艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
作戦開始日となり、やはり何時もの如く夜中の皆が寝静まった頃、鎮守府から少し離れた国防海軍横須賀基地の楠ヶ浦地区に置かれている国防海軍第2潜水隊群の潜水艦が停泊している岸壁にクリスとあきつ丸の姿があった。
「これが目的地までの移動手段か」
「自分は潜水艦に乗るのは初めてであります」
2人の目の前には今回の作戦で2人を嫁島近海まで輸送する極秘任務を受けて海軍のうずしお型潜水艦『たかしお』が停泊しており、モーター駆動用の電池の充電のためディーゼルエンジンが駆動しており、排気口から排気煙が吐き出されている。
「横須賀鎮守府の特務の方ですかな?」
そこへ、海軍の作業服とキャップを被った初老の男性が声をかけてきた。
「はい」
「たかしお艦長の松原2佐です」
たかしお艦長と名乗ったその男は2人に敬礼する。
「今回はよろしくお願いします」
「こちらこそ。では艦へご案内します」
松原に連れられ2人はたかしおに乗り込む。甲板のハッチから梯子を伝って中に入ると、狭い廊下を身を屈めながら艦首方向へ向けて奥へ奥へ進み、行き着いたのは魚雷発射管室だった。
発射管室の奥には魚雷を装填する発射管本体、その後ろ側に巨大なMk37魚雷が鎮座しており、その魚雷のすぐ側に急造のベッドが設けられている。
「急な話だったもので、此処しか用意出来ませんでしたが」
「これで充分です。ありがとうございます」
2人は松原に礼を述べる。
松原は通常の業務のためその場を離れ、2人は自身のベッドに荷物を置いて腰かける。
「さて、今日の夜まで暇だ。寝ておくか」
「そうですね。果報は寝て待てですからな」
2人は時間まで休息のため、固いベッドの上で眠りに就いた。
それから丸半日……………
「時間か」
予定地点に近くにまで到達していたたかしお。
戦闘配置の赤ランプで艦内が真っ赤に照らされている中、発射管室に居た2人は酸素ボンベを背負い、レギュレータを口に咥えて酸素供給を開始する。
「装填口開きます!」
たかしおの乗員が2門の装填口を手動で開けると、そこへ2人が入る。装填口の蓋が閉められると、発射管内に海水が注入されていく。
「発射管開け!」
魚雷発射管が開かれると発射管内と海中が繋がった。
2人は同時に発射管から海中へ這い出ると、海面に向けて浮上した。
別の発射管から放たれた箱が浮かび上がってくると、2人は箱の蓋を開けて中から小さく折り畳まれたゴムボートと小型の推進用エンジンを取り出し、ボートボ膨らませて乗り込む。
「現在位置の確認だ」
クリスはバックパックから防水袋から折畳んでいた海図とコンパス、六分儀を取り出して現在位置を確認に入った。
「現在位置は媒島の西30キロ地点。目的地の嫁島までは南東50キロ」
「中々の距離ですな」
「あぁ。だがボートで飛ばせば直ぐだし、上手く海流に乗れれば到着時間を短縮できる。行くぞ」
「はい」
エンジンを始動させ嫁島に向けて針路を取った。
数時間掛けて何とか嫁島の北端にまで辿り着いた。砂浜から無事に嫁島に上陸を果たし、ボートを近くの岩場に隠してから準備に入る。
バックパックから防水袋に仕舞われていた迷彩服と銃、その他のベルトやサスペンダー、ブーツを取り出して装備する。
「行くか」
ナイトビジョンを装着して2人は島の南端を目指して闇夜の中、移動を開始した。
そして夜が明けて、朝日が登り辺りを照らし出す頃
「あれか」
上陸から一晩中移動し続け、島の中部に到達すると、島の南端を見渡せる位置から例の黒い靄が見える。
「写真の通りだ。本当に真っ黒だな」
「まるでこの世の終わりみたいですな」
島の南端を覆っている黒い靄は煙のように動いている訳でもなく、また風によって流されている訳でもない不気味なものだった。
「よし、先ずは写真だ」
クリスはバックから写真を取り出して、靄を撮影する。
「写真はこれでいい。次はコイツの出番だな」
するとクリスは次にある物を用意した。
「なんでありますか?」
「コレか?まぁ現代のテクノロジーが産み出した機械仕掛けの鳥さ」
クリスが用意したのは小型の無人偵察機であるスキャンイーグルだ。小さい機体は持ち運びが出きる程に小型で、優秀な光学センサーや赤外線センサーを搭載し、陸上や艦船などの何処からでも運用できるのが特徴である。
機体に電源を入れて、センサーとリンクしているタブレットを起動させると、クリスは機体を紙飛行機の要領でスキャンイーグルを空に向けて放り投げるように飛ばした。
「さて」
両手でタブレットを使いスキャンイーグルを操作し、黒い靄の偵察を始めた。
続く