艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
Mk41VLSから放たれた6発のSM-6は打ち上げられると音速飛行で目標方向へ向けて飛び去っていく。
今回は演習で、尚且つ距離も近いためミサイル本体が目標に到達するまでは3分も掛からない。
「噴進砲?」
「まだ敵も見えてないのに?」
他の艦娘達はSM-6の事を只の対空用ロケット弾だと思っている様である。大戦中産まれの彼女達にはSM-6が自律誘導機能を持つミサイルであると言う認識はなく、飽くまでロケット弾だと認識で一致していた。
「intersept stanby!」
発射されたSM-6が目標の手前にまで近付くと弾頭に装備されているレーダーが標的機を捕捉、ミサイル本体は突如として向きを変えて標的機に向かう。
「向きが変わった!?」
足柄が驚きの声を上げる。
「intersept、5、4、3、2……mark intersept!」
直後、ミサイル誘導と標的機が交差した。その瞬間にSM-6の近接信管が作動し爆発、大量の破片をばら蒔き、標的機を瞬く間に15機を粉砕し空中に黒い煙を立たせた。
「凄い!一撃で30機の内の半分を叩き落としたわ!」
最初の一撃で30機中、半数となる15機を撃墜したものの残り15機が迫ってくる。
「15機か……無理な数ではないな」
残り15機。同時に12個の複数目標を迎撃可能なクリスのイージスシステムなら15機の、しかも対艦ミサイルの半分以下の速度しか出せない標的機相手なら造作は無かった。
「
VLSから続けて発射されたESSMは4発。
向かってくる15機の編隊に向けて突き上げるように飛翔、命中直前にAPG-64イルミネーターレーダーから目標に向けてレーダー波が照射され跳ね返ってきたレーダー波をESSMが捕捉、そして近接信管が作動し標的機を粉砕した。
「first target kill!!secand target、kill track2244、2245、2246、2247!」
再びESSMが4発発射され、最初と同じように標的機を撃墜し、合計8機を撃墜した。残りは7機だが既に目標はこちらの懐に入ってきており、左から3機、右から4機が迫ってくる。
「Mk45発射!CIWS aaw auto !」
クリスは右の4機に向けてMk45、左の3機に対してファランクスで対処する。
「fire!」
トリガーを引くと毎分20発の速度で5インチ弾が発射され、FCSによる射撃管制により4機の標的機に砲弾が命中していく。
ファランクスも全自動迎撃モードにより、白に塗装されたレドーム内のレーダーが目標を捕捉次第、毎分3000発の発射速度でM61バルカン砲が火を吹き、1機ずつ撃墜していく。
そしてMk45から放たれた4発目の5インチ弾とファランクスがそれぞれの最後の目標を撃墜、敵機は全機撃墜された。
「All target kill。目標全機撃墜確認」
目標を全て撃ち落としたクリスはそう唱和する。
「え……と、敵機全滅!クリス・カイル被弾なし。判定A、完全勝利と判断する」
足柄が判定を下す。
「「「「「「わぁぁぁぁ!!!!!」」」」」」
辺りに歓声が沸き起こる。
「凄いな…昨日の歓迎会で対空戦闘が得意とは聞いていたが」
「はい。アメリカはとんでもない艦娘さんを産み出していたんですね」
他のグループの指導役である『那智』『羽黒』。
そんな評価がされている中、クリスは内心物足りなさを感じていた。
(まぁ、本気を出せば砲もCIWSも必要なかったんだがな)
クリスが本気を出せばあの数の標的機はミサイルだけでも事足りたのだが、敢えて本気を出さなかったのは自身の戦闘能力を見せるならあの程度でも充分だったのと、自身の能力とイージスシステムに関してあまり外部に晒したくないというのが本音だった。
イージスシステムはその気になれば、この世界の技術でも初期レベルの物は作る事は理論的に可能とクリスは推測しているが、クリスが健造された2020年代とイージスシステムの最初のプロトタイプが開発された1970年代とは大きな技術的格差があり、イージスシステムも絶えずアップグレードを続けているため、たとえこの世界でイージスシステムが開発でき、それを艦娘に搭載できたとしてもその能力は雲泥の差がある。ハッキリ言って勝負にはならないであろう。
しかしシステム自体は高度な軍事技術が使用されており中核部分は高度にブラックボックス化され何重のセキリィティにより厳重に守られている。
仮にこの世界の人間がクリスのイージスシステムのブラックボックスを解析しようとすれば、何が起こるかはクリス自身も知らない上に、この世界の技術力ではブラックボックスを開ける事は事実上不可能と言っても良い。
それにクリス自身もこの能力が、この世界の人間達にはまだ持つべきモノではない事はしっかりと理解している。その上で自身の能力を何処まで開示すべきか神経を使っている。
午前中の訓練プログラムが終了し、1時間の休憩が与えられると、訓練に参加していた艦娘達は午後の予定に備える。
「待てぇぇぇぇ!!!」
「ぽぃぃぃぃ!!!!!」
鎮守府内を何故かクリスは2人の駆逐艦達に追いかけられていた。
「どうなってるんだ?」
全速力で走るクリスは追いかけてくる駆逐艦『夕立』ともう1隻の駆逐艦『島風』から必死に逃げている。
何故このような状況になっているのか、事の発端は数分前に遡る
「クリス!!」
訓練を終えて食堂に向かっていた所を夕立に呼び掛けられた。
「夕立か。どうした?」
「クリス!私と勝負するっぽい!」
いきなりの発言にクリスは驚いた。
「待て待て。どうしていきなり」
「クリス、さっきの射撃訓練の時に凄い動きしてたっぽい!だから夕立とどっちが強いか勝負するっぽい!」
「勝負?そんな暇は無い。悪いが諦めてくれ」
そう言うとその場を離れようとするクリスに突然、夕立がしがみついた。
「諦めないっぽい!!クリスが勝負してくれるまで夕立、クリスの側から離れないっぽい!」
「やめろ!」
「やめない!」
クリスは夕立を振り払おうとするが、尋常じゃないパワーで腰に腕を回してしがみついてくるため中々離れなかった。
「このぉ!」
「ガルルルルルルルッッッ!!」
まるで軍用犬のように相手に噛みついて離さない夕立を何とか振りほどこうと、クリスは夕立の両手を掴んで背負い投げをして振りほどいた。
「今だっ!」
「待つっぽい!!」
走り出したクリスの後を夕立が追いかける。
「ん?何してるの二人とも」
ちょうどそこへ島風が通り掛かる。
「もしかして駆けっこしてるの?負けないよ!」
すると、夕立に加えて島風もクリスの後を追いかけはじめて、今に至るのであった。
「面倒なのが増えたな」
何とかして2人を撒こうと、クリスは腰のベルトから提げていたスモークグレネードを手に取って、ピンを引き抜き、後ろに向かって放り投げる。
すると、グレネードから大量の白い煙が噴射され辺りを覆い尽くす。
「前が見えないぃっ!!」
「逃げられるっぽい!」
煙に飲み込まれた2人は、取り敢えず真っ直ぐ走り続け、煙から逃れる。
「居ない!」
「探すっぽい!」
いきなり姿を消したクリスを探すためその場から全速力で走り去る2人。そんな2人を近くの倉庫の窓から見ているクリス。
「ようやく撒いたか………」
胸を撫で下ろし安心するクリス。
「ちょっと!貴方誰よ」
ふと背後から声が聞こえ、振り返る。
そこには巫女風の着物に、赤いミニスカートを履いた2人の艦娘の姿があった。
1人はロングヘアーで落ち着いた様な感じの大和撫子といった雰囲気を持ち、もう1人はボブカットで少々気が強そうな感じであり、後者はクリスを睨み付けている。
「あぁすまない……ちょっと追われてて」
「私と姉様の時間を邪魔しないでちょうだい!」
「山城、初対面の人にそんな事を言ってはダメよ。」
「はい、姉様」
ボブカットの女性がロングヘアーの女性が優しい声で宥め、大人しくなった。
「それにしても貴方、見ない顔ね。新顔?」
「あぁ……昨日付けで配属になったクリス・カイルだ」
「クリス・カイル…?もしかして昨日、時雨が言っていたアメリカから来た男の子の艦娘じゃない?」
「そうだが」
「やっぱり。昨日私達、歓迎会に行けなかったから会いに行こうと思ってたのよ」
ロングヘアーの女性がクリスの顔を見てそう言った。
「アメリカから来た男の艦娘ねぇ………まぁいいわ、姉様を狙っている様には見えないし、時雨の言っていた事が本当なら心配は無さそうね」
ボブカットの女性がクリスを観察してから敵意を仕舞う。
「あの、君たちは?」
「私は扶桑型戦艦1番艦『扶桑』よ」
「私は2番艦『山城』よ」
続く
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