艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第20話

深海棲艦に対する大規模な反抗作戦に備えて、国防海軍本部より全鎮守府に対し作戦前の英気を養う目的で、全艦娘に一週間の半舷上陸の通達が出された。

それは横須賀鎮守府にも入ってきており、艦娘達は通達が来るなり直ぐに休暇申請をして朝早くから町へと繰り出していった。

 

しかしクリスは鎮守府の自室で暇を持て余していた。

 

 

「…………」

 

 

誰からも誘われる訳でもなく、土地勘の無い国の町に出ても何があるのかが分からないため、自室で横になりなが時間を潰している他は無い。

 

 

「暇だな」

 

 

クリスは何かをして時間を潰さないとと考える。

 

 

「しょうがない」

 

 

クリスはベッドから起き上がるとガンケースから愛用のライフルを取り出し、暇潰しを兼ねて射撃練習をしようと部屋から出て寮から出ると射撃場へと向かった

 

 

「ん?先客か」

 

 

射撃場には先客が居た。

そこに居たのは、シンプルなデザインのセーラー服を着た垢抜けない感じの艦娘だった。

 

 

「見た事が無い奴だな………もしかして」

 

 

以前、長門が言っていた新しい艦娘ではないかと思い、声を掛ける。

 

 

「ちょっと良いか?」

 

「はい?」

 

「君はもしかして新しく着任したって言う……」

 

「はい!特型駆逐隊『吹雪』です!」

 

 

 

そうハッキリと答える駆逐艦吹雪。

 

 

「吹雪か。俺は合衆国海軍、駆逐艦クリス・カイルだ、気軽にクリスとでも呼んでくれ。国は違うがこれから一緒に戦う仲間としてよろしくたのむよ」

 

「はい!よろしくお願いします、クリスさん!」

 

 

吹雪とクリスは互いに握手を交わす。

 

 

「ところで射撃訓練をやっていた様だが」

 

「はい。私、実戦経験がありませんから、この鎮守府の皆さんの足を引っ張らない様にと思って」

 

「そう言う事か。調子はどうだ?」

 

「えぇ………まぁ…………あの通りです」

 

 

彼女が指差した方向を見ると、海上に射撃用の標的が数個浮いており、どの標的にも弾が当たった様子は無い。

 

 

「私、座学は出来るんですけど実技となるとどうしても……海上航行は何とか出来るんですけど」

 

「成る程。完全に新人という事か」

 

 

クリスが事前に調べていた通り、吹雪をネームシップとする特型駆逐隊は、完成当時は世界最高レベルの性能を持っていたが、トップヘビーが欠点であり、実際に彼女の姉妹艦の1隻が重大な事故を引き起こしている。

その欠点は見事に艦娘である彼女にも現れている様であった。

 

 

「今の所、私何も出来なくて。せめて射撃くらいは…」

 

 

射撃と聞いてクリスの表情が変わった。

 

 

「あぁ……俺で良かったら射撃を教えるくらいは出来るぞ」

 

「え?」

 

「俺は射撃に関しては自信がある。まぁ論より証拠だ、見ててくれ」

 

 

そう言うとクリスは肩に掛けていた愛用のライフルを手に取り、ボルトを引いて薬室に5発の弾丸を装填、そしてストックを肩に着けて、標的をスコープで覗き込む。

 

 

「!」

 

 

引き金を引くと、ドンッと言う発射音と共に弾丸が打ち出され標的の真ん中を貫いた。

クリスは素早くボルトを引いて空薬莢を排出、次弾を装填してボルトを押し込んで元に戻すと、2個目の標的を貫く。

 

 

「おぉ…」

 

 

 

同じ工程を何度も繰り返し、全ての標的を見事に撃ち抜いて射撃を終える。

 

 

「どうかな?」

 

 

そう問いかけると吹雪は興奮した様子だった。

 

 

「凄いです!格好いいです!!まるで赤城さんみたいです!」

 

「そうか?これくらいなら練習すれば出来るぞ。やってみるか?」

 

「はい!」

 

 

そう言うとクリスはライフルに再び5発の弾丸を装填し、吹雪に手渡す。

 

 

「お……重い……」

 

 

見た目以上に重いクリスの愛銃を手に吹雪は何とかストックを肩に当てて、スコープを覗き込みながら構える。

 

 

(成る程…そう言う事か)

 

 

彼女の銃の構え方を見て、射撃が下手だと言う理由が分かった。

 

 

ドンッ!

 

 

「キャッ!」

 

 

発射の反動を受けた吹雪は後ろに向けてよろめいた。無論放たれた弾丸は標的には当たってはいない。

 

 

「やっぱりか………吹雪、構えて撃つ時にどうにも体が後ろ向けてのけぞってるぞ」

 

「え?」

 

「上半身が後ろのめりになっていて、撃った時の反動を受け止めきれていないんだ。吹雪、自分の主砲を手に取って構えてみてくれ」

 

「はい」

 

 

吹雪はライフルを地面に置くと、自分の主砲を言われた通りに構える。

 

 

「ストップ!若干体が後ろに向けて反っている。もう少し体を前に傾けてみろ」

 

「こうですか?」

 

 

体を気持ち前に傾ける吹雪。

 

 

「そうだ。それと構える時は両足を広げて、しっかり腰を据える。それを意識してみろ」

 

「はい」

 

 

吹雪はアドバイス通りに主砲を構える姿勢を意識しながら、主砲をしっかり構える練習を繰り返す。

 

 

「よし。今度は撃ってみろ」

 

「はい!」

 

 

今度は砲撃して実践してみせる。

 

 

「っ!」

 

 

引き金を引くと吹雪の主砲が火を吹いた。放たれた砲弾は標的の中心から右上に命中した。

 

 

「当たった!?」

 

「その調子だ!構え方を意識して続けてみろ!」

 

「はい!!」

 

 

吹雪は同じ様に砲を構えながら、標的に向けて砲弾を撃ち込んでいく。いきなりど真ん中に命中はしないものの、標的にはしっかりと命中させている。

 

 

「これで最後!」

 

 

最後の砲弾が放たれ、それは最後の標的に命中した。

 

 

「やった…………やりました!」

 

「よし!中々良いぞ!」

 

「はい!ありがとうございます!」

 

 

命中率の問題がある程度改善した吹雪はアドバイスをくれたクリスに礼を述べる。

 

 

「まぁこれから、教えた通りの事を意識してやれば自ずと当てる事は出来る。日々の練習は怠るなよ」

 

「分かりました!!」

 

「じゃあ頑張れよ」

 

 

そう言って射撃場から離れるクリス。

 

 

「しかし……まだ時間はあるな」

 

 

吹雪に射撃練習を行ったとはいえ、まだ午後までには沢山時間がある。しかし特に予定も何もある訳でもない彼はどうするべきかまた頭を抱える。

 

 

「歩いて考えるか」

 

 

 

 

 

 

 

続く




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