艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
「合衆国海軍、アーレイ・バーク級駆逐艦クリス・カイルだ。よろしく頼む」
壇上で簡単に自己紹介をするクリス。
「本当に男なのね……」
「第6駆逐隊の話は本当だったのね」
「艦娘に男なんて初めてだな……」
「中々イケてるんじゃない?」
集まっていた艦娘達はクリスに対する第1印象を口々に話す。
「質問良いかしら?」
そこへ1人の艦娘が声を挙げた。
「君は?」
「第1航空戦隊の加賀です。先程の長門さんの紹介で仮配属と言っていたけど、どう言う事なのかしら?それに、アメリカの艦艇にアーレイ・バークなんてネームシップの駆逐艦は聞いた事がないわ」
上半身は胴着に弓道で使われる胸当て、青色のスカートを履いている空母『加賀』が直球な質問を投げ掛けてきた。
クリスは何と答えるべきか一瞬考え、長門と目配せしてから答える。
「アーレイ・バークって言うのは俺の前の名前なんだ」
「前の名前?」
「そうだ。俺の前職はアメリカ海軍の新型防空システムのテストベット艦で、テスト終了後に今の名前に変えたと同時に政府の命令で、この日本で実戦テストの名目で派遣されてきたんだ。因みにアーレイ・バーク級と名乗ったのも便宜上で俺は1人しか作られていないんだ」
「と言う事は姉妹は」
「居ない」
「そう」
加賀は少し納得のいかない表情だったが、それ以上の質問はせず席に戻った。
(何とか誤魔化せたか)
未来か別世界から来たかのかクリス自身も分かっていない。一応はこの世界のアメリカから来たと言う呈で誤魔化したが、加賀を含めたこの場の艦娘達が納得したかは分からなかった。
「はいはいはい!!しつもーんっ!」
今度は大きい声で呼び掛けられる。
「貴方ってどれくらいスピード出せるの?」
唐突な質問を掛けてきた鎮守府で一番の速度を誇る駆逐艦『島風』。
「君は?」
「駆逐艦島風!早さなら此処でいっちばん早いんだよ!」
「そうか。巡航速度で20ノット、最大速度30ノット。因みに主機関は1基辺り2500馬力のターボシャフトガスタービンエンジンを4基だ」
「えぇ~おっそーい!島風は40ノットは出せるよ」
「おいおい、30ノットは結構頑張ってる方だぞ。一応俺の満載排水量は9700トンだ」
「「「9700トン!?」」」
アーレイ・バーク級はフライトによって若干異なるが満載排水量は9500トンを越えている。これは巨大なイージスシステムを中心とした高度な電子機器を多数搭載しているためである。おまけにクリスが属するフライトⅢはフライトⅠとフライトⅡには無かったヘリ格納庫が追加されているので尚重いのである。設計の段階で出来る限りの軽量化の努力が図られているがそれでもこの規模である。
第2次大戦当時の艦艇が基準の艦娘達にとっては、クリスの満載排水量は彼女達の基準で言えば重巡洋艦に迫る規模であった。
「駆逐艦なのに何でそんな重いの?」
「さっきも言ったが俺には最新型の防空システムが搭載されているんだが、それに加えて高度な対潜システムもある。そのシステムはコンピューターや電子機器で構成されてて非常に重くて大きいし、それを常時稼働させるための強力な発電装置や機器を常に冷やし続けるのに必要な冷却装置、更にはそれらに統括された各種兵装を搭載しているからだ。更に言うなら」
「まだ何かあるの?」
「俺はヘリを運用できる。そのための航空管制システムや格納庫がある。色んな物を詰め込んだ結果、こんな数値になったんだ」
艦娘達は空いた口が塞がらない。駆逐艦と名乗っておきながら規模が対空・対潜、更には航空機を運用すると言うほぼ重巡洋艦のようなものである。そんな駆逐艦が存在するのかと混乱する。
「さて、何か他に聞きたい事はあるか?」
「はい!」
次に声をあげたのは巫女風の着物を着た、戦艦『霧島』だった。
「金剛型戦艦4番艦『霧島』です。先程のお話の中に新型の防空システムと言う言葉が出てきましたが、それはどういった能力を持っているのでしょうか?」
インテリ風な雰囲気を持つ霧島の質問にクリスは返答する。
「俺の持っている新型防空システムは主に艦隊防空を主にしたモノで、分かりやすく言えば長距離からの航空攻撃に艦隊の重要艦艇を守るための対空戦闘に特化したシステムだ。このシステムにはギリシャ神話の女神アテネと言えば分かるか?」
クリスの問いに彼女達の中のそう言う話に疎い艦娘ははちんぷんかんぷんの様子だが、霧島の様なそう言う事に造詣が深い艦娘達はその由来を察した。
「イージス……ですね」
「そうだ」
「なんなの、そのイージスって?」
「イージスと言うのはアイギスの英語読みで、アイギスはギリシャ神話での表記なんです。此処ではイージスと呼称しますが、イージスは最高神ゼウスが女神アテネに与えたとされる、どのような邪悪をも打ち払う力を持つ盾の名前なんですよ」
霧島の説明にちんぷんかんぷんだった艦娘達は理解した。クリスは彼女の説明に流石と言わんばかりに感心した。
「その通りだ。俺に搭載されているイージスシステムは艦隊を守ると言う意味を込めてそう名付けられている」
「成る程。よく分かりました、ありがとうございます」
質問を終えた霧島は席に腰かける。
「さて、時間の都合上質問は最後だ。誰か居るか?」
最後の質問は誰かと長門が問い掛ける。
「はい!」
手を挙げたのは、川内型軽巡洋艦『川内』。鎮守府での夜戦のエキスパート、夜が大好きと公言する艦娘である。
「君ってウチじゃ何処の隊の所属になる!?」
何やら食い付き気味に聞いていくる川内。
「そう言えば………長門、俺の所属は何処になる?何も聞いてないぞ」
「まだ本決まりではないが第3水雷戦隊へ配属を検討してるところだ」
「本当っ!?やったね!!」
川内が両手を上げて喜ぶ。
「何故彼女はあんなに喜ぶ?」
「あぁ……実は川内が率いる第3水雷戦隊に新たに配属予定の駆逐艦が何かの手違いで着任が遅れているんだ。その間を埋めるための一時的なものだ」
「1隻足りないから実戦に出れないし、訓練ばっかりだったから助かるよ!」
川内に握手されるクリスは反応に困った。
「では質問は以上だ。此処からは皆との交流を楽しんでくれ」
長門が交流会が始まりを告げ、皆が一斉にクリスとの交流を開始した。
続く
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