艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第33話

横須賀から佐世保まで空路にて運び込まれてきた物資を乗せた陸軍のトラックの車列は長崎県警により数時間のみ閉鎖された国道を走っていた。

 

 

「人も他の車も居ないな」

 

「警察と軍が事前に避難訓練と称して市民の殆どを講堂や公民館に避難させてるからな。居るとしたら野良猫か野良犬くらいだろう」

 

 

車列を先導している県警の白パトの直ぐ後ろから続いているジープに乗っているクリス達は窓の外から市街地を見ている。歩道には人の姿は無く、店も大半がシャッターが降ろされていた。

助手席に座る成田の言う通り、野良犬や野良猫以外に動いてる物は無い。

 

 

「まるでゴーストタウンだな」

 

「それも正午までだ。昼過ぎには元に戻るだろう」

 

 

そんな話をしていると、鎮守府へと辿り着く。

先導していたパトカーが脇道へ寄って停車すると、クリス達のジープが先頭となり、既に開いていた鎮守府正門から中へと車列が入っていく。

待機していた憲兵隊の誘導係が物資を乗せたトラックを鎮守府の中にある運動場へ一台ずつ誘導し、車体を並べていく。

そして、全てのトラックが入り切ると荷台に積み込まれていた物資が降ろされていき、鎮守府の工廠へと運び込まれていく。

 

 

「壮観だな」

 

 

工廠内に積み上げられた大量の木箱を見て成田は感嘆する。

 

 

「普段は空だからな此処」

 

「しかし、陽動作戦とはいえかなりの量だね」

 

「大は小を兼ねる……上も無いよりはマシだと思ってるんだな。だがこれだけあれば作戦中の物資不足に悩まなくて済む」

 

 

1時間掛けて運び込まれた物資の量は明らかに過剰とも言えたが、先の輸送作戦による恩恵は非常に大きい模様である。世界最大の貨物船3隻分となれば相当量の物資となるため、クリスは心中報われた気がした。

 

 

 

物資搬入後、明日の作戦に備えて休暇が言い渡され、各自は鎮守府に残って休息を取る。

クリスとアリゲーターガーは用意された部屋に居た。

 

 

 

「なぁクリス」

 

「ん?」

 

「お前、本当に此処に来る前の記憶は無いのか?」

 

「無い。お前に聞かされるまで俺がバミューダ海域で活動してたなんて知らなかったんだ」

 

「そうか。で、お前この世界に飛ばされてから今まで何してたんだ?」

 

「話すと長くなるぞ」

 

 

クリスはこの世界に来てから今までの事をアリゲーターガーに全てを話す。

 

 

「成る程。お前は運が良かったんだ」

 

「あぁ。こんな異邦人を快く受け入れてくれた横須賀の連中に感謝だな」

 

「でも、時々ホームシックとかにはならねぇのか?」

 

「さぁな…………元の世界の情勢がどうなってるか気になる事はあるがな。帰りたいとは今のところ思ってはないな」

 

 

意外な返答にアリゲーターガーは驚いた。

 

 

「へぇ、帰りたいと思ってると言うとおもったんだが意外と淡白なんだな」

 

「住めば都って言葉が日本にはある。適応してしまえばどこだって故郷さ。そう言うアリーはどうなんだ?」

 

 

クリスの質問にアリゲーターガーが懐からスマホを出して、一枚の写真を見せる。それは、アリゲーターガーが此処に来る前に滞在していた島の部族達と撮影した写真だった。

 

 

「お前と同じさ。この世界に来てから俺には2つの故郷が出来たんだ。此処に飛ばされて漂流してた所をとある島の族長達に拾われたんだ。皆、よそ者の俺を快く受け入れてくれたんだ。ほんの何週間かだが彼等と生活して、いつからかその島が俺にとっての故郷になっちまったんだ」

 

「で、実際に元の世界に帰るってなったらお前はどうするんだ?」

 

「さぁ………考えてないな。いつそうなるか分からないしな。お前はどうなんだ?」

 

「お前と同じさ。今のところ横須賀鎮守府が故郷みたいなものだからな。いざとなればこの世界で骨を埋めるつもりだ……でも俺たちは合衆国海軍軍人だという事実に変わりはない。たった2人だけだが21世紀の合衆国海軍軍人として行動する必要がある」

 

「分かってる。その時はその時になって考えればいい話だからな」

 

 

 

今後の事を考えつつも2人は結論を出せず、現状維持を第一に考えて行動するという結論に留まる。

 

 

 

 

そして一晩が経ち、遂に作戦開始日となる。

 

 

 

「0350、まだ暗いな」

 

 

夜明け前の真っ暗な佐世保飛行場にクリス、アリゲーターガー、時雨、秋月、照月、初月、涼月の7人が艤装を装備して集まっていた。

滑走路では昨日到着した海軍所属のC-130輸送機を改造した実験機の2号機がターボプロップエンジンを暖気運転させながら待機していた。

 

 

「提督、陽動任務部隊、出撃準備完了しました」

 

「うむ。では最後に確認するが君達の任務は、東シナ方面に集結している敵の潜水艦、水雷艇、並びに水雷戦隊と航空部隊の注意を引き付ける事だ。先行しているアリゲーターガーからの報告では今のところ空母機動部隊や戦艦部隊は確認されていないが不足の事態が発生する事もあり得る。各員は各々が持つ実力を充分に発揮できる対処できるよう、心して掛かるように。以上!」

 

 

成田の訓示に全員が敬礼する。

 

 

「よし!全員搭乗!」

 

 

今回の陽動任務部隊の指揮を任されたクリスの指示でアリゲーターガーを除く全員が2号機へと乗り込んでいく。

 

 

 

「各員、パラシュート装着」

 

 

 

今回の作戦用に開発された降下用パラシュートパックを全員が背中に装着、お互いにしっかりと装着できたか確認し終えると座席へと座りベルトを締める。

 

 

「間も無く離陸します!」

 

 

操縦と運用を担当する空軍所属の乗員達が機内の安全を確認し、後部ハッチを閉める。

すると、機体がタキシングを始め離陸態勢に入った。

 

 

『視界クリア。take off』

 

 

2号機はそのまま滑走路を走り、離陸していく。

続いて、国防空軍のF-4EJファントム、F-104Jスターファイターで編成された護衛戦闘機隊も作戦海域に向けて飛び去っていく。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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