艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第15話

クリスがこの世界にやって来て3週間が経った。

鎮守府にやって来て数日の間、クリスは有名人だったが、流石に3週間も経てば熱も冷める。

今やクリスは皆から本当の仲間のように接し、クリス本人も鎮守府に居心地の良さを感じ始めている。

そんな中でもクリスはこの世界の事と深海棲艦に関しての情報を集めており、それをコンピューターにインプット、生きていくための基盤作りに余念がなかった。

資料室で深海棲艦に関する資料とこの世界の軍民で使用されている技術力、歴史を余す事なく調べ上げている中である程度の事が理解できていた。

 

 

 

(歴史に関しては1930年代中頃までは従来の歴史通り。しかしこの世界に於ける歴史の転換点が1941年12月8日の真珠湾攻撃からか…)

 

 

史実であればその年のその日付は日本海軍によるハワイ真珠湾攻撃が実行され、太平洋戦争に突入した日である。しかしこの世界の真珠湾攻撃は人類同士の戦争とは全然様相が異なっていた。

 

 

(真珠湾を攻撃した正体不明の生命体による攻撃、僅か数時間のうちにハワイ諸島は占領。同時にマレーシアへも正体不明の生命体による奇襲上陸が行われイギリス海軍東洋艦隊が派遣されるも、東洋艦隊は全艦を喪失……翌1942年1月、世界各地の軍民の港や沿岸地域に対する正体不明の生命体による上陸攻撃が確認され、国際連盟は加盟国並びに非加盟国による国連軍を編成、かろうじて勝利を修めるものの、列強の海軍戦力は壊滅、以降列強国は正体不明の生命体に対する共同歩調を取り、またこの正体不明の生命体を『Abyssal ship 深海棲艦』と命名する)

 

 

 

独自に纏められた資料をクリスは更に読み進める。

 

 

 

(そして1945年頃より各国海軍により深海棲艦に対抗するための海上高機動歩兵、通称艦娘が確認されるようになる。軍艦とほぼ同じ戦闘能力を持つ艦娘の登場により世界列強は徐々にではあるが制海権を取り戻し、最低限の航路の確保に成功する。しかしこの艦娘の登場までの過程には様々な疑問や憶測が飛び交っており、一部では鹵獲した深海棲艦の技術が使われているとの噂もある。以降、人類側は各地で反抗を繰り返してはいるものの、無尽蔵とも言える深海棲艦の戦力を前に双方とも拮抗し現在に至る訳か)

 

 

資料を読み終えるクリス。

 

 

「海上高機動歩兵…………その出自が謎に包まれ、しかも艦娘本人も生を受けた時の記憶が軒並み欠落しているか…………」

 

 

40年代に艦娘のような存在を産み出せるだけの技術力があったのなら何故元の世界ではそれがなかったのか?

単純にそれだけの技術力が無く、そもそも人間を海に立たせ走らせて戦うなんて荒唐無稽、絵空事とされるのがオチである。

しかしこの世界ではそれを実現してしまった。

何故か、それは何かしらの切っ掛けがあったのだろう。

科学力や技術力が元の世界の1940年代と同じ水準のこの世界の1940年代に艦娘と言う高度な存在が産み出せたのであろうか。

資料に書かれている鹵獲された深海棲艦の"技術"と言うのがクリスの心に大きく引っ掛かっていた。

 

 

「艦娘自身は自分の出自に関する記憶を持たず、またどうして産み出されているのかが不明……………あながち間違いじゃないのかもな」

 

 

深海棲艦の技術が艦娘を産み出すための何かしらの方法に利用されているという推測は飽くまでも噂程度の話のため確信は持てない。しかし状況から見て、一説としてはあり得る話である。

もしそれが本当なら艦娘は深海棲艦と同族で戦っている事となり、またそれを人類が利用している事にもなる。

 

 

「ん~………だとしたら深海棲艦ってのは何なんだろうな」

 

 

資料には深海棲艦に関する事は殆ど書かれておらず、その正体に関しても一切が不明なのである。現状、深海棲艦に関して人類側が得られている情報は、深海棲艦は海中で独自に進化した生物で、人間やそれに近い知能を持ち、人間と同じ言語を話し、人間を異常なまでに敵視している。分かっているのこれくらいである

深海棲艦が何の目的で人類から海を奪い去り、何故人類を敵視しているのか…………

 

 

 

「分からん…………」

 

 

腕を組んで考え混むが全く分からず、考えるのを止めた。

 

 

 

その時……

 

 

『駆逐艦クリス・カイル、至急司令室に出頭』

 

 

 

館内放送で突然呼び出しを受ける。

 

 

 

「もしかして例の件か?」

 

 

呼び出しを受ける内容に心当たりがあったクリスは、資料を片付けてから資料室を出て、司令室に直行する。

 

 

「駆逐艦クリス・カイル、出頭しました」

 

『入れ』

 

 

中に入ると、そこには長門、陸奥、大淀の3人が居た。

 

 

「急に呼び立ててすまない。実は例の件なんだが」

 

「ようやく俺の所属が決まったのか?前に言ってた第3水雷戦隊って所か?」

 

 

実はクリスはこの鎮守府に来てから3週間もの間、所属が未定のままなのであった。歓迎会で長門からは第3水雷戦隊に配属予定の駆逐艦の着任が手違いで遅れているため、暫定的に第3水雷戦隊への配属を検討していると聞いていたが、今の今まで続報が無かったためどうなったのかが気になっていたのだ。

 

 

「そうだ。それに近く深海棲艦に対する大規模な反抗作戦が実行される事になって、配属予定と言っていた駆逐艦が明日着任する事になった」

 

「と言う事は、俺は第3水雷戦隊へは」

 

「あぁ。艦隊編成が変えられない以上、1つの部隊に余計な戦力を配置する訳にはいかないんだ。だからお前には各部隊への予備戦力として各作戦に合わせ所属を逐一変更する、所謂ピンチヒッターとして動いてもらおうと思っている」

 

「となると、場合によっては独自行動も」

 

「あぁ。許される事もあり得る」

 

「今の段階での俺の所属先は?」

 

「これを見てくれ」

 

 

すると長門はある資料を見せる。

 

 

「これは………作戦計画書じゃないか。これは極秘資料だろ?」

 

「あぁ。だが中身は大まかな事しか書かれていない上に、作戦の詳細については別途資料にして厳重に保管してある。見られても問題ない」

 

「なら」

 

 

作戦計画書の中身を見るクリス。そこにはウェーク島攻略作戦の概要が大まかに書かれていた。

 

 

「成る程。それでこれに俺の配属先に何の関係が?」

 

「実はこの作戦で使用される物資等の資材が備蓄分では賄えるんだが、この作戦の後にまた作戦が計画されているんだ。長期戦になる事を想定して物資を更に備蓄しておく必要がある事から大規模な輸送作戦が実行される。クリスには物資輸送を行う輸送船団の護衛を行う第6駆逐隊への配属を命じる」

 

 

第6駆逐隊はクリスがこの世界で初めて出会った暁達の隊である。

 

 

「分かった。第6駆逐隊配属を拝命した」

 

「すまない。クリスも顔馴染みと聞いてるから、問題は起こらないとは思うが、しっかりやってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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