艦隊これくしょん the last aegis 作:明日をユメミル
雪風が運び込まれた父島鎮守府。運ばれるや否や、工廠に設置された艦娘専用の医務室へと運び込まれ、明石を主導に処置が行われる。
その間、鎮守府の作戦室では全艦娘が集められ事の経緯について話が行われていた。
「舞鶴に居る筈の雪風がね……」
「しかもあんな状態でだ。これは普通じゃない」
伊勢も日向も深刻そうな感じだ。
「舞鶴で何かあったのかな?」
最上が素朴な疑問を浮かべる。
「例えば敵の攻撃を受け被害が甚大だとか」
「だったら一番近い呉に行く筈よ。態々、太平洋のしかも小笠原諸島まで来るかな?」
「じゃあ向こうで嫌な事があって脱走しちゃったとかじゃないかしら?」
暁の言葉にクリスが反応する。
「それは俺も考えてる。実は雪風を見つけた時に、腕と足にアザが出来てきた」
「アザ?」
「あぁ。アレは戦闘で付いた物じゃない」
「どう言う事?」
「あぁ。あのアザはどう見ても何かに叩かれたかのような付き方だ」
クリスの言葉にその場の空気が張り詰める。
「叩かれたって………まさか、雪風は誰かに暴力を!?」
「可能性はある。あるいは自分で付けたかのどちらかだな。バーク姉さんはどう考える?」
話を振られたアーレイ・バークは両腕を組んで考える。
「ねぇ伊勢」
「ん?」
「艦娘に対する暴力って、過去に例ってある?」
「無いって言えば嘘になるけど、前例はいくつかあるわ。一昔前は暴力や苛めは普通にあったからね」
「今はどうなの?」
「一時期に比べたらだいぶ減ったけど、噂程度には暴力や苛めが行われるって聞いてる」
「彼女が所属する舞鶴鎮守府に何か最近変わった動きとかは無い?」
「動きねぇ………日向は何か知ってる?」
「いや……私も舞鶴の事については何も聞いてないな。変わった動って言うのは具体的にどう言った事を指すんだ?」
「例えば指揮官が交代して基地の態勢が変わったとか……」
そバークとクリスとアリゲーターガー、アイオワとホーネットを除く艦娘達は舞鶴に関しては何も聞いてない上に何も知らないとった感じで頭を傾ける。
「調べてみる必要があるな…………取りあえずは雪風の回復待ちだね」
その直後、作戦室に明石がやって来た。
「話は聞きました。クリスさんとバークさんの考えは当たってます」
「じゃあやっぱり」
「えぇ。彼女のアザは明らかに何者かによってつけられたのは間違いありません。それに彼女の栄養状態から、舞鶴を出る前から殆ど食事をしていないと考えられます」
「これはもしかしたらするかもね………」
「あぁ……B事案かもな」
日向が言い放った『B事案』と言う言葉。全員が戦慄する。
「B事案………通称、ブラック鎮守府の存在か」
ブラック鎮守府とは、かいつまんで話すと、鎮守府を預かる司令官や幹部による艦娘に対する過酷な任務の強要や暴力による精神的なダメージを追わせたり、資材や資金を横領し私腹を肥やしたり、福利厚生を怠り艦娘の心身に著しい負担を掛けたりするという、まさに艦娘にとっては地獄そのものとも言われる鎮守府の事を指す。
「まだ残ってたんだね、そう言うの」
「こう言う場合、軍の人事部や一部の政府高官とかも関わってたりするから始末に悪いんだよ」
「だとしたら国防省に報告する?」
「待て。仮に舞鶴がブラック鎮守府だと前提にするなら、国防省に報告すれば、その事実が闇に葬られる可能性がある。先ずは一番信頼できる長門に相談してみるのはどうだ?」
「そうだね………まぁ取り敢えずは雪風の意識が戻って話を聞かない限りは」
その場での結論は出ず、雪風が意識を取り戻すまで保留となった。
雪風が保護されて、数日が経過した。
「ありがとうございます!雪風、もう大丈夫です!」
意識を取り戻し、会話が出来るまでに回復した雪風は元気に振る舞っている。
「久し振りだね雪」
「グレも久し振り!」
友人である時雨と会話により精神的には安定している様子である。
「あ!クリスさん、私を助けてくれてありがとうございます!」
雪風はクリスに礼を述べた。
「いや、同じ仲間なんだ。助けるのは当然さ」
「いえ!アナタは命の恩人です!本当にありがとうございます!」
「元気そうだね雪」
「はい!」
「じゃあ元気になったついでなんだけど、どうして雪は此処まで来たのかな?」
時雨は雪風に問い掛ける。
「あ~………やっぱり気になりますよね?」
「まぁね。あんな状態だったし、そのアザも気になるからね」
「話したくないなら無理に話す必要はないぞ」
「いえ!これは私から皆さんにお話致します!実は………」
雪風から語られた内容は、クリス達が危惧していた通りの事だった。
今から3ヶ月前に舞鶴鎮守府の司令官が突如として交代となり、後任として着任した別の司令官がものの見事に真っ黒だった。
着任直後から、所属している艦娘に対して無理な戦闘の強要に酒保や食堂を強制閉鎖、自由行動の極端な制限、戦闘に敗北した艦娘に対する暴言に暴力の数々、挙げ句の果てには艦娘に与えられる給与の横領に、艦娘が個人的に持っている銀行口座の金にまで手をつけるという、まさに絵に描いたような外道を繰り返す新任司令官。
そんな新任司令官に不満を持つグループが何とか現状を外に伝えようと脱走を計画するも、悉く計画が新任司令官に知られてしまい、その計画に参加した艦娘は全て懲罰を受けて、鎮守府内に軟禁状態となってしまう。そんな中、雪風は何とか隙を突いて脱出に成功、友人である時雨に頼るため父島鎮守府にやって来たとの事だった。
「やっぱりB事案か」
「クリス、これはもう」
「あぁ……伊勢に報告してくる」
クリスは雪風の声を録音したスマホを手に、伊勢に報告し、その日のうちに長門にも報告される。
『そうか……B事案となれば見過ごす事は出来んな』
「でもどうするの?国防省に報告するにはそれなりの証拠を用意しなきゃならないし、国防省にもその舞鶴の新任司令官の伝手があるとしたら、握り潰される事になるかもしれないから迂闊に手は出せないよ」
『だが提督には知らせる必要がある。事が事だけにこちらで独自に判断は出来ないからな』
長門は北方戦線に居る提督に報告を入れる。そして提督が下した判断を長門は父島鎮守府に報せた。
「証拠の押収か」
『そうだ。提督は証拠が無い限りは手の打ちようが無いと言っている。確実な証拠を手に入れられれば、舞鶴の新任司令官や、国防省内に関与している人間の洗い出しができる』
「でも、どうすれば」
『その点に関しては考えてる。舞鶴鎮守府への潜入だ』
「危険じゃない?」
『危険は承知の上だ。それをこなせる奴が其処に居るだろ?』
長門の言葉に伊勢は目の前に居るクリスとアリゲーターガーに目を向けた。
「クリスね?」
『あぁ。彼らはそう言うのが得意らしいからな』
「だけと危険じゃ……」
「いや、行かせてくれ。同じ同胞が苦しんでいるのを見過ごす事は出来ない」
「俺もだ。潜入は得意分野だからな」
クリスとアリゲーターガーは潜入任務に名乗りです。
「決まりだね。明日には2人をそっちに送るから」
『頼む』
電話が切られると同時に2人は司令室から出ていくと、真っ先に準備に入った。
続く
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