

 

 

「時間だ」

 

 

夜明け時間となり、東の方向から来る太陽の光が辺り一帯を照らし出す。

 

 

「周囲を警戒」

 

 

明るくなった事により周囲は良好な視界となったが、敵に発見されないようにジープを停車させ周囲に敵が居ないかを探る。

 

 

「チーフ、周囲に敵影はなし」

 

「了解。兵曹長、現在地は?」

 

「はい、現在地はキラウェア山とマウイロア山の中間地点です」

 

「二つの火山の間か。どうりで暑い訳だ」

 

「ですが此処を抜ければ目的地のヒロ港までは近くです。運良くジープが手に入ったので目的地到着までの時間を大幅に短縮できます」

 

「ルートはこのままか?」

 

「はい。レイブンからのリアルタイム映像にもこの先に敵の姿はありませんので、このまま直進して130号線と合流しているケアアウまでは車両、そこからは徒歩で目的地に向かいたいと考えています」

 

「うむ……艦長はどう思われます?」

 

「そうだな……レイブンからの偵察映像に敵の姿が無いならそのプランで進めよう」

 

「了解。兵曹長、このままルート案内は頼むぞ」

 

「はい」

 

 

小隊はそのまま移動を開始し敵の目を避けつつ、ケアアウを目指す。

 

 

「大尉、間も無くケアアウです」

 

「よし、止めろ!」

 

 

車列が停止し全員がジープから降りる。

 

 

「此処で夜まで大休止だ。あの民家と倉庫を拠点にするぞ」

 

 

小隊は近くにあった古い民家と倉庫に移動、倉庫内にジープにシートを被せて隠し、小隊は民家に入りそこで深夜まで待機する事になった。

 

 

「歩哨は2時間交代、後の者は食事を摂って眠っておけ」

 

 

Ghost小隊は装備を下ろして、床に座り込む。

 

 

「兵曹長はレイブンを使ってヒロ港周辺を探れ。1時間置きに定時報告、何か動きがあれば直ぐに知らせろ」

 

「了解」

 

 

大尉は小隊全員に指示を出してから、装備を床に下ろして椅子に座った。

 

 

「なんとか此処まで来れましたね艦長」

 

「あぁ。しかし恐ろしいくらいに順調だな」

 

「えぇ。今のところ敵に目立った動きは見られませんし我々の潜入は気付かれている様子もありません」

 

「………………あぁ」

 

 

クリスの表情が憂れないのを見た大尉は彼が何を考えているのかを探る。

 

 

「艦長、もしかして今朝の捕虜の件についてですか?」

 

「どうして分かる?」

 

「なんとなくですけど、艦長の表情から」

 

「まるでエスパーだな。そうだ……もし此処に捕虜が居たらどう対応すべきかとな」

 

「艦長、あなたが考えているのは捕虜がどんな目に合って、どんな気持ちで此処で過ごしているのかを考えているんでしょう?」

 

 

全てを見透かされたかのような大尉の言葉にクリスは降参と言わんばかりに両手を挙げた。

 

 

「参ったな…そこまでお見通しとは」

 

「伊達にSealsのチーフを勤めていません。艦長ともそろそろ一年以上の付き合いですからある程度は分かりますよ」

 

「大尉の言う通りだ。もしハワイ奪還が本格的になったら捕虜達は無事で居られるのか……今此処で全員を助けられたらと思うと……なんだかなと思うんだ」

 

「しかし捕虜の有無に関しては憶測に過ぎないでしょう?現に深海棲艦に捕虜となった兵士も艦娘も聞いた事がありません」

 

「そうなんだがな………実はな大尉」

 

 

クリスの表情が変わり大尉は何かとんでもない話を聞かされるのかと緊張しつつ、クリスから耳打ちされる。

 

 

「これは少し前に鎮守府の資料室で見つけた情報なんだが、俺たち海上高機動歩兵の経歴に深海棲艦に捕虜となったケースはほんの数件だがあるらしい」

 

「!?」

 

「何れも捕虜になってからなんらかの形で解放され元の所属に帰還したらしいんだが、その後が妙なんだ」

 

「妙とは?」

 

「帰還後、自分の名前は覚えているそうだがそれ以外の記憶がどうにも曖昧らしいんだ」

 

「曖昧?」

 

「あぁ。自身が所属していた艦娘の名前や捕虜になる前の会話や共に過ごしてきた時間の記憶がスッポリ。まぁその後は記憶が戻るんだが、今度は突発的な発作のようなものを起こすんだ」

 

「発作……ですか?」

 

「詳しくは書かれて無かったが、記述的にどうにも基地や施設内で破壊行動の似たような事をするらしい」

 

「破壊行動!?それはつまり……」

 

「飽くまでも憶測だが、捕虜になった際に敵になんらかの処置を受けて、それが記憶喪失や突発的な破壊行動に至る………と」

 

 

それを聞いた大尉は言葉に絶句する。

 

 

「まぁこの話は飽くまでも眉唾物の噂であって、他の艦娘達もこの話は知っているが誰も信じてないみたいだ。俺からの暇潰し的な話だと思っててくれ」

 

「はい、そう言う事なら」

 

 

2人はこの話を切り上げ、思考を切り替えた。

 

 

「さて、今日から3日間は此処でキャンプだな。食糧と飲料水も確保しないと」

 

「それでは今から探索に出掛けますか?」

 

「そうだな。此処からは海が近いから魚が取れるかもしれん」

 

 

そこへ1人の隊員が話し掛けてきた。

 

 

「艦長、大尉、話は聞きました。飲料水ならこの家の裏側に井戸がありました。浄水用のタブレットとポータブル浄水器があります。3日分の飲料水なら余裕で確保出来ます」

 

「良い報せだ。食糧はどうする?」

 

「はい。実はこの家の地下室を発見しました、そこには大量の缶詰めがありました」

 

「缶詰めだと?食べられそうか?」

 

「はい。缶に保管期限が書いてあり、来年までは保つ様です」

 

「ありがたい。よし、今すぐ持ってきてくれ」

 

「了解」

 

 

Ghost小隊は無事に食糧と飲料水の確保に成功し、3日間行動できる準備を整えつつある。

 

 

 

 

そして、1日が終わり太陽が西の空に沈むと、辺りは一気に暗くなった。

 

 

 

「艦長、時間です」

 

「行くぞ」

 

 

 

深夜に入り、時刻が午前0時を差すと同時にGhost小隊は民家に5人を残して目的地であるヒロ港に向けて移動を開始した。

 

 

 

続く




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