艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
『深海棲艦』
それは突然、世界中の海に突然現れた侵略者に付けられた名前である。
侵略者はその圧倒的な戦力により、瞬く間に世界中の海をその手中に収め、人類は陸へと追いやられた。しかし人類は奪われた海を取り返そうと果敢に挑み続け、多くの犠牲を払いながらも、僅かにではあるが海を取り返しつつある。
そんな中で人類の希望となっている、深海棲艦に対抗できる数少ないの戦力である『艦娘』と呼ばれている少女達が居る。
かつての戦争で活躍した軍艦と同じ名前、同じ記憶を持つ彼女達は今や人類にとっては深海棲艦と対等に戦える希望とされている。
そんな艦娘達が所属する『鎮守府』と呼ばれる場所があり、その中でも日本では最大規模を誇る横須賀鎮守府に所属する第6駆逐隊は『暁』『響』『雷』『電』の4人の艦娘で編成されている。
第6駆逐隊は基本的に物資輸送任務や船団護衛任務に従事しており、様々な戦略物資を輸送し、横須賀鎮守府を含めた日本各地の鎮守府に運び込まれる物資の大半は彼女達によってもたらされており、彼女達が居なくなる事は国防に大きく関わる事となる。
そんな第6駆逐隊はこの日、何時もの物資輸送任務に従事しており、東南アジアより必要な物資を携えて帰還中、深海棲艦の魚雷艇部隊と軽巡洋艦、駆逐艦で編成された水雷戦隊と遭遇、戦闘中だったのであった。
今回は接敵した敵側の数が多く、数に任せた攻撃で第6駆逐隊はまさに壊滅の危機に瀕していた。
第6駆逐隊の現場指揮を任されていた駆逐艦『響』は無線を使い救援を求め、それを運良くクリスが彼女の無線を拾った事により、ミサイルを駆使したアウトレンジ攻撃により部隊壊滅と言う事態を避ける事が出来た。
そして今、第6駆逐隊は自身達を危機から救いだしてくれたと言っても過言ではない、クリス・カイルと邂逅を果たしていた。
「君が?」
最初に口を開いた響はそう問い掛ける。
「そうだ」
クリスはそう答えた。
「ありがとう、危ない所を」
「いや、同盟国が危機に直面しているならそれを助けるのが合衆国海軍だからな」
「合衆国?君はアメリカの軍艦なのかい?」
「そうだ」
「すまない。無線の調子が悪くて名前だけしか聞こえなかったんだ」
「いや、構わない。ところで君達、ケガは無いか?」
クリスが響達にそう問い掛ける。
「私は大丈夫」
「暁はなんともないわよ」
「私もよ。でも、妹の電が」
雷は側にいたもう1人の艦娘『電』に目を向ける。
「うぅ………痛いのです………」
電は左手を押さえている。
「すまない、少し傷を見せてくれ」
「はいなのです」
電は押さえていた左手をクリスに見せる。
クリスは電の左手の自身の手に取って、傷口を見る。
「軽い切り傷だな。ちょっと待っててくれ」
そう言うとクリスは自身の艤装の中から赤十字の腕章を着けた小人達が現れ、電に取り付くと、左手の傷口に消毒液を吹き付けてからガーゼで覆ってテープで固定する。
「これで良い。これは応急処置だから、帰って医者に診てもらえ」
「あ…ありがとうなのです」
電はクリスに礼を述べる。
「よかったわね電!」
「はいなのです!」
電に雷が抱きついて喜び、電も表情が和らぐ。
「ところであなた、どうしてこんな所を1人で?他に仲間は居ないの?」
そこへ暁が質問をしてきたが、クリスはどう答えれば良いのかが分からなかった。
「何と言うべきか……………漂流………迷子と言えば良いのか」
「何よ、ハッキリしないわね」
「俺も分からないんだ。此処に居る前までの記憶が無くて、気が付いたらこの先の海域の海上に立ってたんだ」
それを聞いた瞬間、暁達の表情が変わった。
(ねぇ、もしかして彼って……)
(間違いないわよ!)
(状況から見てそうだろうね)
(はわわ…)
周りには聞こえないくらいの小さな声で何やら話をしているのをクリスのヘルメットについてるヘッドセットの集音マイクが拾っていた。
(何か知ってるな。もしかしたら俺が此処に居る手掛かりが掴めるかもしれん)
そう考えたクリスは何も聞こえないフリをしながら、暁達の話が終わるのを待った。
「ねぇ、クリスって言ったかしら?」
「あぁ」
「あなたさっきの無線交信の時に私達の上官と話がしたいって言ってたでしょ?」
「そうだ」
「だったら私達についてきて。帰りながら無線で報告がてらあなたの事を話してあげるわ」
「そうか、助かる。じゃあ案内を頼もう」
「任せて!!」
かくしてクリスと艦娘の出会いは極めて穏やかに進んだ。次の段階である彼女達の上官たる人物との接触の目処もついたため、クリスは第6駆逐隊と共に彼女達の母港である横須賀を目指した。
「了解。クリス、鎮守府からの連絡で、提督には今は会えないけど、提督代行が君の入港を歓迎するって返事が来た」
「本当か?幸先が良いな」
「それと、入港と同時に直ぐにこちらへ通せとも言ってきている。私達と一緒に入港して代行の所へ行こう」
「分かった。相手には了解したと伝えてくれ」
話はトントン拍子で進んでいく。
そんな中で暁はクリスに目を向けると、話し始める。
「それにしてもさっきの攻撃、凄かったわね。あの数のPT小鬼をたった1機のオートジャイロで蹴散らせれるなんて」
「オートジャイロ?あぁ……コイツの事か?」
クリスは腰のマウント部にあるヘリ甲板に駐機しているMH-60Rを見せる。先ほどの攻撃で暁達に大きな印象を残したMH-60Rシーホーク"ホワイトシャーク"は今、整備のため格納庫に入れられようとしている。
「見た事の無いオートジャイロね。陸軍のカ号より大きいんじゃない?なんて言うのコレ?」
「MH-60R LAMPS MkⅢ、通称シーホークだ」
シーホークの名前を聞いて、英語が苦手な暁と雷、電は何の意味か分からなかった。
「え、英語…………なんて意味なの?」
「日本語で海の鷹って意味だ。コイツは対潜哨戒機で、主に潜水艦の捜索と攻撃が主な任務だ」
「でもさっき、深海棲艦のPT小鬼に向かって噴進弾とか機銃使ってたけど………」
「コイツは対潜哨戒と対潜攻撃の他にも武装が施せる優れ物で、噴進弾の方はヘルファイアミサイルっていう誘導弾で、機銃はMk25mod0、所謂ミニガンって奴だな」
ホワイトシャークの射撃手が機体のドアガンであるMk25mod0ミニガンを暁達に見せる。
「ガトリング砲って奴ね」
「そうだ。電気駆動で発射速度は毎分6000発だ」
「6000発!?」
「凄いのです!」
「1分間に6000発って事は……1秒で……えぇと……100発ぅ!?」
凄まじい発射速度を誇るミニガンの性能に驚く暁達。
「それも凄いけど、敵の軽巡級を沈めたアレも噴進弾の一種かい?」
「そうだ。アレは対空戦闘と対艦攻撃両方に使える優れ物だ。性能は機密だから話す事は出来んがな」
そんな話をしている間に、第6駆逐隊とクリス達は東京湾へと到達していた。
クリスは搭載しているレーダーを使って周囲に見える地形をスキャンさせ、コンピューターにデータを入力させる。
(間違いない、此処は日本の東京湾。この先には横須賀港がある。だが………)
先ほどから陸地に見える建物は古さを感じ、ビルや近代的な工場が殆ど見当たらず、すれ違うタンカーもかなり古さを感じる物ばかりであった。
(やはり此処は俺が知っている世界じゃない可能性がある。彼女達の会話の中にあった深海棲艦なんて聞いた事がない………)
クリスは心の中で少しの不安を抱え、横須賀港へと入港していく。
続く
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