艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第58話

小笠原諸島全域を奪還の後、父島に設置された前線基地は軍事基地としてはまだ機能しているとは言えなかった。艦娘の運用を前提とした軍事施設『鎮守府』は従来の海軍基地とは違い、艦娘専用の工廠や機材、訓練施設、指揮施設が必要となってくる。

 

父島唯一の港である二見港は先の作戦で壊滅してしまっており、一足早く復旧した洲崎飛行場に鎮守府が仮設置されており、伊勢と日向、明石が乗り付けてきた3機のC-130の特殊改造機の1号機は司令部(以降 EC-130H)、3号機は工廠(以降 CP-130)、2号機は宿舎(以降 C-130H+)は目下、父島鎮守府(仮)として機能していた。

 

 

「あぁ~………寒い!!」

 

 

EC-130Hの機内にある作戦室内に設置された執務室で書類整理していた伊勢は機内を冷やしている冷気に苛立ちを見せていた。

 

 

「しょうがないだろう。電子機器の冷却にエアコンの温度を通常よりも低く設定されているんだからな」

 

 

作業を手伝っていた日向の言う通り、EC-130Hには高度な指揮通信システム、レーダーシステム、観測装置が設置されている関係で、熱暴走を防ぐのと、全ての機器の保全のため冷却温度はかなり低く設定されている。

 

 

「分かってるけどさ~……私ら肉や魚じゃないんだからさ」

 

「なら外で作業するか?今の時間なら主翼の下が影になってる」

 

「こんな体で熱い外に出たら夏バテ起こすわよ!」

 

「なら此処で我慢するんだな」

 

 

全然納得が行かない様子だが伊勢はそのまま黙って仕事に取り掛かる。

 

 

「そう言えば本土から来る応援の娘達は?」

 

「もう直ぐ到着の予定だ。今クリスが迎えに行ってる」

 

 

 

 

 

その頃、クリスは小笠原諸島沖で待機していた。

 

 

「そろそろだな」

 

 

クリスのレーダーには本土がある北の方角から接近してくる光点が映っていた。

 

 

『こちらレスキューナイト、お客様が来ました』

 

「了解」

 

 

ヘリから映像がリアルタイムで送られてきた。

映像には、最上を先頭に白露、時雨、春雨の4隻が陣形を組んでいるのが映っている。

 

 

「レスキューナイト、丁重にお迎えだ」

 

『了解』

 

 

クリスからの命令を受けたMH-60Sナイトホーク多用途・補給支援ヘリコプターは、普段使用している1号機のMH-60Rのように対潜哨戒機ではない。今回この機体を飛ばしている理由は、伊勢からの指示で迎えに出たクリスが彼女達の航行ルートの哨戒任務を担っており通信が制限されているため、彼女達への連絡員として派遣される副長妖精を載せているためであった。

 

 

 

『間も無く目視圏内』

 

 

 

機体を目視で捉えるエリアに入ると、彼女達に向けての機体左側面を向け、機長がサイドドアを空け発光器を使って信号を送る。

 

 

「えぇと……『コ・レ・ヨ・リ・キ・カ・ン・へ・チャ・ッ・カ・ン・ス・ル。キョ・カ・ヲ・モ・ト・メ・ル』だって。どうする最上?」

 

 

発光信号を確認していた時雨が最上に問いかける。

 

 

「勿論、許可するよ」

 

 

最上の通信妖精が発光信号で返信した。

 

 

『チ・ャ・ッ・カ・ン・ヲ・キョ・カ・ス・ル。聞いたな?』

 

『了解』

 

 

操縦士はナイトホークを最上に向けて接近させ、一度上空を旋回して後部から誘導員の指示に従いながら最上の飛行甲板へ接近し、直上でホバリングする。

 

 

「うわぁ!凄い風だね」

 

 

ヘリが産み出すダウンウォッシュは凄まじく、最上の妖精達は吹き飛ばされないように周囲の艤装に捕まりながら、初めて行うヘリの着艦作業を進めていく。

 

 

『本当に大丈夫なのか?コイツの重さは水上機とは訳が違うんだぞ』

 

『一応、甲板の強度は必要最低限はあるらしい。そっとやれば大丈夫さ』

 

『RASTが無い艦に着艦して即海水浴はゴメンですな』

 

 

機体はゆっくりと高度を下げていき、ランディングギアが甲板に触れた瞬間、一気にエンジン出力を落として機体は甲板へ着艦した。最上の左腕に水上機よりも重い機体を受け止めた飛行甲板の重さが一気にのし掛かった。

 

 

「重いっ!?」

 

 

普段よりも重くなった甲板を傾けないように何とか腕に力を入れる最上。待機していた妖精達は機体を固定するため、ランディングギアにチェーンを巻き付けてしっかりと甲板に固定していく。

 

 

『touch down!oll green』

 

『何とか海水浴はしなくて済みましたね』

 

『じゃあ行こうか』

 

 

再びサイドドアが開かれると、クリスから派遣されてきた副長妖精が機体から甲板へ降りる。

 

 

「初めましてかな?」

 

「えぇ。クリス・カイルから派遣されてきました副長妖精です」

 

 

副長妖精はアメリカ海軍式敬礼をし、最上は国防海軍式敬礼で返す。

 

 

「さて、付近の海域の状況についてですが……」

 

 

副長妖精は最上達に付近の海域の状況と、合流地点の詳細について説明する。

 

 

「了解。態々ありがとうね」

 

「いえ」

 

 

 

彼から説明された通りの地点に向けて最上達は変針、クリスとの合流を目指して、1時間もしないうちに、最上達は無事にクリスと合流した。

 

 

「久し振りだねクリス!」

 

「いつ以来だっけ?」

 

「あぁ。横須賀以来だな」

 

 

最上達は久し振りの再開に喜んでいた。

そんな中、白露がクリスの顔を見て何かに気付いた。

 

 

「ねぇクリス、暫く見ない間に凛々しくなったんじゃない?」

 

「そうか?」

 

「うん。歴戦の戦士みたい」

 

「歴戦の戦士か………まぁ、詳しい話は島で聞こう」

 

 

 

クリス達はそのまま父島へ。そして父島に上陸すると父島鎮守府(仮)が置かれた洲崎飛行場へと案内する。

 

 

「あれが鎮守府?」

 

「あぁ。今の所は仮だがな」

 

 

EC-130Hの機内へ最上達を通し、機内の作戦室へと入る。

 

 

「あ、来た来た」

 

 

丁度仕事を終えていた伊勢が出迎えてきた。

 

 

「横須賀から遠路遙々ご苦労様」

 

「うん。でも、此処寒くない?」

 

「しょうがないのよ、精密機器に囲まれてるんだから」

 

 

軽く挨拶を済ませてから、隣の2号機へ案内する。

 

 

「一応、此処が宿舎代わりだ」

 

「此処が?」

 

 

2号機の貨物室の床には布団と私物が散乱している。宿舎とはいえ航空機内に壁は作れないため機内にプライベート空間は存在しない。

 

 

「今は我慢してくれ。風呂やトイレは別だからな」

 

「まぁ、雨風凌げれば僕は良いかな?」

 

「贅沢は言ってられませんしね」

 

「じゃあ場所取りだね」

 

 

 

 

 

 

続く




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