艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第59話

父島二見港で鎮守府の建設が進められていく中、洲崎飛行場の父島鎮守府(仮)では、準備が整い次第、現状可能な任務が開始されていく。

艦娘が担っているのはなにも深海棲艦との戦闘だけではなく、前線では自前で可能な限りの資材や資源を確保するための遠征任務がある。

 

今回その遠征任務は南鳥島沖にあるレアアースとレアメタル、メタンハイドレート等の貴重資源を確保する事だった。

南鳥島沖の海底資源はクリスが居た世界では2010年代に発見されているが、この世界では既に発見されており採掘もされていたが、深海棲艦との戦争が激化した以降は採掘が止まってしまっている。

 

 

「だが資源の宝庫とはいえ、どうやってレアアースやレアメタルとかを取り出すんだ?」

 

「そこは心配ないわ。実は南鳥島沖には、今は稼働してないけど、採掘プラントがあるのよ」

 

 

そう言うと伊勢は一枚の写真を取り出す。

写真には海上に建設された採掘プラントが映っている。採掘プラントにはクレーンや何かしらの機械が搭載されており、よく見られるタイプのプラントに見える。

 

 

「そのプラントは今は稼働してないけど機械そのものは生きてるから、それを操作して可能な限りの量を持ち帰ってきて欲しいの。それに噂だけど、今世界にある放棄された採掘プラントに良くない事を考える輩が居るから、その点でも注意してね」

 

「了解した」

 

 

遠征任務を受け取ったクリスは時雨と白露の2人を連れて父島から出発した。

 

 

 

「なぁグレ、白露」

 

「ん?」

 

「例のプラントを敵が乗っ取ってるって事は考えられるか?」

 

「何とも言えないね。有り得るかもしれないし、またその逆戻り然り」

 

「最悪の事も想定しておこう」

 

 

3人は南鳥島までのルート上に厳重な警戒網を敷いて航行し、道中は敵に遭遇する事なく、無事に南鳥島沖の採掘プラントにたどり着いた。

 

 

「じゃあ白露、警戒頼むよ」

 

「任せて。何かあったら信号弾を上げるから」

 

「じゃあ時雨、俺が先に行くから機械室に案内してくれ」

 

「うん。任せたよ」

 

 

白露をプラント周辺の警戒に残し、クリスと時雨は階段を伝ってプラントを上がっていく。万が一に敵が占拠している事を考えてクリスは艤装を装備した状態でM9を両手で構えながら時雨の案内で機械室へと上っていく。

 

 

「ん?」

 

 

機械室直下のエリアにたどり着くと、ある物を発見した。

 

 

「どうしたの?」

 

「見ろ」

 

 

そこには大量の缶詰めの空き缶に使い古しの鍋にガスコンロ、そしてコーヒーが残っているコップがあった。

 

 

「誰か居たのかな?」

 

「いや、『居た』じゃなくて『居る』のが正しいな。このコップのコーヒーはまだ暖かい。それにこの缶詰めの空き缶はまだ新しい上に食べ掛けだ」

 

「じゃあ今も……」

 

「あぁ。一度撤収するか」

 

 

その場は危険と判断し撤収しようとした瞬間……

 

 

「動くな!!」

 

 

その声と共に、20人以上の男達が一斉に姿を表した。全員、AK47を手にしており銃口を向けてきた。

 

 

「銃を捨てて跪け!」

 

 

一斉に銃口を向けられたクリスは手にしていたM9を捨ててその場で跪き、時雨も同じように跪く。

 

 

「何者だ?」

 

「黙れ!何も喋るな!」

 

「…………」

 

 

男達はクリスのM9と時雨の砲と魚雷を回収し、2人を上の階にある機械室へと連行していく。

 

 

(白露、聞こえるか?白露)

 

 

クリスは回りに聞こえない声で、電源が付いたままのインカムで白露を呼び掛ける。

 

 

『聞こえるよ。どうしたの?』

 

(不味い状況だ。プラントに不法滞在者が居て、捕まった)

 

『え!?大丈夫なの?』

 

(今の所はな。だが俺と時雨は武器を取られて抵抗が出来ない)

 

『分かった。私が注意を引き付けるから、脱出出来そう?』

 

(あぁ。俺が合図するから、その時に何とか注意を引いてくれ)

 

『任せて』

 

 

クリスは合図を出すタイミングを伺う。

そして最上階の機械室にたどり着く寸前、男達の歩みが止まり、リーダー格が無線で誰かに話しかけ始めた。

 

 

「ボス、侵入者確保。どうやら正規軍の奴らみたいです」

 

『分かった。そのまま連れてきて』

 

(女の声?)

 

 

 

無線から聞こえてきたのは女の声だった。

どうやら男達の上にはボスと呼ばれている女性が居る模様だった。

 

 

「来い」

 

 

武装していた男達が下がると、リーダー格の男が2人を伴って機械室へと通す。

重い鉄製の扉が開き中に入ると、其処に居たのは黒髪の女だった。女はクリスと時雨と目を合わせて、立ち上がった。

 

 

「ようこそ、我がシャングリラへ」

 

 

その一言からボスはこの女である事が分かる。

 

 

「シャングリラか………にしては趣味が悪いな」

 

「それはご愛敬って事で。2人のお名前を聞かせて貰っても?」

 

「いきなり銃口を向けてくる連中に名乗れってのもな」

 

「それについては謝罪するわ。このシャングリラを守るためだもの。それにそちらだって銃を持ってたでしょ?お互い様」

 

「成る程。銃口を向けた事については置いとくとして、まずはそちらが名乗るのが礼儀だろ?」

 

「それもそうね。私はこのシャングリラの船長………まぁボニーとでも名乗っておこうかしら」

 

「船長にボニー……女海賊アン・ボニーだな」

 

「よく知ってるじゃない。私、彼女の事は好きなのよ」

 

「そうか?俺はドレーク提督が好きだな。世界初の世界一周をやり遂げたって話は憧れるね」

 

 

 

そんな話をしている中でもクリスは自分の名前を名乗ろうとはしなかった。相手に出来るだけの情報を与える必要がないからである。

 

 

「ところで話は変わるがボニー、あんた達はどうして此処に?」

 

「大国を離れて新天地と一攫千金を求めてね、流れ着いたのが此処だった訳。此処は雨風凌げるどころか、豊富な海底資源がある上に大国の主要航路。此処に眠る海底資源は中々上質な上に量も豊富………どういう事か分かる?」

 

「大国の主要航路と海底資源………資源売り?」

 

「そう。そんな凄い資源を目の前にして黙ってみてるなんて勿体無いわ。ただの鉱物や鉄が億単位のお金になるのよ」

 

「だが此処は日本の所有物である上に、エネルギー資源の取り引きは産出される土地や海域の所有権を持つ国の許可がなければ出来ないぞ」

 

「取り引きはなにも表だけじゃないわ。表の取り引きだとやれ法律やら税金やら許可やらで私たちに儲けなんてほぼ無いに等しい。ならそれが必要がない裏でやれば良いのよ。簡単な話でしょ?」

 

「そんな資源を誰が買うんだ?」

 

「資源を欲しているのはなにも国だけじゃないわ。国もそうだけど1個人やあらゆる組織が海底資源を欲していていて私たちは交渉次第で売ってる。お陰でこんなに儲かっちゃった」

 

 

部屋を見回すと、採掘プラントには似つかわしくない高級品が所狭しに並べられており、彼女の身の回りも高級ブランド物で固められている。

 

 

「成る程、どうりで身なりが良い訳だ。で、アンタ達は俺達に何を?」

 

「あなた達は私たちにとってはお客様。私たちと取り引きしない?」

 

「取り引き?」

 

「そう。あなた達艦娘でしょ?艦娘って確か運用コストが物凄く掛かる上に資源も馬鹿みたいに消費する………そこで私たちはあなた達の力になりたいの」

 

「力?」

 

「資源は安くは無い上に、あなた達に回ってくる量は限られる。私たちなら無限とまではいかないけど、好きな量を好きなだけ売ってあげようっての。この上ない良い話でしょ?」

 

「…………………」

 

 

クリスは何も言わない。

海底資源は確かに必要だが、違法に取り引きされていると知った以上、そんな話に乗る訳にはいかない。

 

 

「断るなら断るで良いけど、私の社員達がお連れをね……」

 

「何っ!?」

 

「彼女を客室にご案内してあげて」

 

「はっ!」

 

 

するとリーダー格の男が時雨を何処かに連れていこうとする。

 

 

「大丈夫。手荒な事はしないけど、それはあなたの返事次第よ」

 

「クリス!僕の事は構わないから、そんな話なんて!」

 

 

このまま断れば時雨の身に危険が及ぶのは確実だった。そこでクリスが取った判断は………

 

 

 

「…………返事は直ぐでなくて良いんだな」

 

「クリス!?」

 

「えぇ。私たちは幾らでも時間があるわ、お客に考える時間を持たせてあげるのも商売よ」

 

「連れを人質にとって商売も何も無いだろうに……」

 

 

クリスは判断を先延ばしにして、その間に何とか対策を立てようと考え、取り敢えずその場は彼女達の意に従う事にした。

 

 

 

 

続く




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