艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第29話

時系列は再び戻り、佐世保鎮守府では作戦に備えての演習が行われようとしていた。

今回の演習は所属の違うそれぞれの艦娘達による連携を確認するためのものであり、陽動作戦では各々の連携が必要となる場面が想定される。

演習前の訓示が鎮守府の岸壁によって執り行われ、既に艤装を装備していたクリス達は成田の前に整列して伊い

る。

 

 

「さて、今回の編成は我が佐世保鎮守府所属の潜水隊と君達、対潜任務部隊との対抗戦だ。今回は各々の技量を見せてもらう。心して掛かるように。では演習開始は30分後、0900時だ。各自は演習海域へ移動せよ」

 

 

クリス達はその場で艤装を装備し岸壁からそのまま長崎沖の演習海域へと移動する。

 

 

「皆、これを渡しておく」

 

 

移動中、クリスは皆に手のひらサイズの小さなトランシーバーを手渡す。

 

 

「なんですかコレ?」

 

「試作品の個艦データリンクシステムの送信機だ。それを艤装に装着しておけば、艦同士の距離と情報共有が俺の艤装のコンピューターに集約されて指示や情報共有が楽になる。マグネット式だから自分の好きな位置に装着しておいてくれ」

 

「分かりました」

 

 

時雨と秋月姉妹達は送信機を自身の艤装に装着する。

すると、送信機に電源が入りクリスのデータリンク受信機が送信機からのUHF波を受信、位置と距離と速度の情報がHUDに表示される。

予てより明石と夕張達と共同開発していたデータリンクの先行試作品であり、今回の陽動作戦で訓練と実戦の場を使ったテストを兼ねてクリスが持ち込んでいたのであった。

 

 

「リンク成功。受信状態良好、タイムラグは殆ど無し」

 

 

まだ試作品であるため充分な完成度には達していないが、現段階では納得できる性能は示せている様子である。

 

 

「さて、今回の演習相手の確認だ」

 

 

事前に手渡された演習マニュアルに記載されている、敵役の潜水艦のリストを確認する。

 

 

「伊201、呂500、伊58、伊401か」

 

「新鋭艦が2隻。多分厄介なのが伊201かもしれないね」

 

「確か潜高型って、水中航行速度が20ノットもあるらしいですよ」

 

「20ノットか……確かに潜水艦にしては早い方法だが、ロス級よりは全然遅いな」

 

「僕らにとっては脅威だがな」

 

 

クリス達は今回の演習では伊201が脅威と判断。当艦を最重要目標に設定する。

 

 

「さて、そろそろ演習開始時間だ」

 

 

腕時計で演習開始時間を確認する。

 

 

「10秒前……………5秒前、4、3、2、1、0!」

 

 

演習開始のブザーが鳴り響き、対潜演習が開始された。

 

 

「哨戒機発艦!」

 

 

クリスは何時も通りシーホークを発艦させる。今回も短魚雷を装備した対潜装備が施されている。

 

 

『ホワイトシャーク発艦!』

 

 

ヘリ甲板から飛び立つシーホーク。

 

 

「オートジャイロだ!」

 

「私、初めて見ました!」

 

 

秋月と照月の2人が始めて見るヘリコプターに興奮しており、初月と涼月も飛び去っていくシーホークを興味ありげに見つめている。

 

 

 

 

しかしクリスはそんな視線を気にする事なく、次の対抗手段である曳航ソナーを海面に垂らし、バウソナーもアクティブモードで待機させ対潜警戒網を貼る。

 

 

「全艦対潜警戒!」

 

「「「「「了解!」」」」」

 

 

秋月達も水中探信儀の電源を入れ、何時でも爆雷が使えるように備える。

 

 

 

 

 

 

その頃、対戦相手の潜水艦組は……

 

 

「やっぱり来たね」

 

 

水中で待機していた伊201を旗艦とする対抗部隊は、各々の配置に就いて、クリス達を待ち受ける。

 

 

「各艦、何時も通りの戦術で」

 

「「「「了解」」」」

 

 

伊201の指示で対抗部隊は定石通りクリス達がやって来るであろう予想針路上にて待ち伏せからの包囲の戦術を取る。

 

 

「皆、あのクリスって駆逐艦には厳重に注意して。提督からの話だと、優秀な対潜装備を持ってるって聞くから」

 

 

クリスが伊201を警戒しているのと同じ、伊201もクリスの事を警戒している。

 

 

 

 

 

同じ頃……

 

 

海面を低空飛行しているホワイトシャークは等間隔でソノブイを投下し、広い対潜警戒網を構築していた。

既に搭載されていたソノブイを投下し終え、海面のソノブイが放つ情報をリアルタイムでクリスに送っている。

 

 

「反応は?」

 

「ない。この辺りの海底の地形がやや複雑になっていて、アクティブモードだと乱反射するエリアがあるみたいだ。対抗部隊はそこを利用して攻撃してくる可能性が高いな」

 

「じゃあそこで待ち受けますか?」

 

「普通ならそう言う判断になるが、相手は実戦慣れした潜水艦だ。その裏をかいてくる可能性が高い………前の演習だと変温層のダクトに潜り込まれて発見が僅かに遅れた時があった。今回はそんな失態が無いようにする必要がある」

 

「成る程………」

 

 

クリスは横須賀での対潜訓練の時の事を覚えており、海面に近い変温層に潜り込まれないよう、以前よりも念入りな対潜警戒網を貼っている。

パッシブソナーが反応しやすいよう速力を下げ航走雑音をなるべく立てないよう慎重に進み、バウソナーと曳航ソナーの利点を最大限に活用する。

 

 

「さぁ何処からでも来い………」

 

 

 

 

 

 

続く




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