艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第65話

時雨に誘われた日の次の日の朝、クリスは滑走路の端に居た。

 

 

「クリス」

 

 

そこへ時雨が走ってきた。

 

 

「来たか。それで、何をするんだ?」

 

「うん、実はクリスと島内のパトロールを兼ねてドライブしたくて」

 

「ドライブ?車はどうするんだ?」

 

「もう用意してあるよ」

 

 

時雨に促されるように歩き出すと、CP-130の側にある工房が設けられたテントへと案内される。

 

 

「明石さん、準備は?」

 

「良いわよ。バッチリ整備士たわ」

 

 

そこには作業着姿の明石と、以前に時雨が購入したスカイラインジャパンが停められていた。

 

 

「おいおい、いつの間に持ち込んだんだ?」

 

「昨日の夜中にね。本土から送ってもらったんだ」

 

「軍の輸送機に載せてか?」

 

「うん。鎮守府のガレージって屋根も壁も無いし、何時帰れるか分からないからね」

 

 

よく見てみると時雨のスカイラインのタイヤは金色のホイールが装着されており、マフラーも新しくなっている。中を見てみると運転席のシートはバケット、シートベルトは4点式、車内をロールケージ、ステアリングホイールも交換されており、本格的に仕上げられている。またコンソールにはマグネット式赤色回転灯にダッシュボードには無線機が備えられており、さながら覆面車両である。

 

 

「パトランプに無線機まで着けてるのか?」

 

「うん。僕たちが使う車って無条件で緊急車両扱いになるし、いざって時の連絡用にね」

 

「携帯電話とかは持たないのか?」

 

「携帯電話?……もしかして最近出たばかりの鞄みたいな肩掛け式?」

 

「ん?携帯電話って知らないのか?こんなヤツ」

 

 

クリスはスマホを見せる。

 

 

「何だいコレ?これは電話かい?」

 

「電話も出来るしパソコンみたいに調べものも出来る」

 

「パソコンてあのパソコンの事?凄いね」

 

「(……そう言えば今は70年代だったな。スマホも携帯も知らないのは無理ないか)

 

 

そんな話をしながらスカイラインに乗り込む。運転席には勿論であるが持ち主の時雨、助手席にはクリスが乗り込む。

時雨はサングラスを掛けて、ステアリンググローブを装着すると新品のステアリングホイールに手を添える。

 

 

 

「さて行くか」

 

「うん」

 

 

エンジンを掛けてアクセルを数回踏んでエンジンを空ぶかしさせてから、車を走らせた。

飛行場から出ると二見港直通の道路を走る。

 

 

「もう整備してあるんだな」

 

 

洲崎飛行場から二見港へ続く道路は既にアスファルトで固められており、その道路を軍のトラックやジープ、そして本土から帰ってきた島民達の車や自転車が走っている。

 

暫く走っていると、市街地へと出た。市街地は軍の施設部隊や民間の土木業者が戦闘で破壊された家屋の残骸の撤去作業をしており、まだ手付かずの所はあるが、復興は日を進む毎に進んでいるのが分かる。特に港近くの地区は既に8割が復興しており、市役所も業務の一部を再開している。

 

 

 

 

「そう言えばどうして俺たちがパトロールに駆り出されたんだ?」

 

「なんでも本土から警察官が派遣されてるけど、数人しか居ないし、ここ数日で疎開していた人と民間企業の人に加えて移住者も増えたから人手が足りないんだって」

 

「MPが居たろ?」

 

「警務隊は管轄外。それに僕らは見た目が民間人に近いし市民に威圧感を与えないって事で国から例外的に、警察と一緒に警察業務も任されてるんだ」

 

 

時雨は懐から国防官手帳をクリスに手渡す。

警察手帳には時雨の顔写真に国防庁長官、警察庁長官、国家公安委員会委員長、そして総理大臣の名と判が押されている。

 

艦娘は深海棲艦に対抗できる唯一の戦力である事から、艦娘を運用している国によっては軍や政府から特別権限が与えられている場合がある。

日本も例外ではなく、艦娘には軍と警察に関わる業務や立場に関する法律が整えられている。時雨が言った警察業務を任されていると言う説明に関しても、艦娘は見た目が民間人に一番近く、市民に無用な威圧感を与えないという特徴から軍人と警察官の両方の権限が与えられ鎮守府や軍港がある地域の警察と共に警察業務に当たっている。

だが正規の警察官との違いは、正規の警察官は逮捕権と捜査権があるのに対して、艦娘には逮捕権はあるものの捜査権が無いという事である。これは警察と軍の業務に与える影響を少なくし双方の確執や対立を生まないための措置でもある。

 

 

つまり、今の時雨には警察官として犯罪者を逮捕は出来るが、それ以上の事は出来ないと言う事である。艦娘は飽くまでも逮捕するという事に徹しなければならないのである。

 

 

 

「国のトップが認める軍人なのに警察官か……変わってるな」

 

「それほど艦娘が特殊なんだって」

 

「成る程」

 

 

街中の道路を走り回りながら、ゆっくりパトロールをしていると、無線機からコール音が数回鳴り響くとスピーカーから音声が聞こえてくる。

 

 

『緊急指令、緊急指令。○○地区大通りで轢き逃げ事件発生!被疑車両は白のセダン、フロントガラスが破損している模様。町内各移動は現場へ急行せよ』

 

「反対方向か……こちら父島303了解!」

 

 

時雨はその場で車をバックスピーンターンさせてスキール音を鳴らしながらフロントを反対方向へ向けてアクセルを踏み込み、クリスはコンソールのパトランプをルーフに装着、舗装された道路をサイレンを鳴らしながら現場に急行する。

 

 

「ドライブ台無しだね」

 

「ホシを上げれば良いだけさ、逮捕さえすれば俺たちの仕事は終わりだ」

 

 

車通りが少ない車道を全力疾走しながら被疑車両である白いセダンを探す。

 

 

『追加情報、追加情報。被疑車両は現場より北方向へ逃走しているとの通報あり』

 

「○○通りから北って事は………」

 

「鉢合わせ…………っと、噂をすれば」

 

 

 

前を見ると、何やら全速力で向かってくる白いセダンが見えた。よく見るとフロントガラスに大きなひび割れが見える。

 

 

 

「当たりだ!」

 

 

すれ違い様に時雨はドリフトで方向転換し、セダンを追い掛ける。

 

 

「教えてやるか……犯罪が割に合わない事をな」

 

「ボリュームを最高にしてカマしちゃえ」

 

 

そう言うとクリスはサイレンの音量を最大に上げて、ホルスターからM9を取り出す。

 

 

「先ずは警告だな」

 

 

クリスはメガフォンのマイクを取り出して、警告を呼び掛ける。

 

 

『そこの車、止まれ!止まるんだ!止まれ!止まらないと公務執行妨害と道路交通法で撃つぞ!!』

 

 

大声でそう呼び掛けるが、聞こえていないのか無視してるのか止まる気配は無い。

 

 

「警告したのに……馬鹿だねぇ」

 

「アメリカの警察ならとっくに撃たれてるぞ。時雨、奴をもう少し追い掛けて、この先にある無人地帯に追い込むぞ」

 

「うん。しっかり捕まってて」

 

 

市街地の中なので銃が使えないため、クリスはこの先にある無人地帯に追い込む作戦を取る。

セダンは北へ向けてひたすらに走り続け、クリスの作戦通り、無人地帯に入った。

 

 

「やるか」

 

 

助手席の窓を開けてそこから身を乗り出して箱乗り状態でM9を構えると直ぐ様1発を発射する。

弾丸は見事にセダンの後輪を撃ち抜き、バランスを崩したセダンは一気に減速、そのまま倒壊した家屋の残骸に突っ込んだ。

 

 

「やった!」

 

 

車を止めて急いで降りると、犯人と思われる中年のヤクザ風の男が車を捨てて慌てて逃げようとするが、足がフラついており走れないでいる。

クリスと時雨は男に駆け寄ると拳銃を突きつけたまま男を取り押さえ、手錠を掛けた。

 

 

「やれやれ。こんなご時世に面倒を起こさないでよ」

 

「離せ!離しやがれぇ!!俺は何もしてねぇんだよ!何かの間違いだ!」

 

「何かの間違いだぁ?お前、大通りで人を轢いて逃げた筈だ!やってないなんて言わせねぇぞ!」

 

「本当だよ!本当だよ!」

 

「じゃあなんで車のガラスが割れてるんだ!どう説明するんだ?」

 

「わざとじゃねぇんだ!走ってたら人が道路に飛び出して来やがったんだ!あの轢かれた奴が悪いんだ!俺は悪くねぇよ!」

 

「あのねぇ君、人を車で撥ねた挙げ句に手当ても通報もしないで逃げたら罪になるって教習所で教わらなかった?」

 

「まぁ兎に角、裁判は免れないな」

 

 

 

そこへ、本家の警察がやって来た。

 

 

 

「ゴメン、例の轢き逃げ犯。後はお願いね」

 

「了解です、お疲れ様でした!さぁ歩け!」

 

 

2名の警官に後を任せるとクリスと時雨はパトロールを兼ねたドライブを再開した。

 

 

 

「パトロール早々にツイてないね」

 

「こう言う日もあるさ。それにしても時雨、お前何時からドリフトやバックスピンターンなんて出来るように?」

 

「練習したらね」

 

「練習ね」

 

 

 

 

 

続く




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