艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
東シナ海での陽動作戦参加のためクリスと時雨は佐世保への移動のため艤装を装備して、埠頭に居た。
「えぇと……着替えと枕と布団と手帳に」
時雨は自身の私物を遠征用の背嚢の中身を確認する。
「着替え、下着、トランシーバー……メディカルキット、財布、拳銃とホルスターとマガジン、ナイフ、ライト」
一方でクリスは私物を殆ど持っていないため、必要最低限とも言える物と護身用の拳銃や弾丸、ナイフ等の武器中心の物を時雨の物よりも2回り大きいバックパックの中身を確認する。
「クリス、拳銃やナイフなんて必要かい?」
「俺はこの世界じゃイレギュラーな存在だ。何が起こっても不思議じゃないからな。自分の身は自分で守る状況が起きるのも無い訳じゃない」
「本とか枕とかの私物とかは無いの?」
「本は何処でも読めるし、別に枕が変わったからって言って眠れなくなる訳じゃない」
「以外とストイックなんだね」
確認を終えると、艤装を装着して海へと出る。
「さて、行こうか」
「あぁ」
2人はそのまま鎮守府を出発して、目的地である佐世保へと向かう。
今回は途中で瀬戸内海の呉鎮守府に立ち寄り、其処に所属している秋月型駆逐艦の『秋月』『照月』と合流、ほこで一泊し佐世保へと入港する予定である。距離が距離なため出発から経由地である呉到着までは丸1日は掛かるが、艦娘である2人の体力は全然余裕である。
「念のために」
クリスは作戦前の大事な時期である事を考慮して念には念をと格納庫からMH-60Rを発艦させ、周囲の対潜警戒を実施した。
「このまま何もなく呉に到着できれば良いが……」
クリスの予想とは裏腹に東京湾を出て外洋に出たが、道中は特に敵潜水艦や敵航空機との遭遇は無かった。
神出鬼没な深海棲艦なため何が起こるか分からないが、クリスのソナーやレーダーによふ不明目標の探知も捕捉もなく、列島沿いに南下、そして和歌山県と徳島県の中間に位置する紀伊水道へと入った。
「クリス、もう此処からは安全圏だよ」
「分かった」
四国の徳島県と和歌山県の間に位置する紀伊水道は、瀬戸内海へ通じる玄関口のような場所であり、国防軍の管轄下のため航路と空路は安全が確保されている。
「そろそろ秋月と照月の2人との合流地点の小豆島の東30キロの地点だったな」
「うん。そろそろ見える筈だけど……」
クリスと時雨は事前に呉鎮守府との取決めにより水先案内人として秋月と照月に合流する事となっており、時間が来れば秋月と照月の方から質問信号が送られてる筈である。
「ん?」
すると、クリスの電波探知装置が信号のような電波を受信した。
「来たぞ」
クリスは信号電波の発信源を特定して、発信源に対して応答信号を返す。
それから暫くすると………
「来たな」
クリスと時雨に向けて小豆島の方向から2人の艦娘がやって来た。
「横須賀鎮守府の時雨さんとクリス・カイルさんですね?私は呉鎮守府よりお二人の水先案内人の任を受けました、秋月型駆逐艦1番艦『秋月』です!」
「秋月型駆逐艦2番艦の『照月』です!」
2人に自己紹介をする秋月型駆逐艦『秋月』と『照月』。2人とも時雨よりも少し年上のような見た目をしているが服装のデザインと艤装がほぼ同じ装備をしているため一目で姉妹である事が分かる。
「横須賀鎮守府の時雨です」
「合衆国海軍、駆逐艦クリス・カイルだ」
「お待ちしていました。これより呉鎮守府へとご案内します。私達の後に着いてきてください」
クリスと時雨は秋月と照月を先頭に後を追うように続く。
小豆島を越えて瀬戸内海へと入り、中国地方沿岸沿いに呉へと目指す。
兵庫県、岡山県を通り過ぎると広島県沖に到達すると、呉賀鎮守府が見えてきた。
「あれが呉鎮守府です」
秋月が指差した呉鎮守府。目に入ってきたのは多数の造船所や停泊している大量の船舶、そして海軍が管理している島々等で、その奥に呉鎮守府司令部がある。
クリスと時雨は2人に付き添われながら呉鎮守府へと入港、装備を預けそのまま呉鎮守府司令部が置かれている庁舎へと入った。
「君たちが横須賀から来た艦娘だね?」
そこでは既に呉鎮守府を統括している鎮守府司令官が待っており、白い軍服に身を包み、クリスと時雨が彼の前で敬礼をする。
「横須賀鎮守府所属、駆逐艦時雨です」
「合衆国海軍所属、駆逐艦クリス・カイルです!」
「うむ。私は当鎮守府司令の橋元だ。今回の作戦ではうちの秋月と照月が世話になるが、2人とも中々優秀な艦娘だ。是非よろしく頼む」
「「了解!!」」
基地司令である橋元と挨拶を交わした後、彼の案内で呉鎮守府内にある宿舎へと向かい、宛がわれた部屋へと通す。
「今日1日はこの部屋を使ってくれ。今回の作戦で君たちは秋月と照月とは初対面だ。時間は短いかもしれんが此処を交流の場として使ってくれ。それと、この鎮守府内の移動は自由だ、何かあれば気兼ねせず何でも聞いてくれ」
「ありがとうございますadmiral橋元」
「うむ。では私はこれで失礼するよ」
そう言うと橋元は秋月と照月を残して去っていった。
残されたクリスと時雨は部屋の前で秋月と照月と共に部屋に入る。
「じゃあ作戦前の交流って言う事で、何か話でもしようか?」
「はい」
「じゃあまず秋月と照月、2人から何か聞きたい事とかは無いか?」
「はい!一杯あります!私からクリス・カイルさんへ…」
「あぁ…~クリスってよんでくれ」
「じゃあ……クリスさん」
「あぁ」
「クリスさんて、男の艦娘さんなんですか?」
秋月からの早速の質問にクリスは快く答える。
「そうだ。大分珍しいらしいがな」
「やっぱり…………でもクリスさんて何故かよく分からないんですけど私達と同じ匂いがするんですよね」
「同じ匂いか………多分俺が艦隊の重要目標を護衛する防空艦として設計されてるからかもしれんな」
「そうなんですか!?じゃあクリスさんも対空戦闘が得意なんですか?」
「そうだな。対空戦闘が戦闘の主だが他にも対地、対潜、対水上攻撃も一通りこなせるから対空のみが得意って訳でもないがな」
アーレイ・バーク級は建造が始まった頃よりも能力は格段に向上しており、クリスが属するフライトⅢは対空、対潜、そしてトマホークによる対水上攻撃と対地攻撃任務における全ての能力がバランス良く付与されており、一部のアーレイ・バーク級には弾道ミサイルの迎撃ができるBMDシステムが搭載されており、クリスにも建造当初からそれが搭載されているため本格的なミサイル防衛が可能なのである。
しかし本来のイージス艦の役割は艦隊防空であり、超音速のミサイルを迎撃可能なよう開発されたイージスシステムを搭載しているクリスと、本格的な防空能力を備えた秋月型駆逐艦とは時代が違えど似た者同士なのかもしれない。
「はい!じゃあ私からも質問を………」
続く
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