艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第85話

 

 

「もう一年も終わりか………」

 

「早かったな」

 

 

マリアナ攻略から早くも月日が経ち、年末にとなった。

一年の締めくくりとも言える大晦日の日、鎮守府の掃除を終えて一段落したクリスとアリゲーターガーは中央山に登り、西に沈んでいく夕日を眺めながら、この世界に来てから今までの事を振り返る。

 

 

「色々あったな……」

 

「あぁ………この世界に飛ばされてから色々とな」

 

「何があった?」

 

「俺はこの世界に来てから日本とベトナムの間を輸送船の護衛をやったり、お前と会えてからは九州で敵の潜水艦を叩いたり、この島々を取り返す作戦で負傷したり、石油プラントでテロリスト共と戦ったり。お前は何があった?」

 

「俺はこの世界に来てから漂流先の島の人と仲良くなったな」

 

「羨ましいな」

 

 

深海棲艦と言う人類共通の敵がいるこの世界に、クリス達は自分が居た元の世界の21世紀と違い、表向きとはいえ人間同士の戦争が殆ど起きておらず、東西冷戦にもなっていない世界が羨ましく感じていた。少なくともこの世界では人間に対して自身の力を行使する事はない。それだけでも2人にとっては別世界とはいえ心身共に安定している理由であった。

 

 

「なぁ」

 

「ん?」

 

「元の世界に戻る気はあるのか?」

 

 

クリスからの質問にアリゲーターガーは顎に手を当てて考える。

 

 

「さぁな……此処の世界も元の世界も居心地は良いと思ってるし、帰りたくない訳じゃないけど、急いで帰る必要もないってのが正直なところかな」

 

「そうか」

 

「お前はどうなんだクリス?」

 

「俺はこの世界に居続ける必要があるのか?って考える時があるな」

 

「別に良いんじゃないか?もしこの世界に俺たちを飛ばした張本人が居るとしたら、用済みって判断した時点で何かしてくるだろ。でも今はそんな兆候は無いし、まだ此処での俺たちの役目は終わってないんじゃないんだろう」

 

「そう言う考えもあるか………」

 

 

 

水平線に太陽が完全に沈み、辺りが薄暗くなると2人は山から下山して鎮守府へと戻った。

 

 

「あ!ようやく戻ってきた!」

 

 

帰るなりバークに出迎えられた。

 

 

「姉さん、どうしたの?」

 

「どうしたの?じゃないわ!カウントダウンまであと6時間なのよ!早くカウントダウンに向けての準備をしないと!」

 

 

バークは鎮守府の皆と協力しカウントダウンに向けたイベントを取り仕切っている。丁度今はバークが皆にある事を語っていた。

 

 

「それでね、私は今や100人もの兄弟を抱えてる訳よ」

 

「凄い!100人も姉妹が居るなんて」

 

「32人の妹が居る神風型より凄いのです!」

 

「流石にフレッチャー級には負けるけどね」

 

 

 

あろう事かクリスが秘密にしている筈の元の世界の事について皆に話回っていた。クリスとアリゲーターガーは慌てて止めに入った。

 

 

「姉さん!」

 

「何よ?」

 

「アンタ!今の俺たちの状況を知ってるのか!」

 

「別に良いじゃない。何れはバレるんだし、そこの時雨と白露って娘や伊勢と日向もアイオワやホーネットも知ってるじゃない」

 

 

辺りに視線を向けると、白露と時雨は勿論、伊勢と日向等の2人の事情を知ってる者は、何とも言えない表情となっていた。

と言っても、その事を知らなかったのはこの鎮守府では第6駆逐隊のみであり、むしろそれを知らされて居なかった6駆の面々は2人に憤慨する。

 

 

 

「どうして教えてくれなかったのよ!?」

 

「私達は仲間でしょ?」

 

 

6駆迫られて、最早言い訳のしようがないと悟り、両手を挙げて降参の意思を示す。

そんな状況下で時雨は話題を変えようと立ち上がる。

 

 

 

「バークさんの世界には他にどんな艦が居るんだい?」

 

「そうね、私達以外には世界最大級のニミッツ級原子力空母とかジェラルド・R・フォード級とかが有名ね」

 

 

 

するとバークはタブレット端末でその2隻の写真を見せる。

 

 

「こんなのがあるの!?それも10隻以上も」

 

「他にこんなのもあるわよ」

 

 

そう言って続けて色んな国の艦船の写真を見せる。アメリカは勿論、日本、ドイツ、フランス、イタリア、イギリス、ロシア等の主力艦艇が全て写っている。

 

 

「皆、大きいね」

 

「でも戦艦が1隻も居ないんだね」

 

「戦艦が現役だったのは湾岸戦争の頃までだもんね。因みにその戦艦てのは、そこにいるアイオワさんの事よ」

 

 

話題を振られたアイオワ。

 

 

「バーク、それは少し違うわ。あの作戦に参加したのは私じゃなくて、妹のミズーリとウィスコンシンよ。あの時の私は砲塔の爆発事故でそれどころじゃなかったから」

 

「そうだったわ。私はその時、就役直前だったからあまり詳しくは知らないけど、艦砲射撃やったんだっけ?」

 

「ペルシャ湾からだったらしいわ。確か敵地上部隊への対地攻撃だったって聞いてるけど」

 

「敵の船に向けては撃ってないの?」

 

 

伊勢は素朴な質問を向け、それにクリスが答える。

 

 

「ミズーリとウィスコンシンが敵艦へ向けて砲撃した事は無いって聞いてるな。むしろ戦艦を最後まで使ってたのはアメリカだけだったからな」

 

「それに潜水艦や航空機の技術が発達したから、戦艦の存在そのものが薄れたのも理由の1つだな」

 

「つまり、戦艦が必要無くなったから?」

 

「それもあるけど、他にも色々理由はあるわ。けど今此処で話す内容じゃないから言わないけど」

 

 

その話を聞いて伊世と日向は少し寂しそうな雰囲気となる。

 

 

「まぁしょうがないよね………」

 

「あぁ。老兵は消え去るのみ」

 

 

その後もクリス達は質問攻めに逢ったり、バークの提案で元の世界の大ヒット映画を上映したりと時間はあっという間に過ぎ、やがて新年のカウントダウンに入った。

 

 

「後10秒だ」

 

 

腕時計を見ながらカウントダウンを開始する。

 

 

 

「5、4、3、2、1、0!Happy new year!」

 

 

 

午前0時となり1979年がスタートした。

 

 

 

 

 

続く




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