艦隊これくしょん the last aegis   作:明日をユメミル

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第86話

新年を迎えた父島鎮守府は、開設後初となる初詣が行われていた。

 

 

「これが日本のNew yearの風習か」

 

 

父島に戻ってきた島民達により再建された神社には既に島民や休暇をとっている国連軍の軍人達によりごった返していた。様々な国籍の人が集まって、最早お祭り状態であった。

 

 

「お待たせクリス」

 

 

そこに初詣を終えた時雨がやって来た。

 

 

「これ飲むかい?」

 

 

時雨は甘酒が入った紙コップを手渡してきた。

 

 

「ミルクか?」

 

「違うよ。これは甘酒って言って、米と米こうじで作ってある飲み物だよ」

 

「酒?酒が入ってるのか?」

 

「ほんの微量だけど、酔う程じゃないよ。美味しいから飲んでみて」

 

「じゃあ」

 

 

クリスは甘酒を飲む。

 

 

「美味い。肌寒い日にピッタリだな」

 

「でしょ?僕は好きなんだ」

 

 

時雨も甘酒を口に含む。

 

 

「さて、そろそろ帰る」

 

「そうだね。そうだ!」

 

 

何かを思い出した時雨は上着の上に羽織っていたジャケットのポケットからメモを取り出す。

 

 

「頼まれてたモノがあるんだけど帰りにスーパーに寄って良い?」

 

「あぁ」

 

 

そう言うと二人は近くの駐車場に停めてある時雨のスカイラインに乗り込む。

 

 

「寒いな」

 

 

時雨がエンジンを掛けると暖房をつける。そのまま二人は近くのスーパーに移動する。

駐車場にスカイラインを停めると、店に入り、必要な物を買い込んでいく。

 

 

「えぇと……箱入りの缶コーヒーとミネラルウォーターとオレンジジュースに和菓子セットと洋菓子セットとカップラーメン箱入りに」

 

「そんなに買うのか?」

 

「うん。皆、ここぞとばかりに注文押し付けてくるからね」

 

 

明石が開設しているPXは品揃え豊富だが、生憎それは生活用品やホームセンターで売ってるような機材に資材に限った物で、普段の食事以外の嗜好品や飲料は基本的に一般の店舗で購入するのが一般的な鎮守府のシステムである。

しかも、鎮守府外への外出へは届け出と許可が必要であり、殆ど艦娘はそれを面道なため、外出する艦娘に必要な嗜好品等のリストと代金を手渡してて購入してきてもらう事が多い。

 

 

 

「後は…………アイスにパンにコーラに」

 

 

 

一通りカートに詰め込んでレジで精算、そのまま駐車場に戻ると、スカイラインのトランクと後部座席に購入した物を詰め込み、後はもう鎮守府へと帰るだけであった。

 

 

「帰ったらどうする?」

 

「僕は明石さんと車弄りでもするつもりだけど」

 

「なら俺も付き合っていいか?」

 

「いいよ」

 

 

そんな話をしながら鎮守府への帰路に就く二人。

 

 

 

 

海岸線の道路を走っていると砂浜が見える。

 

 

 

「ん?」

 

「どうかした?」

 

「停めろ時雨!」

 

「え?」

 

「早く!」

 

 

時雨は慌ててブレーキを踏んで停車させる。それと同時にクリスはドアを開けて飛び出して、仮設のフェンスを乗り越えて砂浜へと降りた。

 

 

「おい!大丈夫か?」

 

 

波打ち際に、少女が倒れていた。

クリスは打ち上げられていた少女を抱き抱える。

 

 

「ん?何処かで見た顔だな」

 

 

クリスは打ち上げられていた少女の顔に何処か見覚えがあった。

 

 

「あれ?その娘って……」

 

「知ってるのか?」

 

「うん。舞鶴に居る筈の雪風だよ」

 

 

クリスに抱き抱えられている少女は、時雨の友人で陽炎型駆逐艦『雪風』だった。

彼女の身体には艤装が装着されているままであったが、深海棲艦と戦闘をした様子はない。それどころか魚雷や主砲等の武装がなく、燃料も空になっている。

 

 

 

「時雨、鎮守府に連絡!」

 

「うん!」

 

 

時雨は無線で鎮守府に知らせるために車に戻り、クリスは意識が無い雪風の容態を確認する。

 

 

「脈は打ってる………呼吸もしている………だが体温が低いな」

 

 

容態を一通り確認してから雪風に声を掛ける。

 

 

「雪風、聞こえるか!聞こえるか!」

 

「………………………う…………………」

 

「聞こえるか!?聞こえたら目を開けてみてくれ!」

 

「あ…………あれ…………此処………は……何処……」

 

「小笠原諸島の父島だ!君は雪風で間違いないか?」

 

「あな…………た……………だ…………れ……」

 

「クリス・カイルだ。今、助けが来る」

 

「私は…………舞………鶴から…………逃げて…………皆………を………たす………け」

 

「もう良い。喋ると身体に障る」

 

 

 

その言葉に雪風は喋るのを止める。

 

 

 

「だいぶやつれてるな………それに、このアザは」

 

 

 

よく見てみると雪風の腕には妙なアザのような見える。態々、日本海側の基地から太平洋沖の小笠原諸島で武器も持たずにやって来た事に関係があるのかもしれないが、今は雪風を助ける事を優先し、応急処置を行う。

 

 

 

「クリス!今、鎮守府から明石さん達が来てくれるって!」

 

「分かった!」

 

 

クリスは羽織っていたフィールドジャケットを雪風に着せて、体温をこれ以上逃がさないようにする。

 

 

 

しばらくすると、鎮守府からやって来た救急車がやって来た。停車すると同時に医療キットを携えた明石が飛び降りてきた。

 

 

 

「明石、直ぐに診てくれ!」

 

「任せて!」

 

 

明石は直ぐ様、医療キットから必要な物を取り出して雪風の容態確認を行う。

 

 

「直ぐに鎮守府へ運ぶわよ!」

 

 

 

一通り確認を終えると明石は雪風を救急車に載せて、鎮守府へと搬送した。

 

 

 

 

 

 

 

続く




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