艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第54話

作戦開始から、数時間が経過し作戦は順調に進んでいた。

釣浜と宮之浜から上陸した日米連合の上陸部隊は敵の抵抗に逢いつつも三日月山と旭山を制圧し、夜明山の制圧に向けて行動している。

 

 

「以外と早かったな」

 

 

地上戦から僅かな時間で父島の北部の一帯を確保し敵の分断に成功したのは敵の地上戦力が少なかった事が幸いしていた。しかし、事前の偵察では父島には概算で1個師団規模の敵地上部隊が確認されており、今まで遭遇してきた敵の殆どは小隊規模の部隊による散発的な奇襲ばかりであり敵の主力とはまだ接触できていない。

上空は米海兵隊のRF-4J、ハリアー、OV-10ブロンコ、そしてそれらの偵察機の背後から超低空を飛行するクリスのスキャンイーグルによる島内の偵察を行っている。

 

 

「あれ程の敵が何処に隠れてるんだ?」

 

 

今のところ敵からの接触はない。

しかし、クリスには一抹の不安があった。

 

 

「どうしたんだい?」

 

 

響が問いかけてきた。

 

 

「あぁ。何でもない……」

 

 

そうはぐらかしたが、クリスの心中にあったのはベトナム戦争の事だった。ジャングル特有の木々に覆われた森林は空からの偵察では敵の発見が難しく、地上部隊がゲリラ戦に苦戦した戦訓がある。

父島も例に漏れず山がちで複雑な地形により大規模な部隊の進撃を阻み、敵が姿を隠せる場所が無数にある。

 

 

「まさかな」

 

 

 

 

その頃、夜明山を目指している日米連合部隊は森林の中を移動していた。

 

 

「クソ!またか!」

 

 

森林内を移動している海兵隊所属のM113装甲兵員輸送車は木や草をなぎ倒しながら進んでいるが、複雑な地形と敵が仕掛けたと思われる石やコンクリート製の障害物に阻まれて思うように前進できていなかった。

 

 

現在日米連合部隊は夜明山攻略を目指しており、その山を占領できれば父島内の敵を分断し補給路遮断による敵地上部隊の行動を抑える事ができる。

しかしこれには1つの大きな障害があり、それは父島を含めた小笠原諸島の島には深海棲艦に占領以前に国防軍の前身である旧陸軍第109師団と旧海軍が建設した父島要塞の存在であった。

父島要塞には旧陸軍が建設した砲台、海軍が建設した高射砲台と平射砲台、トーチカや地下施設が至るところに建設されており、父島を占領していた深海棲艦により利用されているとされており、それを攻略する必要がある。

 

 

日米連合部隊は要塞攻略のため部隊を分けており、着実に要塞に近付きつつある。

 

 

 

「そろそろだな。各部隊は敵からの攻撃ならびに奇襲に注意せよ!」

 

 

 

地上部隊は要塞と目と鼻の先にまで到達。

釣浜と宮之浜に待機していた、海兵隊砲兵連隊のM198榴弾砲とM101榴弾砲による砲撃が開始された。

 

 

「来るぞ!」

 

 

直後、砲弾は地上部隊の目の前に見える夜明山に降り注ぎ、山に大量の黒煙が上がる。

砲兵による砲撃は続き、夜明山全体が炎に包まれ、やがて黒煙が辺りを覆い尽くす。

 

 

「前身!」

 

 

砲撃が終わると同時に地上部隊は再び前身を始めた。

 

 

 

しかし、その直後………

 

 

「伏せろ!」

 

 

辺りを一帯に爆発が起きた。夜明山の要塞からの反撃が始まった。

 

 

「やっぱり奴らあの山を使ってたか!車両前に前進!」

 

 

歩兵は慌ててM113やその他の車両に戻り、車両を盾に前進する。

榴弾は爆風と破片を撒き散らして歩兵を攻撃する砲弾だが装甲車の装甲なら破片は通さない上に、車重が重いため爆風による横転の心配は殆どないが、ジープやトラック等の軽車両や汎用車両は横転したり吹き飛ばされたりしていた。

 

夜明山からの砲撃に応えるように、砲兵連隊も反撃し双方の砲撃による撃ち合いが行われる。砲撃に晒されながらも歩兵を乗せた装甲車は前進を続け、国防陸軍の74式戦車も要塞に向けて砲撃しながら前進する。

空からはイントルーダーとファントムによる爆撃が加わり夜明山一帯は爆風と破片が飛び交う非常に危険な状態になってしまった。

 

 

 

「でも陽動のためとはいえ、ここまでやるかね?」

 

「陽動って言うのは敵の注意を引き付けるための行動だ。派手なら派手な程いい。本命はこっちだからな」

 

 

 

クリスが言う本命とは?

 

 

 

「アリー」

 

「ん?」

 

「後を頼む」

 

「あぁ」

 

 

クリスはそう言うと指揮所を出ると、ヘリポートの一角に向かう。そこには1機の国防陸軍のUH-1Bヘリコプターが駐機しており、そこにはこの作戦には参加していない筈のあきつ丸とフードを被った1人の艦娘の姿があった。

 

 

「あきつ丸、準備は?」

 

「はい!自分は何時でも!」

 

「よし。そこに居るのがあきつ丸と同じ部隊の……」

 

「揚陸艦『神州丸』だ」

 

 

あきつ丸と同じ陸軍所属の数少ない艦娘である『神州丸』。彼女はあきつ丸と同じ部隊に所属する艦娘であり彼女と行動を共に出来、あきつ丸にとっても信頼できる戦友でもある。

 

 

「神州丸殿、彼の事は……」

 

「知っている。クリス殿、よろしく頼む」

 

「気を遣わせるが、よろしく頼む」

 

「あぁ」

 

 

2人は軽く握手を交わす。3人は早々だが作戦会議に入った。

 

 

「今回の我々が実行する作戦は夜明山の父島要塞内にある地下敵司令部の制圧だ。敵の意表を突くためヘリを使い背後から潜入、指揮をしていると思われる泊地凄姫の制圧が目的だ」

 

 

 

そう、この3人の目的はオ1号作戦に於ける深海棲艦の上位個体に対する特殊作戦全般であり、今回は父島の泊地凄姫の制圧だ。

無論、本来のオ1号作戦ではあきつ丸と神州丸のみで行われる筈だったが、作戦前に長門と別地域で作戦を指揮している提督の根回しによりクリスも急遽この部隊のメンバーこの作戦に加わったのであった。

 

 

 

「一応我々の戦力は神州丸殿の陸軍妖精で編成された特務部隊が担う事になっていますが、クリス殿からも戦力の提供があるとか」

 

「あぁ。少人数だが……出てきてくれ」

 

 

するとクリスのポケットから母島での任務で登場した、Sealsチームが姿を表した。

 

 

「ウチの精鋭だ」

 

 

Sealsチームは神州丸に向かって敬礼する。

 

 

「あきつ丸、彼らの実力は?」

 

「心配は無いであります。自分のこの目でみております」

 

「あきつ丸がそう言うなら大丈夫か。よろしく頼む」

 

 

神州丸はチーム一人一人に握手する。

 

 

「さて、戦力は揃った。後は時間だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く




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