艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第109話

無事にカウアイ島前線基地へと帰還した潜入部隊は、長門への報告も早々にflog小隊が回収した例の女性についての話題に持ちきりとなった。

 

 

「この娘がさっき言ってた?」

 

「あぁ。バークからの報告だと、どうも艦娘らしい」

 

 

その女性はCP-130の機内工廠へと運び込まれ明石と夕張による検査を受けていた。

 

 

「いきなり召集が掛かったと思ったら正体不明の艦娘の検査かぁ……眠い……」

 

 

早朝から長門に叩き起こされた夕張は凄く眠そうだ。

 

 

「すまない夕張、本来なら休息の時に」

 

「構いませんよ別に。それが私達の仕事ですから」

 

 

長門の謝罪に夕張は目を擦りながらも検査を続ける。

 

 

「それにしても酷い怪我ですね」

 

「あぁ。余程の攻撃でも受けない限りこんな激しい怪我は負わない筈だ。この艦娘に何が起きたんだ?」

 

 

長門の問いに女性は答える事は無い。

 

 

「どう言う事か説明してくれるか姉さん?」

 

 

長門の側に居たクリスが、バークに問いかける。

 

 

「そうね………ちょっと長くなるけど良い?」

 

「あぁ」

 

 

 

 

 

今から5時間程前に遡る………

 

 

 

 

オワフ島への潜入に成功したflog小隊は、当初の作戦通り島内の敵情を偵察していたのであった。

 

 

 

「艦長、2分隊が帰還しました」

 

「了解。どうだった?」

 

「はい。パールハーバーの敵艦隊は相当な数が居て、中でも戦艦棲姫と呼ばれる個体とその他の戦艦級が複数確認されています」

 

「とんでもない戦力ね。ノーフォークでもこんな数居ないわよ」

 

 

バークはflog小隊のチーフから手渡された写真を確認する。

 

 

「レイブンからの映像は?」

 

「こちらに」

 

 

 

端末機を手に取り、レイブンからのカメラ映像を見る。映像には深海棲艦の上位個体から下の個体まで様々な敵がひしめき合っており、自分達が知るパールハーバーとは思えない光景に絶句する。

 

 

「世界は違ってもパールハーバーがこんな姿になってるなんてね」

 

 

暫く映像を見ていると、バークは何かを見つけた。

 

 

 

「ん?」

 

「どうしたんです?」

 

「ちょっと此処をズームして」

 

「はい」

 

 

映像がズームされ、ある場所が写し出された。

 

 

「此処の建物さぁ、気にならない?」

 

「そうでしょうか?自分にはただの廃墟に見えますが……何が気になるんです?」

 

「確か此処はヒッカム空軍基地があった場所なんだけど、匂うのよね」

 

「匂う?」

 

「うん。此処だけ敵の動きが妙なのよ……何だろう……放っておけないと言うか、無視すれば取り返しのつかない事になりそうな予感がするのよ」

 

「では調べさせますか?」

 

「話が早いわね」

 

「艦長は1度言った聞きませんし、勘はよく当たるのを知っていますから」

 

「言うわね大尉。じゃあ待機中のα分隊を向かわせてちょうだい。決して無理はしないように」

 

「了解」

 

 

 

バークからの命令を受けたflog小隊α分隊の5人はパールハーバーに水路を使って潜入する。

 

 

『目的地まで5分』

 

 

暗い水中をα分隊は、時々海面に顔を出しながら目的地を確認しながらヒッカム空軍基地の側にある桟橋にまで接近する。

 

 

 

「周囲に敵影なし」

 

 

桟橋にたどり着いたα分隊は周囲を警戒しながら桟橋に上がりそのまま上陸する。そして、敵に占拠されている海軍基地の施設を覆っているフェンスをワイヤーカッターを使って穴を開けると、そこから基地へ侵入する。

基地上空をレイブンが旋回しα分隊の行動をバークが支援する。

 

 

 

『そこから200メートル先の廃倉庫が目標よ』

 

「アレですね」

 

 

α分隊から200メートル先に廃倉庫がある。確かに人の気配を感じられた。

 

 

 

『あなた達が居る周辺に敵は居ないけど、敵陸戦型の歩哨ルートだから早めに突っ切って』

 

「了解、突っ切ります」

 

 

α分隊はその場から立ち上がり早足で倉庫に向かって移動する。

 

 

『こちらα、倉庫に到達した』

 

「了解。そこから50メートル先に裏口があるわ、そこまで移動して」

 

『了解』

 

 

そのまま壁伝いに足音を立てず再び早足で前進し、倉庫裏口へとたどり着く。

 

 

「こちらα、裏口に到達」

 

『了解。そのドアを解錠できそう?』

 

「少々お待ちを」

 

 

α分隊の分隊長はドアノブの状態を確認してピッキング作業に入る。

 

 

「解錠成功」

 

『OK、ドアはそのままにして、外から倉庫内を覗ける?』

 

「ちょうど頭上に排気用の窓があります。そこから内部を確認します」

 

 

α分隊はその場に生えている木によじ登り、倉庫上の排気用窓から内部を偵察する。

 

 

『どう?』

 

「艦長、あなたの勘には敬服します。当たりでした」

 

『何かあったの?』

 

「えぇ、この倉庫は捕虜収容施設のようです」

 

『中に誰か居る?』

 

「敵のレ級が1人、ネ級が1人、最後に捕虜と思われる者が1人」

 

『分かった。そのまま待機してて』

 

「了解」

 

 

バークは無線機のマイクを手に思案する。

 

 

「……………………」

 

「艦長、助けますか?」

 

「大尉、あなた何を言ってるか分かってる?」

 

「えぇ。艦長の事ですからどうやって助けるか考えてたんでしょ?」

 

「まぁね。でもこれは任務外の事よ」

 

「分かっています。だから捕虜救出を具申しました」

 

「成る程………気に入ったわ!直ぐにやりましょう!」

 

「yes sir!」

 

 

バークは決断を下し、α分隊に指示を送った。

 

 

 

「了解、これより捕虜を救出する」

 

 

指示を受けたα分隊は直ちに行動を開始した。5人のうち2人は排気用窓から、3人は裏口から倉庫に侵入し2手に分かれる。

裏口から入った3人のうち1人は退路を確保、2人は倉庫内にある木箱やコンテナ等の障害物に隠れながら捕虜と敵に接近する。

 

 

『そこで待機』

 

 

α分隊のヘルメットに取り付けられたカメラからの映像越しにバークは行動を指示する。

 

 

『上の2人は配置に就いた?』

 

「OK」

 

「何時でもどうぞ」

 

『行くわよ。5、4、3、2、1、0!』

 

 

カウントダウンと同時にスタングレネードが投擲され、レ級とネ級の足元に転がる。

 

 

 

「何ダ?」

 

「コレッテ……」

 

 

レ級が足元に転がってきたスタングレネードを拾いあげようと手に触れた瞬間…

 

 

「「!?」」

 

 

 

突然、衝撃と爆音と閃光が襲い掛かる。一瞬にして視界と聴覚を奪われたレ級とネ級に、待機していたα分隊が襲い掛かる。

 

 

「ガァッ!」

 

「ギギッ!」

 

 

レ級は頭部と胸部に銃弾20発、ネ級には首筋にナイフが突き立てられ、一瞬のうちに無力化された。

 

 

「クリア!」

 

「クリア!」

 

「オールクリア!!」

 

 

 

瞬く間に倉庫を制圧するα分隊。

 

 

「軍曹、目標確保!」

 

「了解。こちらα、目標確保」

 

『了解。その娘はどんな感じ?』

 

「確認します」

 

 

分隊長は捕虜となっていた女性に歩み寄る。女性は椅子に縛られた状態で座らさせれおり、意識は無い模様だ。急いで脈拍の確認と呼び掛けを行う。

 

 

「目標は脈はあるが呼び掛けには反応無し。それと外傷も多数受けている模様です」

 

『了解。直ちにそこから撤収して』

 

「了解。さぁ引き上げるぞ!」

 

 

分隊は倒したレ級とネ級を倉庫内の地下に隠し、捕虜となっていた女性を連れ出して撤収準備を始める。

 

 

「分隊長、トラックがありました!」

 

「よし!乗り込め!」

 

 

倉庫内に保管されていた幌付きの軍用トラックに分隊全員と捕虜が乗り込む。

 

 

「動きそうか?」

 

「今やってます」

 

 

運転手の分隊員がキーを回す。すると、エンジンが動き出した。

 

 

「動いた!燃料も満タンです!」

 

「よし、出せ!」

 

「了解!」

 

 

アクセルを目一杯踏み込むとトラックは一気に走り出し、倉庫のシャッターを突き破り外へと飛び出した。

 

 

「あそこがゲートだ突き破れ!」

 

 

基地の外へ出れるゲート跡を突き破り、トラックは基地の外へと出た。

 

 

「そこを左に曲がれ!」

 

「了解!」

 

 

基地の外へ出たトラックは道路に出ると交差点を左に曲がり、そのまま西へ向かって走り、バーク達との合流地点へ向かう。

 

 

 

 

 

α分隊のヒッカム基地脱出後、バーク達はα分隊との合流地点で待機していた。

 

 

 

「艦長、間も無く時間です」

 

「えぇ。そろそろ着いても良い頃だけど」

 

 

腕時計で時間を確認する。バーク達はα分隊と合流後にオアフ島脱出の算段を取っていた。

 

 

「来た!α分隊です!」

 

 

そこへ、時間通りにα分隊を乗せたトラックがたどり着いた。

 

 

「あら?一悶着あったみたいね」

 

 

トラックは明らかにボロボロで幌も吹き飛び、運転席の窓もヒビが入っており、ボンネットからは白い煙が吹き出しており、動いてるのが奇跡だ。

トラックはバーク達の目の前で停止、α分隊がトラックから降りてくる。

 

 

「α分隊到着、欠員なし!」

 

「ご苦労様。その娘が例の?」

 

「はい」

 

 

バークは捕虜の女性を確認する。

 

 

「ん?」

 

 

ふと此処である事に気づく。

 

 

「この娘の服、ウチ達の服と同じじゃない」

 

 

その女性が着ていたのはクリスとバークが元居た世界の合衆国海軍で使用されている迷彩作業服であった。

 

 

「それと艦長、その女性の手元にはこれが」

 

 

分隊長がバークにあるモノを手渡す。

 

 

「これって、ウチの海軍の認識帽じゃない!?」

 

 

それは、アメリカ海軍の艦艇の艦番号と艦名が刺繍されたキャップである。

 

 

「成る程……同じ穴の狢って訳ね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「て、言う訳なの」

 

 

バークの説明に皆聞き入っていた。

 

 

「そんな事があったのか。それにしても、また俺達の仲間が来るとはな」

 

 

クリスはバークから手渡されたキャップを見る。

キャップには『USS JOHN PAUL JONES』『DDG-53』と刺繍されている。

 

 

 

「ジョン・ポール・ジョーンズ…………一体あなたはどうやって此処へ?」

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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