艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
サイパン島の制圧を終えた父島分遣隊は、しらねで補給を終えて急ぎグアム島に向かっていた。
「皆、なるべく急いで!」
「まさか第2艦隊が苦戦してるとはな」
父島分遣隊はサイパン島制圧後に第2艦隊からの救援要請を受けて急行している。
その救援要請の内容は簡単に簡潔に纏めると『グアム島の中枢棲姫より我が艦隊に向けて誘導弾による攻撃があり、至急増援を求める』との事である。
「誘導弾……まさか深海棲艦もミサイルを使うようになってきたんだな。艦隊が損害を受けると言う事はトマホークに匹敵する程の性能と言う訳か」
報告にあった誘導弾による攻撃という言葉にいち早く反応したのはクリスで、救援に向かう父島分遣隊の中で危機感を抱いている。
「クリス、そろそろグアム島に差し掛かるけど何か反応はある?」
「あぁ、とっくにSPYが現場海域をスキャンしている。確かに大和達第2艦隊に向けてグアム島から高速で飛行する飛翔物体を捉えてる。ミサイルの速度を考えると対抗手段を持たない第2艦隊が苦戦するのは当然だな」
「冷静に分析してないで、何か対抗手段は無いの?この中でミサイルに詳しいのアンタだけなんだから!」
「慌てるな、ミサイルはこっちにもある。トマホークとSM-6、ESSMでいざというときは対処できるが何も情報が無い状態だと危険すぎる。日向、お前の偵察機からの目が頼りだ」
今から10分前、クリスの妖精の中にヘリ搭乗員の戦術航空士1名を日向の偵察機に乗せて現状を中継カメラを使って撮影させ、現場をリアルタイムで見せると言う荒業を実行しており、クリスのHUDに投影される映像を見てどう判断するか考えていた。
「状況は深刻だな。中枢棲姫から次々にミサイルが発射されてる」
「どれくらい?」
「SPY-6とカメラが捉えている映像から判断して恐らく50発以上が次々と打ち出されていってるな。ミサイルの速度が早すぎて第2艦隊は回避が間に合ってないみたいだ」
「早く助けないと!」
「慌てるなって言ってる。どうやら敵は中枢棲姫だけで他の敵は第2艦隊が潰しているようだ。これなら中枢棲姫に的を絞って攻撃できる」
そう言うとクリスはトマホークの発射態勢に入る。ミサイルを相手が使っている事を考慮し、敵もシースパローのような対空用ミサイルを持っている可能性を考慮し、先ずは敵の防空能力を探るのと、第2艦隊の後退援護のため数発ずつトマホークを撃ち込む作戦をとる。
「tomahawk fire!」
VLSから4発のトマホークが放たれた。
続けて、敵からのミサイル攻撃に備えて対空モードに切り替えてSM-6とESSMを何時でも発射できる態勢をとる。
「そろそろだな」
到達予想時間となり、HUDのレーダーディスプレイに視線を向ける。トマホークと表示された光点がUnknownと表示されている反応に到達しようとした瞬間、トマホークの光点が消失した。
同時に偵察機からのカメラ映像を確認、中枢棲姫に迫っていたトマホーク4発が中枢棲姫が放ったミサイルによって全て撃墜された瞬間が鮮明に捉えられていた。
「成る程、敵の防空能力はそれなりにあるか」
「どうするの?」
「今は第2艦隊の後退援護が優先だ!トマホークの波状攻撃をするぞ!」
クリスはトマホークを連射モードで放ち、大和達の後退を援護する。
次々と放たれるトマホークは中枢棲姫に迫り、中枢棲姫も対空ミサイルを撃って迫ってくるトマホークを次々と迎撃していく。しかしその隙に苦戦を強いられていた大和ら第2艦隊は後退を開始する。
「エエイ!次カラ次ヘト!」
中枢棲姫は今まで有利に進めていた戦を急に邪魔された気分に陥り、次々と迫ってくるトマホークの対処に追われ、後退していく第2艦隊を見ているしか出来なかった。
「グッ!」
迎撃をすり抜けてきたトマホークが命中していく。戦艦とおなじ防御力をもつ中枢棲姫にとってはトマホークの破壊力は対した事は無いが、しかしそれでも多少のダメージは入るため中枢棲姫にしたら不快極まりない。
「コレデ最後!」
やがてトマホークの波状攻撃が止み、緊張がやや収まったタイミングで次なる攻撃が加えられた。
「何ッ!?」
上を見上げると、ホーネット所属のF4Uコルセアとsbdドーントレスが急降下を仕掛けてきていた。
「チィッ!」
中枢棲姫は再びミサイルを真上に打ち上げ、降下してきていた次々と撃墜していくが、それにも構わず降下を仕掛け来るドーントレスから小型・中型・大型爆弾が次々と投下され、中枢棲姫に直撃していく。
続けて、コルセアがロケット弾の一斉発射でロケットの雨を降らせ、中枢棲姫に痛手を負わせる。
「アァァァ!!」
怒りがピークに達した中枢棲姫はミサイルや元から持っていた主砲を乱射し、加えて苦しそうな表情を浮かべ大汗をかいて頭を抱えながら錯乱状態となる。
「何故ダ……何故ダ……何ナン打この光景ハ……何で……何ナんだ……この記憶ハ……」
中枢棲姫の脳裏には今までの記憶にはない光景が浮かんでおり、それは波が大いに荒れている海上で波に飲まれながらも前に向かって航行し、最終的に空から降ってきた雷が直撃し目の前が真っ白になる光景だった。
「これハ……誰の記憶………誰ノ……記憶?」
中枢棲姫は次々と甦ってくる光景にまるでそれが自分の記憶なのではないかと錯覚し始める。
「分からナイ………何ガ……何ダカ……」
混乱して攻撃の手が少し緩んだタイミングで、父島分遣隊が現場に到着し第2艦隊と交代する。
「どうなってんの?」
伊勢は様子がおかしい中枢棲姫を見てそう言った。
「まるで混乱してるみたいだな?」
中枢棲姫は現れたクリスを見て驚きの顔となった。
「クリス………クリス・カイル………ラマディの悪魔………」
「!?」
クリスは自身の名前の由来であるアメリカ海軍Sealsのスナイパーであるクリス・カイルの名前と、そして敵側がクリス・カイルにつけたあだ名を中枢棲姫が知っている事に驚きを隠せなかった。クリスは事の真偽を確かめるため前に出て中枢棲姫に話し掛けた。
「どうして俺の事の知ってるんだ?」
「あァ……分からない……自然ト……言葉に出た。ダガ、何故カ私はお前ノ事ヲ知っている」
「俺にお前みたいな知り合いはいないぞ」
「私モ、貴様みたいナ知り合いは居ナイ」
すると中枢棲姫はクリスに向けてミサイルを放ってきた。
「クリス!?」
「問題ない!」
クリスは敵ミサイルに向けてESSMを発射し全て撃墜していく。
「何処まで耐エられルカナ?」
「弾の数だけが戦局を左右する決定的な差じゃない!」
クリスはミサイルはミサイルで迎撃、砲撃の雨は紙一重で回避しながら守りに徹しながら、何とか隙を伺う。
「避けルダケデハ勝てないぞ!」
「言ってろ!」
クリスは中枢棲姫が攻撃する瞬間を見極める。
するとある事に気がつく。
(やってみるか)
クリスは敵がミサイルを放つ瞬間に一瞬であるが砲撃が止まる時がある。それに気がついたクリスは敵が2つの武器を同時に使用する事が出来ないと判断し、中枢棲姫がミサイルを放つ瞬間を狙う。
「コレデ終わリだ!」
中枢棲姫は砲撃を止めてミサイルを放つ態勢をとる。
「それを待っていた!」
クリスはその場でチャフとフレアをばら蒔き、中枢棲姫の意表を突いてガスタービンエンジンの出力をレッドゾーンにまで一気に上げ、一気に飛び掛かった。
「捕まえた!」
クリスはMk45をゼロ距離で撃ち込む。
「グァァァァァァ!!!」
トマホークと爆撃を受けてダメージが蓄積していた中枢棲姫の装甲は容易に破壊され、弾切れになるとホルスターからM9を取り出して連射で中枢棲姫に撃ち込み、重傷を負わせる。
「クソ!しぶとい!」
しかし深海棲艦の上位個体なだけあり、生身の耐久力は半端ではなかった。
「アァァァァァァァァァァァァ!!!」
中枢棲姫はクリスをはね除けてると再び頭を抱え、その場で踞った。
「クリス……クリス・カイル!!助けテ!助けて!」
「!?」
突然助けを求めてきた敵にクリスは困惑する。
「知っている!私は知っている!私はバミューダで一緒に……一緒に居た!」
「何っ!?」
「思い出した!思い出したわ!アナタは私と一緒にバミューダで雷に打たれる、この世界に来た!そしてわたしの名前は………」
中枢棲姫がその場で立ち上がると、身に纏っていた深海棲艦独特の艤装に大きなヒビが入り、中枢棲姫が体を大きく動かしてまるで卵の殻みたいに艤装は粉々に崩壊し、中から現れたのはクリスと全く同じアーレイ・バーク級をデフォルメしたような艤装を持ち、アメリカ海軍の階級章が縫い付けられた使紺色の作業服を着用し、『DDG-51』と刺繍された識別帽を被った金髪の女性が現れた。
「わたしの名前は……アーレイ・バーク。久し振りねクリス」
続く
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