艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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エピローグ

1980年

 

 

あのハワイ諸島での戦いから1年が経過した。

あの戦いから太平洋の広範囲に居た深海棲艦の大半は姿は消し、今は一部の太平洋地域に残党が時折活動しているのが確認されているものの、太平洋地域は比較的平穏を保っていた。

 

しかし深海棲艦が群雄割拠しているのは太平洋だけでの話ではなく、インド洋、大西洋、中東海域など太平洋と比べても遜色無い程の規模が猛威を奮っている。

 

国際連合は加盟国による賛成多数により、次なる深海棲艦への反抗作戦として活動を太平洋からインド洋と中東地域へと移す事が可決され、国連加盟国の各国軍は戦力をインド洋へと向けつつあった。

 

 

 

 

 

そんな中で極東の島国である日本が誇る軍港『横須賀港』は、太平洋地域の安定化と国連軍太平洋艦隊基地がハワイから横須賀に移転した事によりこれまで殆ど行われてこなかったアジア諸国やアメリカとの交易が本格的に再開された事により、横須賀を含めた東京湾には毎日数百隻の貨物船が行き来していた。

 

 

新たに国連軍太平洋艦隊基地が置かれた横須賀基地では、大型艦用の桟橋に一際目立つ大型空母が停泊していた。

それは、この世界のアメリカでも実戦配備が開始された最新鋭のニミッツ級原子力空母『ニミッツ』だ。

 

 

アングルドデッキとこれまでのキティホーク級やエンタープライズ級を凌ぐこの艦の広い飛行甲板上では大規模な式典が行われており、軍人や各国政府関係者、招待されたVIPら大勢の人が集まっており、皆綺麗なスーツや海軍の制服を着用しており、その全員が甲板に敷かれたレッドカーペット上の椅子に座っている。

 

 

「そろそろ時間だな」

 

 

彼らに交じり先の戦いで作戦に参加した全艦娘達も居り、その中にはクリス・カイルとアーレイ・バーク、ジョン・ポール・ジョーンズの3人の姿がある。

 

 

「髪とか乱れてない?」

 

「大丈夫だ、問題はない」

 

「しかしまぁ、俺達までお呼ばれするとはな」

 

 

3人とも、この世界の物ではない元の世界のアメリカ海軍の白い制服を着用、頭には制帽を被って正装している。

 

 

「あれだけ派手にやったんだからな。お前達を秘密にすると言うのが無理な話だ」

 

 

後ろに座っている長門がそう話し掛けてくる。

 

 

「あ~こう言うの苦手なんだよな。アリーの奴、上手く逃げたな」

 

 

アメリカ海軍組の面々で唯一その場に居ないアリゲーターガーはあの戦いの後に、自身を拾って匿ってくれた例の部族の島へと戻っているため、この式典には出席はしていないのである。

 

 

「そろそろ見える頃だな………アレか?」

 

 

クリスが視線を向けた方向から、3機のヘリがニミッツに向かって接近してくる。

そのヘリの飛行編隊はV字の編隊を組んでおり3機とも緑と白のツートンカラーで塗装されている。機体にはアメリカ国旗とアメリカ合衆国大統領を示す大統領の紋章が描かれている。

 

3機はニミッツの飛行甲板後部に着艦、3機のうち1機からタラップが降ろされてレッドカーペットが敷かれると、機内からスーツをしっかりと着こなした一人の男が現れた。

 

 

 

「アメリカ合衆国大統領閣下に敬礼!」

 

 

 

もうお気づきだろうが、このヘリコプターは大統領専用機であり、それを利用できるのはアメリカ合衆国大統領のみ。

 

そしてヘリから降りてきた男こそ、この世界に於ける合衆国大統領『ウィリアム・J・アダムス』だ。

ウィリアム大統領はヘリから降りると、手を振りながら堂々とした様子で、飛行甲板の最前部に設けられた演説台に歩いていき、演説台に立ちマイクを前にすると、その場に居る全員に顔を向け話を始めた。

 

 

『合衆国ならびに我が国と厚い絆で結ばれた同盟国の方々、私は合衆国大統領ウィリアム・J・アダムスです。本日私が合衆国から遠く離れたこの地に参りましたのは、昨年のハワイ諸島の戦いに於いて英雄的な行動を見せ、ハワイ諸島並びに太平洋を悪魔から取り戻すと言う偉業を成し遂げた勇敢な方々の栄誉を称えるためであります』

 

 

何処か優しくも頼もしい雰囲気を持つウィリアム大統領。そのウィリアム大統領は手にしていた鞄を演説台に設けられたテーブルの上に広げ、中から小さな箱が幾つも並べられる。

 

 

 

『私、ウィリアム・J・アダムスは合衆国大統領として、そして1個人として英雄達に感謝の意を表したいと思います』

 

 

そこから一人ずつ名前が呼ばれていき、合衆国、国防海軍、作戦に参加した各国軍の将兵達にウィリアム大統領から直接勲章が手渡されていく。

やがて、名前を呼ばれた者達の勲章授与が終わり、最後にウィリアム大統領は笑みを見せる。

 

 

『ここで最後に、私からとある勇敢な者達に対して感謝を述べたいと思います』

 

 

その言葉に少しだが周りがざわついた。

 

 

『その方達は正規の合衆国軍人ではありませんが、先の戦いに於いてハワイを乗っ取っていた敵旗艦を撃破し我々に勝利をもたらしたと言っても過言ではありません。英雄的な戦いを見せたその方達に我が合衆国は名誉勲章を授与いたします』

 

 

そう言うとウィリアム大統領は名簿に書かれた名前を読み上げる。

 

 

『ミサイル駆逐艦クリス・カイル』

 

「はい!」

 

『ミサイル駆逐艦アーレイ・バーク』

 

「はい!」

 

『ミサイル駆逐艦ジョン・ポール・ジョーンズ』

 

「はっ!」

 

『そして此処には居られませんが、潜水艦アリゲーターガー。以上の4人は壇上へお上がりください』

 

 

そう促され、クリス達3人は壇上へと上がる。

 

 

「あなた方の勇気ある行動は人類にとって大きな希望となりました。受け取って頂けますか?」

 

「はい!」

 

 

クリスは別世界とはいえ合衆国大統領から直接勲章を受け取る事に緊張の色を隠せないでいる。

ウィリアム大統領はケースの中から名誉勲章のバッジを取り出し、それをクリスの制服に取り付ける。

 

 

「ありがとう」

 

 

そう一言述べると、ウィリアムはクリスの手を取って握手を交わした。

握手を終えクリスは海軍式敬礼でウィリアムに応える。

その後に、バークとジョンも勲章を受け取り握手を交わして壇上から降りる。

 

 

 

そして厳かに行われた式典が終わり、今度は招待客同士による懇談会が始まった。

 

 

 

「緊張したぁ~」

 

「全くだ。まさか別世界で名誉勲章貰うとは思わなかったな」

 

「だが、これで我々はこの世界で生きていくという決心を改める事が出来た」

 

 

3人の元へ、戦友達が駆け寄ってきた。

 

 

「おめでとうクリス、バーク、そしてジョン」

 

「まさか私たちの中から名誉勲章貰うのが出てきたとはね」

 

「おめでとうなのです!」

 

「これで立派なレディの仲間入りね!」

 

 

 

第6駆逐隊がクリスらに謝意を述べる。

 

 

 

「僕からもおめでとうと言わせてくれないかい」

 

 

 

そこへ拍手をしながら時雨がやってきた。

 

 

 

「私たちも居るわよ!」

 

「おめでとう!やったじゃない!」

 

「おめでとうございます!」

 

 

第7駆逐隊、5航戦、1航戦にその他の部隊の艦娘達も集まってくる。

 

 

「ありがとう皆。この世界に来て2年、皆のお陰で此処まで来れたんだ。感謝してもしきれない」

 

 

クリスは皆に礼を述べる。

 

 

「ついでにだが、これから俺達はこの横須賀基地に制式に配属になった。今後ともよろしく頼むよ」

 

 

この式典が行われる少し前、クリス達は日本とアメリカ政府からの図らいにより正式に軍人として横須賀基地所属となった。籍は元の世界の合衆国海軍のままこの世界で軍人として生きていける様になったのだ。

 

 

「こんな事を言うのもアレかもしれないけど、あのアメリカがあなた達をよく諦めたわね」

 

「どうもアイオワとホーネット達が頑張ってくれたらしいんだ。詳しくは聞いていないが、あの2人は中々顔が広いらしい」

 

「成る程。じゃあ向こうとこっちのお墨付きって訳だ」

 

「そう言う事。これでもうコソコソしなくても良いから気兼ねなく任務を遂行できそうだ」

 

「任務?」

 

「あぁ………生きるためのだがな」

 

 

 

画して一時の平和を手に入れ、安寧をも手に入れたクリス達。この世界で生きていくための意味を見つける事が自身に課せられた『任務』だと理解し、これからもそれを探して行くだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

エピローグ終




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