艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第38話

「さて、此処からは潜水艦同士の勝負だ」

 

 

海中に身を潜めて、クリスからもたらされた北東方向に向けて主機関の回転数を絞って、ほぼ微速航行で前身していた。

既にアリゲーターガーの弾薬はMk48長魚雷が5本のみしか残っておらず、その他には潜水艦発射型のUSM-84ハープーンが4本のみで、実質的に使える兵装はMk48のみであった。

しかしアリゲーターガーは魚雷不足の中でも自信を保っており、現代科学の粋を集めて作られたバージニア級攻撃型原子力潜水艦としての性能を最大限に生かすべく、戦う事以外の感情を全て封印する。

 

 

 

 

(パッシブ、出力最大)

 

 

 

目視で見える海中の様子は流石は潜水艦の生まれ変わりというべきか、まるで昼間のように視認できる。それこそテレビでよく見られるスキューバダイビングのカメラ映像のように。アリゲーターガーを含めたこの世界の潜水艦の艦娘は皆同じ能力を備えている。

しかし音だけはどうしようもなく、水中は音や声で物事を伝える事が出来ない。こればかりはソナーを頼らざる得なかった。

 

 

 

(出てこい……悪魔め)

 

 

 

相手の動きがあるまでじっと待ち続ける。

 

 

(ん?)

 

 

暫くしているとアクティブソナーが前方方向から多数の推進音を捕捉し左目のHUDゴーグルに10個の光点が表示された。

前方に目を向けると、10本程の魚雷が向かってくるのが見えた。魚雷はアリゲーターガーへの命中コースではなく彼の真横を真っ直ぐ通り抜けていった。

直ぐ様、魚雷が向かってきた地点を確認する。ソナーと連接したコンピューターが魚雷が向かってきた方向から敵が潜んでいると思われる予想発射点の位置を分析した。

 

 

(12時方向、距離2000以内か)

 

 

事前に、鹵獲された敵魚雷の性能を纏めた報告書の内容をデータとして入力していたお陰で、敵とのおおよその距離は把握できた。

 

 

(機関停止)

 

 

敵に察知されないよう主機関を止めて、その場で停止する。

 

 

(ベント開け、無音潜航)

 

 

ゆっくりと音を立てないよう慎重に潜っていく。

潜っていく度に自身の艤装が水圧に押されていくが、特に異常はなくどんどん深度が深まっていく。

 

 

(ベント閉め)

 

 

ある程度潜って潜航を止めると、再びパッシブソナーで聞き耳を立てる。

 

 

(さぁ来い)

 

 

静かにヘッドセットで聞き耳を立てていると、何処からともなく音が聞こえてきた。

 

 

(距離100……近い!)

 

 

アリゲーターガーは近くに敵が居ると判断して、戦闘態勢を取る。魚雷発射管にMk48を装填する。

 

 

(その面を拝んでやるか)

 

 

海流に身を任せ、ほぼ惰性で距離を詰める。

距離が縮まる度に音がハッキリと伝わってくる。目の前に見える山のような巨大な海底岩に取り付くと、岩伝いに裏側へと回る。

 

 

(居た!)

 

 

岩の裏側にある窪みに影があった。

目を凝らして見てみるとそれは、白い肌に白い髪、そして鯨のようなデザインの禍々しい艤装を備えたソレは作戦前に写真で見た潜水悽姫に間違いなかった。

 

 

「フフフ……フフフ…………ニガサナイ………ニガサナイ……」

 

 

潜水悽姫はおぞましい笑いを発しながら、次の魚雷の発射態勢に入っていた。

 

 

(チャンスだ。この距離なら!)

 

 

アリゲーターガーは至近距離に見える潜水悽姫に向けて発射管を向ける。

 

 

(発射!)

 

 

装填されていた4発のMk48をトリプル発射した。

 

 

「!?」

 

 

潜水悽姫は発射音に気付いて直ぐ逃げようとしたが、直後にMk48は潜水悽姫の目の前で近接信管が作動、同時に4本の魚雷が爆発し強烈な水圧が襲い掛かる。

 

 

(やった!)

 

 

アリゲーターガーは敵の親玉である潜水悽姫を仕留めたと歓喜に沸く。

爆発によって発せられたバッフルズにより潜水悽姫の姿は見えなかったが4本のMk48の同時爆発による水圧は普通の潜水艦や軍艦なら木っ端微塵に吹き飛ぶ程の威力がある。

 

 

そう……普通の潜水艦に限って言えばである……

 

 

(!?)

 

 

バッフルズの中から細長い手が延びてくると、アリゲーターガーの首を掴んだ。

 

 

「ヨクモ………ヨクモ……ヤッテクレタ………ニガサナイ!!」

 

 

バッフルズの中から姿を見せた潜水悽姫。

先程まで装着していた艤装はなく、悽姫自身には殆ど傷はなかった。

 

 

(コイツ!自身の艤装を盾にしたのか!)

 

「シズメ…シズメ…シズメ!シズメ!シズメ!シズメェェェ!」

 

 

潜水悽姫はアリゲーターガーの首を両手で締め付けて押し倒し、猟奇的な形相で両手に力を込める。

 

 

「ガァッ!」

 

 

とても生物とは思えない力に、アリゲーターは呼吸が出来ず、何とか体を動かして激しく抵抗するが、潜水悽姫の力は凄まじく、このままだと首の骨まで折りそうな勢いであった。

 

 

(何か……何か……武器は?)

 

 

薄れ行く意識の中でもアリゲーターガーは何とか状況を打開しようと武器になりそうな物を探し、右足の太ももに巻き付けていたナイフシースからコンバットナイフを引き抜き、潜水悽姫の右腕に力一杯突き刺す。

 

 

「ガァッッ!!」

 

 

痛みから一瞬だけ力が抜けたのを見計らい首を締め付けていた両腕を振り払い、続けて潜水悽姫の首にナイフを思い切り突き刺す。

 

 

「アガァァァァァァ!!」

 

 

傷口から血とも思えないような真っ黒な液体が吹き出して海中の海水と混ざり瞬く間に広がっていく。アリゲーターガーは液体を浴びながらも潜水悽姫の息の根を止めるため、首に突き刺したナイフを傷口を広げるように払いながら引き抜いた。

 

 

「ガァッ……ガァッ……ガァッ……」

 

 

流石の潜水悽姫とはいえと、それ程の攻撃を受ければ無事では済まず、徐々に力が抜けていき、やがて動かなくなった。

 

 

(手強かった………)

 

 

 

潜水悽姫を仕留めたアリゲーターガーはその場から離れると、クリス達との合流地点へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

それから数時間後

 

 

クリス達と無事に合流したアリゲーターガーは皆に事の顛末を説明していた。

 

 

「そうか。そんなに強かったのか」

 

「あぁ……もう痣が出来てる」

 

 

アリゲーターガーの首には潜水悽姫の両手で締め付けられた時に出来た痣があった。

 

 

「でも初めてなんじゃないかな?深海棲艦、しかも姫級をこんなナイフで倒すなんて」

 

 

時雨はアリゲーターガーのナイフを手に取る。

 

 

「連中も生き物って事がよく分かった。接近戦になればこう言う原始的な武器でも倒せるのが分かっただけでも収穫さ」

 

 

そんな話をしつつ、クリス達は佐世保への帰路に就いた。

 

 

 

 

続く

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