艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第30話

海面を低空飛行しながら、潜水艦の捜索を行っているホワイトシャーク。機体に装備されているAN/UYS-2音響信号処理装置がソノブイから得られる情報を処理、データ化しながらデータリンクによりクリスへと送っている。

 

 

「各ソナーからの反応は?」

 

「ありません。海底の地形が複雑でアクティブモードだと乱反射するエリアがありますから」

 

「もう少し捜索範囲を広げてみますか?」

 

「そうだな。乱反射が多いエリアを中心に捜索範囲を絞ってみるか」

 

 

ホワイトシャークは敷設したソノブイの中で海底からの乱反射が多いエリアへ移動、捜索を続ける。

 

 

「よし、この辺りでいいだろ。ソナーを降ろせ」

 

「了解」

 

 

乱反射するエリアの中心点の位置で機体をホバリングさせ、機体から吊り下げソナーが海中へ降ろされる。

 

 

「出力調整には注意しろよ」

 

「了解」

 

 

ソナーが海中へ入るとアクティブモードによる、ピンガーの音が海中へと拡がっていく。しかし、前回の横須賀の訓練と違い、この辺りの海域は地形が複雑なため、ソナー波は乱反射を起こし正確な捕捉が難しい。

それを知ってか知らずか、対抗部隊は岩影や窪みの中で息を潜めている。

 

 

「来たわね」

 

 

伊201は上からやって来るアクティブソナーのピンガー音を聞いて、相手が近いと思った。

 

 

「我慢比べは得意なのよ」

 

 

対抗部隊は冷静で、アクティブソナーが地形によって乱反射しやすい特性を理解しており、その中で身を隠す方法を熟知しているため我慢比べの如く、ピンガー音が遠ざかるのを待ち続ける。

 

 

 

 

 

息を殺して耐えていると、ピンガー音は遠ざかっていき、やがて聞こえなくなった。

 

 

 

「よし!今だ!」

 

「待って!」

 

 

伊401が動きだそうとするのを伊201は静止した。

 

 

「どうしたの?もう向こうは行っちゃったよ」

 

「静かに!水中探信儀は音を出すやつもあれば聞き耳を立てる奴もあるのを忘れたの?」

 

「あ………」

 

 

伊401は慌てて元に戻る。

 

 

 

「焦る事は無いわ。待てばその時は来るから」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、水上の対潜部隊は

 

 

 

「クリス、ヘリからの報告は?」

 

「無いな。向こうは横須賀の連中より慎重みたいだな」

 

「どうする?このまま待ち続けますか?」

 

「あぁ。ここで焦る必要はない………時間を掛けて相手を引き摺り出すさ」

 

 

クリスの指示で皆は速度を維持したまま、不意の奇襲に備える。その中でクリスは何とか相手を誘い出す手を考える。

 

「初月、確か此処から500メートル先から海底が一気に深くなるんだったな?」

 

「あぁ」

 

「奴等を其処へ誘い出す。皆、ゆっくりと速度を落とせ………いいか?ゆっくりエンジンの出力を下げて、ゆっくりと減速するんだ」

 

「うん」

 

 

皆、指示通りエンジンの出力を徐々に下げ、スクリューの回転速度を落とし減速させる。

やがてスクリューの回転が止まり、波の抵抗を受けながら完全に停止した。

 

 

するとクリスはハンドサインで皆に指示を出す。

 

 

(皆、音を立てないように)

 

 

そう指示を出すと、曳航ソナーとバウソナーのパッシブモードの感度出力を上げて聞き耳を立てる。

他にも、海面近くで潜んでいる事を想定して対水上捜索用のAN/SPS-67レーダーを使い相手が潜望鏡を出してきたら即探知できるよう備える。

 

 

「………………………」

 

 

皆、その場から動かずに相手が動くのを待ち続ける。

 

 

「間違いない………近くにいる」

 

 

1分が通常よりも長く感じる。お互い探り合い、いつ事態が動くのか分からない状況の中、時間だけが過ぎていく。

 

 

「皆、俺が1回だけピンを打つ。ピンが跳ね返ってきたと同時に機関始動だ」

 

 

そう言うとクリスはバウソナーをパッシブモードからアクティブモードに変え出力を最大に上げる。

 

 

「行くぞ!」

 

 

スイッチを押してアクティブソナーを最大出力で放つ。すると直ぐに反応が返ってきた。

 

 

 

「来たわ!」

 

 

伊201が声を上げた。

 

 

「何処に居るの!」

 

「何処でち!?」

 

 

伊201はゆっくりと上を指差し皆が上を見上げる。

 

 

 

「奴等は真下に居た!」

 

 

 

お互い上下に位置していたのであった。

 

 

 

「機関始動、最大戦速!回避行動!」

 

 

 

クリスの合図で時雨達が動き出し、クリスも曳航ソナーを切り離して回避に入った。

 

 

「対潜戦闘!短魚雷投下!」

 

 

同時にMk32発射管からMk50短魚雷が2本投下され、捕捉したターゲットに向かって走っていく。

 

 

「クソ!早いぞ!」

 

 

クリスのソナーが伊201が加速している事を示す。

 

 

「捕捉できたのは2隻!残りの2隻は何処かに居るぞ!」

 

「音は聞こえる!こっちは爆雷使って何とかするから、クリスは201ともう1隻をお願い!」

 

「分かった!」

 

 

クリスは伊201ともう1隻にターゲットを絞った。

 

 

 

 

その頃、クリスが発射したMk50は深海に逃げようとする伊201と伊58を追尾していた。

 

 

「魚雷が来るでち!早い!」

 

「兎に角、魚雷が追ってこれない深度まで潜るのよ!」

 

 

2人はMk50から逃げるように必死で引き離していく。

 

 

「だめでち!やられる!」

 

 

その直後、伊58の背後で爆発が起き、彼女は大量の泡に包まれた。

 

 

「58!」

 

 

伊201は伊58の名を叫ぶが振り向く暇もなく、2本目のMk50が迫ってきた。

 

 

「あ」

 

 

直後、海上に2本目の水柱が上がった。

 

 

 

「こちらクリス!目標2隻を仕留めた!」

 

「了解!こっちもやってるけど、手応えはない!」

 

 

時雨と秋月姉妹達は爆雷を1個ずつばら蒔くが、手応えは感じられなかった。

 

 

「潜られたか!」

 

「今回の演習は相手の全滅判定だから1隻も残せないよ!」

 

 

彼女達は必死で呂500と伊401を探すが、既に潜られたのか、それとも爆雷の爆発音に紛れて隠れたか捕捉出来ないでいた。

 

 

 

当の伊401と呂500は……

 

 

「ふぅ……危なかった」

 

「201と58から連絡来なくなっちゃった」

 

「多分やられたかな?」

 

 

2人は爆雷の爆発深度より下の海中に待避して上の様子を伺っていた。

 

 

「どうする?」

 

「此処は一旦逃げて態勢を建て直そうか」

 

 

2人は態勢を整えるため、逃げる選択肢を取った。

 

 

「逃げよ!」

 

 

 

逃げようとしたその時…

 

 

 

ピィィィィィィィィィィィィィィィィィィン!!

 

 

 

何処からかアクティブソナーのピンガーの音が聞こえてきた。

 

 

「ソナー!?」

 

「ろーちゃん、何処から?」

 

「待って!」

 

 

呂500はソナーを使ってピンガーの音が聞こえてきた方向を探る。

 

 

 

「これは……魚雷!?」

 

 

 

呂500は自分達の背後の方向から魚雷の航走音が聞こえて来るのを察知した。

 

 

「401、後ろから魚雷来る!」

 

「魚雷!?でも対抗部隊は向こうに居るので全員じゃなかったの!?」

 

 

突然予想外の魚雷攻撃に2人の反応が遅れた。

 

 

 

その直後

 

 

 

 

海上に2本の水柱が上がった。

 

 

 

 

「あれ?」

 

 

 

時雨達は真下に落としていた筈の爆雷の爆発域から南に離れた位置で爆発が起きたのに違和感を感じた。

暫くしていると、気絶した伊401と呂500の2人が浮かび上がってくる。

 

 

「やられてるみたいだね」

 

「だがあの位置に私たちは爆雷なんて………」

 

 

明らかに不自然な撃沈判定に皆が疑問を感じた。

 

 

 

 

「ん?」

 

 

 

 

ふとクリスのソナーが新たな音源を捕捉した。

 

 

 

「新たな音源捕捉!」

 

「なんだって!?確か対抗部隊の数は4隻の筈!」

 

「敵か!?」

 

「だったら直ぐに配置を……」

 

 

 

本当に敵襲なのかと慌てる秋月達。

 

 

「待ってくれ!敵じゃないかもしれん!」

 

 

それを制するクリス。

ヘッドセットから聞こえてくる音に、クリスは聞き覚えがあった。

 

 

「聞いた事がある音だ…………音紋照合!」

 

 

クリスのソナー妖精が直ぐ音紋をコンピューターに打ち込んで、音源の正体を探る。

 

 

「艦長!音紋照合完了!信じられません………音源は我が海軍のS9G型加圧水型原子炉のものです!」

 

「なんだって!?」

 

 

その型式の原子炉を搭載している艦艇はクリスの知る限りでは1種類しかない。

 

 

「艦長!音源接近!」

 

「味方かもしれん。皆、エンジンを止めてくれ」

 

 

クリスは全員にエンジンを止めさせてから、自身のガスタービンエンジンの回転数を上げて独特の金切り音を意図的に起こさせる。

 

 

「もし友軍なら、この音で分かる筈だ」

 

 

 

暫くしていると、海上に気泡が湧き出てきた。そして、全身真っ黒な1隻の潜水艦が海上に堂々と姿を表した。

 

 

 

「潜水艦の艦娘かな?」

 

「でも見た事のない娘ですね」

 

 

秋月姉妹と時雨はその潜水艦の艦娘?らしき者の姿を知らない様子である。

 

 

「……………」

 

 

クリスはそんな彼女達を尻目にその潜水艦に近付いていく。

 

 

 

会話できる距離にまで近付くと相手が先に言葉を発した。

 

 

 

「よぉ。やっと会えたな兄弟」

 

「君は誰だ?恐らくはバージニア級の誰かだと思うが所属管制名は?」

 

「合衆国海軍第3艦隊潜水艦部隊所属 SSN-812 アリゲーターガー。よろしくな」

 

 

 

 

 

 

続く




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