艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第31話

「合衆国海軍第3艦隊潜水艦部隊所属、SSN-812 アリゲーターガーだ」

 

 

そう名乗った男、アリゲーターガーはクリスに手を差し出す。クリスは差し出された手を握って握手を交わす。

まさかクリスは合衆国海軍最新鋭の原子力潜水艦が自分と同じように姿を変えて、この世界に来ていたとは夢にも思わなかった。

 

 

 

「しかしお前、大西洋で姿消したと思ったら、こんな所に居たんだな。しかも俺と同じ人間の姿でな」

 

「大西洋?待て、俺は此処に来る前は大西洋に居たのか?」

 

「なんだよ、覚えてないのか?」

 

「すまない、この世界に来る直前の記憶が無いんだ。俺が此処に来る前の事を知っている限り手短で話してくれ」

 

 

その言葉にアリゲーターガーは真剣な表情となる。

 

 

「分かった。お前、つまりミサイル駆逐艦クリス・カイルはフロリダ沖のバミューダ諸島沖、所謂バミューダトライアングルで起きた沿岸警備隊警備艇が消息を絶った事故の調査と捜索のためノーフォーク港から出港した。それから1日半で現場近くに到達した時、沿岸にあるレーダーがお前をロストしちまったんだ」

 

「バミューダトライアングル……曰く付の海域か」

 

「それで政府と海軍は一週間後にお前の捜索のため急遽、第3艦隊所属だった俺をバミューダに派遣して案の定、浮上したらこの世界の南太平洋に移動してた訳だ」

 

「成る程。それでアリゲーターガー」

 

「ちょっと待て、俺の事はアリーって呼んでくれ」

 

「じゃあアリー、お前はこの世界に来てから今まで何をしてたんだ?」

 

「ちと長くなるからそれは後だ。で、お前さんは此処で何してるんだ?なんかこの辺一帯でアクティブソナーが飛び交ってたから息を潜めてたらお前のエンジン音と一緒に爆音が響いてきて、ヤバイと思って魚雷使ったんだが」

 

 

アリゲーターガーのその質問にクリスは答える。

 

 

 

「何って………演習だ」

 

「演習!?お前、あの悪魔共と闘ってたんじゃねぇのか?」

 

「あぁ」

 

「じゃあちょっと待て………俺が放った魚雷喰らったのって……」

 

「あぁ………味方の対抗部隊。そこに浮かんでる2人がそうだ」

 

 

指差した先に伊58と呂500の姿を見て、アリゲーターガーは青ざめた。

 

 

「ヤベェ……どうしよう!?」

 

「どうしようって言われてもな……」

 

「死んでないよな?生きてるよな?」

 

 

アリゲーターガーは気絶している2人に近付き、声を掛ける。

 

 

「多分死んではないだろ」

 

「いや。発射したMk48は原子力空母だって沈める威力がある。もし直撃してたなら怪我じゃすまないぞ!」

 

 

アリゲーターガーは2人の手首に指を当てて脈を確認する。

 

 

「良かった!生きてる!」

 

「じゃあ心配はないな。外傷もないし、気絶してるだけだな」

 

「良かったぁ………訳の分からない世界で敵作りたくないぞ」

 

 

2人の会話から完全に蚊帳の外になっている時雨と秋月姉妹。話しかけるタイミングが見つからない秋月姉妹に代わり見かねた時雨がクリスに声を掛けた。

 

 

「ねぇクリス、その潜水艦て味方?」

 

「あぁ味方だ。どうやら俺達が深海棲艦と闘ってると勘違いしたらしいんだ」

 

「成る程。だから魚雷で2人を撃っちゃったんだ」

 

「そうなんだよ少年!」

 

「少年っ!?僕はれっきとした女の子だよ!!」

 

 

アリゲーターガーは時雨の事をそう言い、時雨はショックを受けた。

 

 

「あぁすまない。俺はアリゲーターガー、クリスとは兄弟みたいなものさ」

 

「もう………僕は白露型駆逐艦の時雨だよ」

 

「秋月型駆逐艦の秋月です」

 

「照月です」

 

「初月だ」

 

「涼月です」

 

 

お互い簡単な自己紹介を手短に済ますと、演習を中止、直ぐに佐世保へと戻り、件の事を成田に報告する。

 

 

「成る程、話は分かった。今回は不幸な事故と言う事だな」

 

「はい。申し訳ありませんadmiral」

 

「気にしなくても良いさ。ところで君は話を聞く限りではクリスと同郷の様だが」

 

「はい。その前に私とアリー、時雨以外は人払いをお願いします」

 

「分かった。秋月、照月、初月、涼月」

 

「「「「了解」」」」

 

 

秋月型姉妹達は部屋から退出する。残されたクリス、アリゲーターガー、時雨。

時雨はクリスとアリゲーターガーの出自について成田に説明する。

 

 

「成る程、そう言う事だったのか」

 

「はい。黙っていて申し訳ありませんでした」

 

「いや構わない。君達の出自を隠した長門と横須賀の提督の判断は正しい。君達の事を政府や海軍の一部の連中が知ったら大変な事になるからな」

 

「はい。つまり私とアリゲーターガーはこの世界とは違った歴史を歩んだ未来世界から来たと言う認識で構いません」

 

「うむ………とんでもない事に関わってしまったな。差し支え無ければ君達の歴史の事について教えてくれないか?」

 

「はい」

 

 

クリスはこの世界で深海棲艦が現れ始めた1930年代頃からの歴史を、自身とアリゲーターガーが居た世界の歴史を年代と照らし合わせながら話していく。

 

 

「…………………そうか。やはり深海棲艦が居る居ないでこれ程までに歴史が変わろうとは」

 

「はい。私とアリゲーターガーはそんな世界の2020年代に作られた艦なのです」

 

「2020年代か………今から40年も先と言う事か。この事を知ってるのは?」

 

「まだ会った事はありませんが横須賀の提督、長門、大淀、陸奥、そして此処に居る時雨と成田提督だけです」

 

「そうか。今回の件については上には上手く話しておくし聞かなかった事にしておこう」

 

「ありがとうございます」

 

 

 

クリスは成田に礼を述べる。

 

 

 

「ところでアリゲーターガーと言ったかな?」

 

「はい」

 

「君はこれからどうする?大体の予想はつくが確認のために聞かせてくれ」

 

「はい。自分は合衆国大統領よりクリス・カイルの捜索と保護し合衆国本土に連れ帰る命令を受けています。クリスの発見と保護は出来ましたが、我々の合衆国本土に帰還させるまでが私の任務です。しかし現状はそれが非常に難しい状態ですので、私は帰還できる目処が立つまではクリスの保護と言う名目で任務を続けながら、クリスと行動を共にしたいと考えています」

 

「そうか。分かった、横須賀の長門には私から独自のルートを使って話をつけておこう。君は何も気にせずクリスと行動を共にしてくれ」

 

「ありがとうございます!」

 

 

アリゲーターガーは合衆国海軍式の敬礼で答える。

 

 

「さて、作戦開始まで日が無いぞ。明日から演習再開だ!」

 

 

 

 

 

続く




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