艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第67話

緊急要請を受けた父島鎮守府(仮)から先行部隊として出撃したクリスと時雨。

 

 

「貨物船の現在位置は?」

 

「伊豆諸島と小笠原諸島の丁度中間地点」

 

「あそこはこっちの安全圏の筈なんだがな…」

 

「海は広いんだ。深海棲艦の1つや2つ居ても可笑しくはないよ」

 

「そりゃそうか。こちらクリス、現状の報告願います」

 

 

 

クリスは現場の状況確認のため鎮守府に通信を送る。

 

 

 

『哨戒機からの報告だと敵水雷部隊は駆逐艦級が10、軽巡洋艦級が1に加えて空母が居るみたい』

 

「空母か……艦載機は上げてるのか?」

 

『護衛艦が対処してるみたいだけど押されてるみたい。貨物船に魚雷と砲撃が集中してるって』

 

「了解!現場に到着次第対処する」

 

 

 

通信を切ると、クリスは一刻の猶予も無いと判断しSPY-6の出力を最大にして探知範囲を広げる。

 

 

「クリス、此処からミサイルは届く?」

 

「トマホークの射程距離内に入ってる。空母を先に片付けよう」

 

 

クリスは既に現場近くの位置に待機しているMH-60Rから送られてくるデーターを元に敵の大まかな位置をトマホークに打ち込むと直ぐ様、発射する。

 

 

「急ぐぞ!」

 

 

機関出力を最大に上げてガスタービンエンジンがジェットエンジンのような轟音を上げながら、一気に加速していく。

 

 

「置いていかないでね!」

 

 

時雨もボイラーエンジンの出力を上げ、加速力に優れるガスタービン程ではないが徐々に加速していきクリスの後ろに就く。

 

 

「見えた!」

 

 

ようやく現場にたどり着くと、2隻の貨物船がイ級とロ級に追い回されているのが見えた。2隻とも回避に専念しているが既に数発の砲弾を受けたのか、甲板から煙が出ていた。

 

 

「時雨は左!俺から右から仕掛ける!奴等を貨物船から引き剥がせ!」

 

「了解!!」

 

 

2人は左右に分かれる。敵左翼から仕掛ける時雨は両足に装備している魚雷発射管を旋回させ敵が居る方向に向ける。

 

 

「イ級が2、ロ級が3か。いける!!」

 

 

射角を調整し終えると直ぐ様魚雷を斉射で放った。

読み通り、魚雷8発のうち3発が直撃。一斉射で半分を削った。

 

 

「この距離なら!」

 

 

時雨は主砲を手に取り速射による弾幕砲撃を仕掛けて、敵を引き剥がす。

 

 

 

「俺も行くぞ!」

 

 

クリスはMk45による精密砲撃を仕掛け、確実に仕留めていく。

無論、相手側も反撃してくるが2人の速度と火力と精度を生かした攻撃に翻弄され続け、戦闘開始から僅か3分で敵の駆逐艦級は仕留めた。

 

 

「今だ!離脱しろ!」

 

『感謝する!』

 

 

貨物船は全速力で離脱を図る。

 

 

「残りの敵は?」

 

「今探してる」

 

 

クリスはSPY-6レーダーのシースキマーモードで周囲を探る。

 

 

「居た!海軍の護衛艦が相手してるみたいだ!」

 

「救援に行く?」

 

「無論だ!友人が困ってるなら助けるのが合衆国軍人だ!」

 

 

 

 

その頃、国防海軍の護衛艦『あおくも』、『あさぐもの』2艦は敵旗艦の軽巡洋艦ツ級と交戦していた。

 

 

 

「右舷被弾!!浸水発生!」

 

「応急班!」

 

 

船団護衛隊旗艦のあおくもは敵ツ級に対して砲撃を続けていたが、小さく素早いツ級の動きに振り回されている。

 

 

(船団は無事なのか?)

 

 

あおくもに乗り込む船団護衛隊司令は護衛していた貨物船の安否が気になっていたが、戦闘中は余計な事を考える事が出来ないため、必死に隊の指揮を続けている。

 

 

「艦長!」

 

「なんだ!」

 

「父島からの応援が到着しました!」

 

「来たか!」

 

 

レーダー担当の電測員からの報告に司令は艦橋から双眼鏡を使って前方を確認する。水平線の向こうから全速力で接近してくる時雨とクリスの姿が見えた。

 

 

 

その時、クリスがMk45を構え、次の瞬間には発射していた。

 

 

 

「撃った?まだ30キロもの距離が……」

 

 

 

直後、1発の5インチ砲弾があおくもを攻撃していたツ級の頭部に直撃した。

 

 

「当てたのか!?あの距離から?」

 

 

イージス艦であるクリスなら遠距離から敵艦に砲を命中させるのは造作はない。だが流石に遠距離から放たれた砲弾は空気抵抗と重力の影響で威力は落ちているため、ツ級には僅かな傷を作るしか効果はなかった。

だがそれにお構いなしにクリスは1発ずつ確実に当てていく。

 

 

「邪魔ヲスルナ!」

 

 

ツ級の関心はあおくもから離れクリスへと向けられた。

 

 

 

「食いついた!よし来い!」

 

 

 

あおくもとあさぐもからツ級を引き離したクリスは一気に決着をつけるため、速度を上げてツ級に接近する。

 

 

 

「沈メ!」

 

 

 

ツ級は砲撃を仕掛けてくるが、レーダーからの情報を元にイージスシステムが算出する敵弾の予想着弾位置がHUDに表示され、それを考慮に入れた上で華麗に回避する。

 

 

 

「攻撃パターンがドローンと一緒だな」

 

 

 

クリスは単調な攻撃しか仕掛けてこないツ級にそう言いながら徐々に距離を詰めていく。

 

 

「この距離なら!」

 

 

右手に持っているMk45に変えてM67手榴弾1個、左手にはナイフを逆手に持ちグリップが前に来るように構えて、ツ級に取り付いて、顔を覆っている巨大な歯のような見た目のバイザーをナイフのグリップを力一杯叩き付けて破壊する。

破壊されたバイザーからツ級の鼻から下が見え、口が僅かながら開いている。

 

 

「これでも食ってろ!」

 

 

ピンを引き抜いてM67をツ級の口にねじ込む。

クリスは急いで離れ、ツ級はねじ込まれた手榴弾を引き抜こうとするが一瞬遅くM67が爆発、同時に弾薬と燃料にも引火したのか一瞬のうちにツ級は跡形もなく吹き飛んでしまった。

 

 

「敵艦殲滅確認!」

 

 

何とか敵水雷戦隊を殲滅したクリス。遅れて時雨も到着し辺りを捜索したが、他に敵は確認されず戦闘は終了し、2人は父島へと帰還した。

 

 

 

 

「時雨、これが俺の答えなのかもな」

 

「?」

 

「上手く言葉に出来ないが、戦ってる目的は時雨や他の皆とそう変わりはないのかもな。でもただ違ってると言えば俺は皆とは違って戦う事以外に得意な事や好きな事が少ないのかもな」

 

「そんな事ないよ。だって見てよあれ」

 

 

時雨が指差した方向を見ると、貨物船から降りていく疎開していた民間人達が先に島に帰っていた人達と再開を喜んでいるのが見える。皆疲れは見えるがそれ以上に笑顔に満ち溢れている。

 

 

「どう?あの人達があんなに笑顔なのってクリスが居たからだよ」

 

「…………参ったな。こう言うのには慣れてないからな」

 

 

クリスは珍しく照れている様子だった。

 

 

「クリスもそんな顔を見せるんだ」

 

「俺だってちゃんと感情は持ってるさ」

 

 

 

 

続く




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