艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第66話

父島内を一回りし、パトロールを終えた時雨とクリス。2人はそのまま、夜明山へと足を運び、麓から頂上まで徒歩で移動し、頂上へやって来た。

 

 

「これは……」

 

 

頂上からは父島と近くにある母島を見渡す事が出来る。まさに絶景と言う言葉が似合う場所である。

 

 

「良い景色でしょ?」

 

「あぁ」

 

 

景色を眺めながら2人はその場にあった切り株の上に腰掛ける。

 

 

「こんな場所、いつの間に見つけたんだ?」

 

「この前にね……偶々だったんだけど。僕、高い所が好きだから、地元や鎮守府の近くにある高台は皆調べるんだ」

 

「良い趣味だ。それに此処は人が居ないから静かでいい」

 

 

山頂から見える景色に2人は黄昏れる。

 

 

「ねぇクリス」

 

「ん?」

 

「クリスから見て、この世界ってどう思う?」

 

 

突然の質問にクリスは慌てる様子はなく、直ぐに答える。

 

 

「表面上とはいえ人間同士の争いが無い世界って本当にあるんだなって思ってる」

 

「クリスの世界には深海棲艦て居ないんだっけ?」

 

「あぁ。代わりに人間同士が争ってる。俺が生まれた時代じゃ世界大戦なんて事は起きてないがな」

 

「クリスは自分の世界の事はどう思ってるの?」

 

「何とも言えないな。そもそも船だった時の俺は人間のような感情なんて無いし、俺は戦うために作られた存在だからな」

 

「そうか………僕や他の娘達と同じだね」

 

「ん?」

 

「実は僕達も艦だった時の記憶を持ってるんだ。クリスの居た世界と同じ世界線かどうか分からないけど、太平洋戦争で戦った記憶があるんだ」

 

「そう言えばお前は太平洋戦争の終わり頃まで戦ってたんだったな」

 

「そう。最後は潜水艦にやられちゃったけどね………艦だった時の僕って戦いに疲れてたんだ。何時までこんな事が続くんだろうなって……暗い海の中でようやく眠る事が出来るんだって思ってたら、この世界に生まれてまた戦う。普通なら長い戦いが終わったと思ってたら、また直ぐに戦うってなったら嫌になるのに、不思議と嫌な感じはしなかったんだ。どうしてだろうね……僕が軍艦だからなか?」

 

「自分が軍艦だから………少なくとも今の俺たちは人間相手じゃない、深海棲艦って化け物から世界を守る戦いをしている。その事実が前世での地獄のような戦いとの決定的な違いなんじゃないか?」

 

「?」

 

「こう言う事を考えるのはあまり得意じゃないが、その違いこそが自分を無意識のうちに奮い立たせている。俺はそう感じてる」

 

「そうなのかな………」

 

「あまり深く考えても答えは出ないぞ。与えられた使命を全うしながら答えを見つけていけば良いと思う」

 

 

 

そう言いながらクリスは時雨の背中にもたれ掛かる。

 

 

 

「それにしても、良い天気だな」

 

 

雲ひとつ無い空を見上げながらそう呟くクリス。

 

 

「クリスって今、元の世界に帰りたいって思ってる?」

 

「帰りたいと言うより、帰れないと思ってる」

 

「どうして?」

 

「俺やアリーがこの世界に来たのは偶然じゃない気がするんだ。根拠は無いが、俺をこの姿に変えてこの世界に送り込んだ奴は俺に何かの任務を与えてるんじゃないかと思ってる」

 

「任務って……どんな任務?」

 

「それは分からん。任務だったら内容が伝えられる筈だが、特にそんな命令もなく、深海棲艦と戦っても何も起きない。すなわち、深海棲艦と戦う事が俺に課せられた任務なんだと思ってる。そう考えたら任務を半ば放棄してまで元の世界に帰る気はない」

 

「クリスらしいね」

 

「そう思わないと、やってられないからな」

 

 

懐から煙草を取り出して口に咥えライターで火をつける。大きく吸い込み、口から煙を吐く。

クリスはその場で立ち上がると、時雨に振り返った。

 

 

「少なくとも、俺とアリーは急に居なくなったりはしないさ」

 

「うん」

 

「さて、そろそろ戻るか」

 

 

山を降りた2人は、車で鎮守府へと戻った。

 

 

 

「ん?」

 

 

しかし、鎮守府に戻ると何やら騒がしく皆が動き回っていた。

 

 

「あぁクリスに時雨、丁度よかった!」

 

 

そこへ伊勢が慌てた様子でやって来る。

 

 

「何の騒ぎだ?」

 

「本土に疎開していた島民の第2陣を乗せた貨物船が深海棲艦の水雷部隊に襲撃を受けてるみたいで、直ぐに救援が必要らしいのよ!」

 

「海軍の護衛は?」

 

「何とか踏ん張ってるみたいだけど、数が多くて時間の問題みたい」

 

「分かった!俺が行く!」

 

「僕も行くよ!」

 

「じゃあ2人は先行をお願い!」

 

 

 

 

 

 

続く




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